この記事の読みどころ
ジュニアNISAが2016年4月にスタートしました。お子さんの資産形成を長期で考えるよい制度です。
節税メリットがある一方で、お子さんが18歳になるまで引き出せないのが特徴です。
せっかくなら少しずつ投資の勉強もしたいところです。基本は自動で積立がよいですが、ひと工夫するとお子さんと一緒に投資の勉強が進むでしょう。
ジュニアNISAがスタート、ところでジュニアNISAは何のためにできたの?
2016年4月以降、ジュニアNISAという制度がはじまりました。筆者はこういうカタカナ系の呼称はあまり好きではありません。意味が正確に伝わらないからです。
この制度は、字のごとく「ジュニア」向けの「NISA」です。NISAとは日本版少額投資非課税制度を指し、Nippon Individual Saving Accountの略だと言われています。ジュニアは、お子さんのことです。
つまり、ジュニアNISAとは、未成年の方が証券会社に口座を開き、その親が実際の運用・管理を行う制度です。
ではこの制度、個人の方々にとってどんな意義があるのでしょうか。株価を上げたい国、口座を増やしたい証券会社、金融商品を販売したい資産運用会社など各方面に思惑があることは確かですが、制度に魅力がなければ普及しません。一般の方々はこの制度の「魅力」や「趣旨」をしっかり押さえておきましょう。
では、ジュニアNISAの意義は何か。それは、
● 世界的に低金利が進んでいるので、お子さんの将来に資産を残すのであれば、預金ではなく証券投資を長期で進めた方がよいだろう。そのため、国は税制優遇を用意する。
● お子さんと一緒になって長期投資のスキルを高めてほしい。日本の金融リテラシーを高めたい。
という2つだと筆者は考えています。
もしここで「そうかもしれないな」と感じた方は、この先、少し制度の話をしますが、ぜひ最後までお付き合いください。
では、証券会社や資産運用会社は、この制度をどうサポートしようとしているのでしょうか。
1つ目は、手数料・コストの低下です。証券会社は低い取引手数料を提供し始めています。投資信託の売買手数料がゼロである「ノーロード」と呼ばれる商品が増えてきたこともその表れです。資産運用会社も運用会社の収入減である信託報酬の引き下げを進めています。
2つ目は、自動積立の充実です。忙しい一般の方は、毎日変動する相場を事細かに追いかけることはできません。そこで、毎月決まった投信などを購入するように設定しておけば、自動的にそれを継続してくれる制度が充実しています。
最後に、ジュニアNISA向けの新しい投資信託商品の開発です。長期投資に向く商品、リスクを抑え目にする商品など、1人1人の投資経験に沿った商品のラインナップが充実してきました。
いかがでしょうか。腕組みをして資産形成について真剣にお考えの方もいらっしゃるでしょうし、たしなみとして投資をしっかりやってみようかと思われた方もいらっしゃるでしょう。
筆者は金融業界の利益を代弁して「さあジュニアNISAへ」とお誘いするつもりはありません。しかし、日本人の金融リテラシーはもっと高まらないといけないと思っています。
これまでの経験から言って、金融先進国のアメリカ人の金融リテラシーは日本のそれとは比べ物になりません。これはすなわち国力の差につながります。「たしなみ」で結構ですので、お子さんのためにも長期の資産形成を少しだけ手掛けてみてはどうでしょうか。
制度のポイントは?
では制度のポイントを整理しておきましょう。詳細は証券会社にお確かめください。
● 年間投資額は80万円まで。向こう8年間、毎年枠が設定される。
● それぞれの年の投資分について非課税期間は5年間。これは、投資した株や投資信託の配当、分配金、売却益に5年間は課税がされないということです。ただし、非課税枠の利用は1回で再利用はできません(つまり非課税で何度も回転売買できません)。
● お子さんが(簡単に言うと)18歳になるまで売却益などの払い出しが原則できない仕組みです。どうしても払い出す必要がある場合には、基本的に過去にさかのぼって課税されてしまいます。
ジュニアNISAは長期投資が原則
そこでこの制度のポイントは何かと言えば、端的にいって「5年間非課税枠があるのだから、まずは5年後にしっかり利益が出るような長期投資をやってみよう」ということです。
5年後の時点で非課税枠を活用するかどうか、その時に考えればいいのではないでしょうか。お子さんが18歳になるには5年以上かかるかもしれません。その場合に備えて、長期投資で着実に資産形成を目指すと現時点で考えて投資をすれば良さそうです。
長期投資は実るのか
ジュニアNISAは、長期投資をしてみたい個人の方に向いた制度だと理解していただけたのではないかと思います。しかし実は根本的な疑問が皆さんにあるのではないでしょうか。それは、「長期投資って本当に儲かるの?」という問題です。
筆者の回答を正直に言いましょう。その答えは「わからない、でも多分そうなりそうだ」です。
日本のバブル崩壊後の株価を見ると、基本的に一定のレンジを行ったり来たりしているだけで、日本株に長期投資の恩恵が大きかったとは決して言えないでしょう。日本から海外への投資も、長期的な円高によって目減りしてしまったことも事実です。
また、現在は未曽有の世界的な低金利になっています。金利が低いと、株式など他の金融資産の価格が上昇しがちです。つまり金融資産の期待収益率が低下しているため、長期投資だからといって多くを望むのはふさわしくないかもしれません。
しかしながら、今後も日本人にとって長期投資は実らない、と決めつけるのは早計ではないでしょうか。「世界経済がこれからも着実に成長するだろう、その恩恵は世界の株式市場が受けるはずだ」、という考え方は長期的には言えるのではないでしょうか。
決して「絶対」とは言えませんが、長い目で見れば世界株式に投資をする恩恵は必ずあるはずだと筆者は考えています。世界の株式へ投資するリスクは、その恩恵を受けるために取るに値するリスクに違いないと思います。
無理なく楽しむ、私の攻略法
ジュニアNISA、おもしろそうだと感じた方も多いかと思います。しかし、ここにきて「バランス型」「ターゲットデート型」「インデックス型」などさまざまな投信の品揃えが増えてきていて、かえってどう取り組むべきかわかりにくくなっています。ロボットのアドバイスでも聞こうかと思いたくなります。
もし、「この商品だ」とピンとくる商品がない場合、筆者の攻略法をぜひ検討してみてください。
まず、毎月の投資金額を決めます。例えば4万円としましょう。4万円×12か月で48万円ですから、ジュニアNISAの枠に入ります。
この4万円を次のように4等分します。
- 1万円は先進国株の低コスト投信を毎月積み立て
- 1万円は新興国株の低コスト投信を毎月積み立て
- 1万円は世界REIT(など)の低コスト投信を毎月積み立て
- 1万円はワイルドカード
初めの3つは投信の積立の設定を一度しておけば、あとは毎月資金手当てをするだけで完了です。自動的に証券会社が買い付けしてくれます。
そしてポイントは最後の1万円のワイルドカード。これは先進国株、新興国株、日本株、世界REIT、その他なんでも結構です。その月にこれはと思った低コスト投信を選んで買ってください。お子さんと相談するとなおよいでしょう。これを5年続けると、お子さんと一緒に金融リテラシーが高まり、そして「多分」資産が増えているはずです。
毎月の予算が3万円なら、ワイルドカードはやめておいて、ボーナス期だけにワイルドカードを投入する作戦もよいでしょう。
生きた経済の教科書である金融商品をぜひ身近に活用してみてください。
【2016年5月1日 椎名 則夫】
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LIMO編集部