2. 70歳代で働く人が増えている—就業率でみる

総務省の統計トピックス(2025年)によると、65歳以上の就業者数は943万人と過去最多を更新しています。

年代別に就業率をみると、65〜69歳では54.5%と半数を超えています。70〜74歳でも36.2%と、およそ3人に1人が働いており、75歳以上でも12.6%の方が仕事を続けていました。

高齢者の就業率(年齢階級別)2/2

就業率は65〜69歳54.5%、70〜74歳36.2%、75歳以上12.6%で、70代前半でもおよそ3人に1人が働いている

出所:総務省統計局「統計トピックスNo.149 統計からみる高齢者の現状」2025年をもとにLIMO編集部作成

65歳以上の就業者数は、2004年以降、22年連続で増え続け、過去最多となりました。健康で活動的に過ごせる期間がのびてきたことや、働き手を求める職場側の事情などもその背景にあると考えられます。定年でいっせいに仕事を離れるのではなく、体調や希望に合わせて働く期間をのばす人が少しずつ増えているのでしょう。

2.1 働いて得る収入は、家計の三本目の柱

70歳代前半でおよそ3人に1人が働いているという数字は、「70歳代は引退の時期」というかつてのイメージが少しずつ変わってきていることを示しています。働いて得る収入は、年金や蓄えとならぶ、もう一つの家計の柱です。たとえ月に数万円の場合であっても、その分だけ蓄えから取り崩す金額をおさえられ、限りある資産を長くもたせることにつながります。

2.2 働き方は人それぞれ、組み合わせで考える

もちろん、働き方や体調は人それぞれで、働き続けることだけが正解というわけではありません。大切なのは、年金・蓄え・働いて得る収入という三つの柱を、自分の暮らしや希望に合わせてどう組み合わせるかです。蓄えの数字だけを気にするのではなく、これからの働き方まで含めて家計を見渡すことで、70歳代の暮らしの選択肢は広がっていきます。

3. 70歳代の家計、働き方も含めて見渡す

ここからは、70歳代がこれからの家計を整えるために意識しておきたいことを、いくつかの角度から整理してみましょう。70歳代は、蓄えを使っていく時期であると同時に、働き方や受け取り方など、まだ選べることが残っている時期でもあります。蓄えの多い少ないにとらわれず、収入と支出の全体を見渡すのが出発点になります。

まず確かめたいのは、自分が受け取る年金の金額です。ねんきんネットや、毎年届く年金の通知書で、いま受け取っている、あるいはこれから受け取る見込みの金額がわかります。そこに働いて得る収入があれば加え、毎月の支出と照らし合わせると、蓄えから取り崩す必要がある金額が見えてきます。だいたいの数字がつかめるだけでも、蓄えがどのくらいの期間を支えられそうかが見えてきて、使いすぎも防ぎやすくなります。

働き続けることを考えるなら、年金の受け取り方も選択肢になります。年金には、受け取りを遅らせるほど毎月の金額が増える繰下げ受給という仕組みがあり、収入があるあいだは年金を遅らせる、という組み立ても考えられます。ただし、制度の細かな条件は一人ひとりの状況で変わります。適用のしかたに不安があれば、日本年金機構の窓口や年金事務所など、公的な相談先で自分の場合を確かめておくと安心です。

貯蓄については、数年のうちに使う分は値動きのない預貯金で確保し、当分使わない分だけを、物価の上昇にそなえて新NISAのような制度でゆるやかに運用する、という分け方が基本です。運用にまわすお金は値動きがあるので、暮らしに欠かせない分は手をつけず、あくまで余力の範囲にとどめておきます。リスクがどれくらいとれるかは年代によっても変わるため、自身のリスク許容度はしっかりと考えましょう。

あわせて、毎月の支出を一度見直しておくのもよいでしょう。とくに住まいや交通費にかかるお金は固定費のなかでも割合が大きく、ここを整えられると、必要な蓄えの見え方も変わってきます。ほかの世帯とくらべて不安になるより、自分の年金・収入・蓄えのバランスを見て、無理のないペースを組み立てていきましょう。

4. 編集部よりコメント

宮野 茉莉子

70歳代の蓄えは、二人以上世帯で平均2416万円ですが、中央値でみると1178万円。世帯による差がとても大きい年代です。数字の大きさに一喜一憂するより、自分の世帯がどのあたりにいるのかを、中央値を目安につかんでおくとよいでしょう。

今回とくにお伝えしたいのは、70代の家計を「蓄えを取り崩すだけの時期」と決めつけなくてよい、ということです。65〜69歳では半数以上、70代前半でもおよそ3人に1人が働いていて、その収入は蓄えの減りをやわらげてくれます。年金・蓄え・働いて得る収入という三つの柱を、体調や希望に合わせて組み合わせる。そう考えると、70代の暮らしはもう少し柔らかく設計できるはずです。

5. まとめにかえて

ここまで、70歳代の蓄えと働き方をみてきました。金融資産は、二人以上世帯が平均2416万円・中央値1178万円、ひとり暮らしが平均1489万円・中央値500万円(J-FLEC・2025年)。平均と中央値が2〜3倍ひらくとおり、同じ年代でも世帯ごとの差は大きく、平均という一つの数字にとらわれず、中央値もあわせてみておくと実像に近づけます。

あわせてみておきたいのが、70代の「働く」姿です。総務省の統計によると、65歳以上の就業者は943万人と過去最多で、70〜74歳でも36.2%が働いていました。70歳以上の人口が2911万人にのぼるなかで、年金と蓄えに加えて、働いて得る収入も家計を支える柱になりつつあります。

なお、働く高齢者が多い業種は卸売り業・小売業、医療・福祉、サービス業などです。これ以外にも業種はさまざまあるもの。長く働くことを考えている場合には、自分は60歳代、70歳代でどのような仕事に就きたいか、そのキャリアについてあらかじめ考えておくとよいでしょう。

参考資料

宮野 茉莉子