2. 社会保険に入るかどうかで、手取りはどこが変わるのか

ここまで、月額8.8万円の判定に使うのが所定内賃金であること、残業代や賞与や通勤手当は算定に含まれないこと、週20時間などの要件も同時に満たす必要があることを確認しました。では、この判定を満たして社会保険に入ると、手取りはどう変わるのでしょうか。

年収と手取りの関係は、LIMOの記事「手取り15万・18万・20万・22万・25万円は年収いくらか?非正規・若手層向けの早見表と、社会保険未加入で変わる本当の差」から要点を借りて確認します。

2.1 年収と手取りの違いを先に押さえる

LIMOの記事「手取り15万・18万・20万・22万・25万円は年収いくらか?非正規・若手層向けの早見表と、社会保険未加入で変わる本当の差」によると、年収とは税金や社会保険料を差し引く前の1年間の総支給額で、求人票や源泉徴収票の支払金額がこれにあたります。

同記事は、そこから引かれるものとして厚生年金、健康保険、雇用保険、所得税、住民税を挙げています。手取りはこれらを引いたあとの金額です。

1ページ目で見た8.8万円の判定が効いてくるのは、このうち厚生年金と健康保険の部分です。加入するかどうかで、引かれ方そのものが入れ替わります。

2.2 加入していないと国民健康保険と国民年金を自分で払う

同記事は、社会保険料が勤務先の厚生年金・健康保険に加入しているかどうかで内容が大きく変わり、加入していない場合は代わりに国民健康保険と国民年金を自分で全額払う必要があるとしています。

払わなくてよくなるわけではない、という点が出発点です。同記事は、東京23区のケースを次のように示しています。

東京23区は国民健康保険料が統一されており、令和8年度は医療分が均等割4万7600円・所得割7.51%、後期高齢者支援金分が均等割1万7600円・所得割2.80%です(40歳未満のため介護分は含みません)。国民年金は令和8年度の月額1万7920円です。

出所:LIMO「手取り15万・18万・20万・22万・25万円は年収いくらか?非正規・若手層向けの早見表と、社会保険未加入で変わる本当の差」

保険料の決まり方そのものが違います。厚生年金と健康保険が報酬に応じて決まるのに対し、国民健康保険には全員が同額を負担する均等割があり、国民年金は所得にかかわらず定額です。

2.3 本人が払う額には、ほとんど差がない

負担額を並べると意外な結果になります。同記事は、同じ年収で両者を比べた結果を次のように書いています。

これらを年収300万円のケースに当てはめると、国民健康保険・国民年金の合計は年間44万4169円になります。会社員の社会保険料(年間44万700円)と比べると、その差はわずか年間3469円です。

出所:LIMO「手取り15万・18万・20万・22万・25万円は年収いくらか?非正規・若手層向けの早見表と、社会保険未加入で変わる本当の差」

同記事は、非正規は社会保険料が高くて損だという言われ方をよく見かけるが、この料率で計算する限り本人が払う金額そのものにはほとんど差がないとしています。

目先の手取りを比べても、加入する側と加入しない側で大きくは開かないということです。では何が違うのかというと、見えていない側にあります。

2.4 本当の差は、給与明細に載らない会社負担にある

同記事は、本当の差について、会社員の場合は会社が同額程度をさらに負担してくれている点にあるとしています。

厚生年金と健康保険は労使折半です。同記事は、控除欄に載っている本人負担分と同額を会社側が別途負担している仕組みであり、この会社負担分は給与明細には基本的に記載されないとしています。

明細に出てこないので、比べようとしても目に入りません。加入を避けている場合、手取りが数百円から数千円変わらない一方で、この恩恵そのものを受けられていない可能性があると同記事は指摘しています。

2.5 将来の年金額にも返ってくる

差は今の手取りだけではありません。同記事は、厚生年金に加入すると将来の年金額に反映される点も見落とせないとしています。

国民年金だけの場合と比べて受給額が変わるため、短期的な手取りだけで働き方を判断するのはもったいない場合があるという指摘です。

1ページ目で見た8.8万円の判定は、入り口の線引きにすぎません。その線をどちら側で越えるかが、老後まで続く違いになります。

2.6 自分がどちらの立場かは給与明細で分かる

確かめ方は簡単です。同記事は、給与明細に厚生年金保険料の記載があれば会社の厚生年金に加入しており、記載がなく自分で国民年金の納付書が届いている場合は未加入だとしています。

ねんきん定期便でも確認できます。複数の勤務先を組み合わせて働いている場合は、どこでも要件を満たさずに未加入になっていることがあります。

同記事は、判断に迷う場合は勤務先の担当部署または年金事務所の窓口で、自分の勤務条件を伝えて確認するのが確実だとしています。

3. 判定は月額、影響は老後まで

1ページ目では、短時間労働者の適用判定に使うのが所定内賃金の月額8.8万円であり、年収106万円は参考の値であること、算定対象は基本給と諸手当で、臨時の賃金・賞与・割増賃金・精皆勤手当や通勤手当や家族手当は含まれないことを確認しました。週20時間などの要件と、勤め先の規模の条件も同時に効いてきます。

2ページ目では、社会保険に入らない場合も国民健康保険と国民年金を自分で払うこと、本人が払う額には大きな差が出ないこと、本当の差は給与明細に載らない会社負担と将来の年金額にあることを見ました。

年収を抑えて加入を避けるという判断をする前に、判定に使われる数字が何なのかと、避けたときに何を手放すのかを確かめておく価値があります。自分の勤務条件が要件に当たるかどうかは、勤め先か年金事務所に確かめてください。

参考資料

LIMO編集部社会保障解説班