3. 昭和42年の危機、自販機ブームと世界的な銀不足

穴とギザによる識別の工夫が定着したのも束の間、今度は素材そのものを見直す必要に迫られます。

3.1 銀不足と自動販売機ブームが招いた素材変更

高度経済成長と自動販売機の普及によって、100円銀貨の需要が急激に増加しました。

同じ時期、電子工業などの分野でも銀の需要が高まり、銀不足が世界的な傾向となっていきます。

安定した供給を確保するため、昭和42年(1967年)、100円貨(銀貨)と50円貨(ニッケル貨)の素材は、ともに安定供給が可能な白銅(銅とニッケルの合金)へと変更されることになりました。

3.2 50円を小さくした本当の理由

ここで問題になったのが、大きさです。

素材だけを変更すると、額面の小さい50円貨のほうが100円貨より大きいままになってしまいます。

そこで50円白銅貨は、直径を21mmに縮小したうえで、孔あり・ギザありの現在の菊のデザインに改められました。

100円白銅貨のほうは、デザイン以外は100円銀貨の仕様をそのまま引き継ぎ、直径22.6mm・孔なし・ギザありの桜のデザインとなっています。

4. なぜ50円玉は5円玉より小さくなったのか

ここまでの経緯を踏まえると、冒頭の疑問への答えが見えてきます。

5円貨は昭和23年(1948年)に国会議事堂をデザインした直径22mmの黄銅貨として誕生し、昭和24年(1949年)に孔ありへと変更されたのち、昭和34年の書体変更を経て現在の形になりました。

一方、昭和42年に50円を白銅化する際、50円は100円(22.6mm)より小さくする必要がありました。

もし50円を5円(22mm)より大きい直径にしていたら、100円(22.6mm)との差はわずか0.6mm以下になり、かえって見分けがつきにくくなってしまいます。

そのため50円は21mmに設定され、結果として5円(22mm)よりも小さくなったと考えられています。

現行硬貨の直径・孔・ギザの比較2/2

現行硬貨の直径・孔・ギザの比較

出所:独立行政法人 造幣局「お金に関するFAQ」をもとにLIMO編集部作成

和田 直子
普段何気なく使っている硬貨の大きさにも、識別のしやすさという明確な理由があったことに驚かされます。

額面の順番どおりにサイズを決めてしまうと、かえって似た大きさの硬貨同士が紛らわしくなる場合があるというのは、意外な発見ではないでしょうか。

硬貨は直径だけでなく、孔の有無やギザの有無、重さや素材といった複数の要素を組み合わせることで、手探りでも区別しやすいように設計されています。

お財布の中の小銭を眺めるとき、こうした工夫の歴史にも少し思いを巡らせてみると、見方が変わってくるかもしれません。

5. まとめ:手のひらの硬貨に詰まった先人の知恵

硬貨の大きさは、額面の高さの順番で決まっているわけではありません。

素材や孔・ギザの有無とあわせて、見た目や手触りだけで識別できるようにするための工夫を重ねた結果が、現在の仕様に表れています。

何気なく使っている小銭にも、こうした先人の知恵が詰まっていると思うと、少し違った目で見られそうです。

参考資料

和田 直子