5. 3期を並べると、利益の伸びがどこから来たかが見える
単年の構成比だけでは、変化の方向が掴めない。セグメント別の営業利益を3期並べてみよう。
Metals And Recycling は2024年3月期が772億円、2025年3月期が745億円、2026年3月期が1,394億円。2期はほぼ横ばいで推移し、直近1期で一気に跳ねた形だ。銅価の上昇が効いたタイミングと重なる。
Semiconductor Materials は264億円、267億円、394億円。こちらも直近1期で伸びたが、伸び方は前2期の水準からの上積みという性格が強い。安定して稼ぐ事業が、需要の改善で一段上がったと読める。
最も変化が大きいのは ICTMaterials だ。2024年3月期の営業利益はわずか9億円だった。それが2025年3月期に250億円、2026年3月期に314億円へと水準を切り替えている。営業利益率も0.5%から10.0%まで上がった。
3つを合わせて眺めると、この会社の増益は単一の要因では説明できないことがわかる。銅価の追い風を受けた製錬事業、需要が戻った半導体材料、そして採算が構造的に改善した ICTMaterials。性質の違う3つの動きが、たまたま同じ期に重なった。
裏を返せば、この3つが揃って向きを変える保証もない。銅価が反落しても ICTMaterials の採算改善が続けば、連結の落ち込みは緩和される。事業ポートフォリオの分散効果というのは、こういう局面で意味を持つ。
6. 非鉄金属27社の中で、この収益性はどう見えるか
業種の中での位置も確かめておきたい。2026年3月期の非鉄金属27社では、ROE(自己資本利益率)の中央値が9.0%、営業利益率の中央値が6.5%、自己資本比率の中央値が53.3%となっている。
これに対してJX金属のROEは15.6%、営業利益率は19.8%だ。営業利益率は中央値の3倍に達し、上位25%の水準である11.5%も大きく上回る。収益性という一点に限れば、業種の中でかなり上位にあるものは多い。
一方で自己資本比率は48.3%と、中央値の53.3%をやや下回る。資産の積み上げに対して自己資本の厚みがまだ追いついていない段階と読める。もっとも、自己資本比率が業種平均より低いこと自体を問題視するのは早い。資本効率の観点では、負債を一切使わない財務が最適とは限らないからだ。
気になるのは、この高い収益性がどこまで持続する性質のものかという点である。業種全体でも2026年3月期は営業利益の伸び率の中央値が38.0%と高く、非鉄金属セクターに共通の追い風が吹いた期だった。JX金属の+55.5%は中央値を上回るが、業種の潮流から完全に独立した数字でもない。
相対水準と絶対水準の両方を見ておかないと、この銘柄の実力は測り違えやすい。業種の追い風が止んだときに何が残るのか。そこを確かめる視点を持っておきたいところだ。
7. 筆者コメント
この会社の見え方が変わろうとしているのが直近の姿だと感じる。上場からの期間がまだ短く、市場は評価の軸を探している最中にある。その揺れが、月末終値のレンジにそのまま表れた。
本文で見たとおり、3つのセグメントは性質がまったく違う。価格変動に振られる事業と、需要サイクルに乗る事業と、採算構造を作り直した事業。これを一本の物差しで測ろうとすると、どうしても評価が定まらない。
おそらく市場は、この会社を半導体材料の成長株として見るのか、資源価格に連動する市況株として見るのかを、まだ決めかねている。同じ決算に対して強気と弱気が交錯すれば、値動きは荒くなる。
投資家の側にできるのは、自分がどちらの物差しで見ているかを自覚することだろう。セグメント別の営業利益を毎期追いかけて、利益の重心がどちらへ動いていくかを確かめる。その積み重ねが、評価軸を固める近道になるはずだ。
参考資料
9. 免責事項
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石津 大希