3. 【役割・地位の変化】昇進・配置転換などを挙げる人は職種計の1.5倍
管理職になったばかりの方にとって、とくに気になるのが「役割・地位の変化等」です。調査の選択肢では、かっこ書きで「昇進・昇格、配置転換等」と説明されています。
この項目を挙げた人は、管理的職業従事者で29.6%でした。職種計は19.8%なので、9.8ポイント高く、割合にすると1.5倍です。4つある上位の項目のなかで、職種計との開きが倍率でいちばん大きいのがこの項目でした。
ほかの上位の項目も、倍率で並べてみます。「仕事の量」は職種計の1.2倍、「仕事の失敗、責任の発生等」も1.2倍、「仕事の質」も1.2倍でした。どれも職種計より高いものの、1.5倍の「役割・地位の変化等」ほどの開きはありません。
統計からは、管理的職業従事者のうち何年目の人がこの項目を挙げているのかまでは分かりません。ただ、役割の変化そのものが、管理的な仕事に就く人にとって負担として意識されやすいと考えられます。
4. 【管理職の相談相手】家族・友人と同僚が上司より多い
悩みを抱えたとき、管理職は誰に相談しているのでしょうか。仕事や職業生活のストレスについて、相談できる人がいると答えた管理的職業従事者は92.8%で、職種計の94.6%とほぼ同じです。ただし、相談できる人はいないと答えた人は6.8%で、職種計の4.1%より多くなっていました。
相談できる人がいる管理的職業従事者のうち、実際に相談したことがある人は76.3%です。実際に相談した相手を複数回答で見ると、「家族・友人」が66.7%、「同僚」が65.1%、「上司」が61.4%と続きます。
職種計では「上司」の58.9%が「同僚」の57.0%を上回っていましたが、管理的職業従事者では同僚のほうが3.7ポイント多くなっています。管理的職業従事者にとって、同僚は上司と並ぶか、それ以上の相談相手になっているということです。「人事労務担当者」に相談した人は5.7%でした。
5. 【職種別の比較】役割の変化を挙げる割合は管理的職業が2番目
「昇進や配置転換がストレスになるのは、管理職だけなのでは」—そう感じる方もいるかもしれません。では、ほかの職種と比べると、管理的職業従事者はどのあたりにいるのでしょうか。「役割・地位の変化等」を挙げた人の割合を、不明を除く11の職種で並べてみましょう。分母は、強いストレスとなっていると感じる事柄がある人です。
5.1 【職種別の役割・地位の変化一覧表】
いちばん高いのは運搬・清掃・包装等従事者の29.7%で、管理的職業従事者の29.6%はわずか0.1ポイントの差で2番目でした。3番目以降は、生産工程従事者が24.8%、介護サービス職業従事者及び保健医療サービス職業従事者が22.3%、専門的・技術的職業従事者が22.1%、販売従事者が21.6%です。
一方で、事務従事者は13.9%で、管理的職業従事者の半分に届きません。職種によって、役割の変化がストレスとして意識される度合いはかなり違うと考えられます。
同じ職種別の表では、「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」でも、管理的職業従事者はそれぞれ2番目に高い割合でした。管理的職業従事者は、量・責任・役割の変化の3つとも、11の職種のなかで2番目に高い割合で、3つの負担のどれもが上位に挙がりやすい立場だといえそうです。
6. まとめにかえて
管理職の悩みの中身から見えてきたことを、これからの働き方と暮らしの備えに当てはめると、次の3つになります。
6.1 1つめ:最初の1年は、仕事の量と任せ方の計画を立て直す
管理的職業従事者の悩みの上位は、仕事の量と、失敗や責任の発生でした。新しい立場になったら、これまで自分で抱えていた仕事のうち、何を手放し、何を部下や同僚に任せるのかを決めておくと、量と責任が同時に増えるのを抑える手がかりになります。完璧を目指すより、最初の1年を役割に慣れる期間と決めて、少しずつ形を整えていく進め方もあります。
6.2 2つめ:相談先を、職場の中と外の両方に持っておく
管理的職業従事者は、上司よりも同僚や家族・友人に相談していました。同じ立場の同僚に加えて、職場の外にも話せる相手を持っておくことが、何をどこに相談するかを決める手がかりになります。上司に話すときは、困っていることが仕事の量なのか、責任の重さなのか、役割の変化なのかを分けておくと、何を相談したいのかを伝える材料になります。
6.3 3つめ:想定外の事態にも備えて、家計のゆとりを先につくる
ライフプランについて、金融庁はNISA特設ウェブサイトの「資産形成の基本」で、想定外の事態にも備えながら、お金が必要になる時期まで考えておくよう呼びかけています。家計管理の基本としては、収入と支出をつかんで収支を黒字にし、その黒字分を貯蓄に回すことが挙げられています。管理職の負担が重い時期には、働き方を見直したくなることもあるでしょう。毎月の収支を一度書き出し、黒字分をどこに置いておくかを決めておくことが、この先の働き方を落ち着いて選ぶための材料になります。
7. 編集部よりコメント
1つは、この調査の職種の区分は、会社での肩書とは同じではないということです。管理的な仕事に就く人たちの傾向を映す数字として、ご自身の状況と重ねてみてください。
もう1つは、強いストレスを感じる事柄が「ある」と答えることは、特別なことではないということです。働く人全体でも、同じように答えた人が多数を占めています。悩みを抱えている方は多いのです。
また、この調査は前の年と設問の形が一部変わっていて、厚生労働省も前年との比べ方に注意を促しています。年ごとの増減を追うより、同じ年のなかで職種どうしを比べる読み方のほうが確かです。
新しい立場に就いた最初の時期は、うまくいかないことがあって当然です。長い目で見て、さまざまな対処方法や相談先を考えてみましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」統計表 個人調査(第01表・第02-1表・第02-2表)
- 厚生労働省「令和6年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト「資産形成の基本」
宮野 茉莉子
