2. 年金額が増える人・減る人はどんな人?

10月からの年金額変更では、年金額が増える方だけでなく、手取りが減る方もいます。それぞれどのような方が対象になるのか確認していきましょう。

2.1 年金額が増える人

10月から年金額が増える可能性があるのは、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている方です。

在職定時改定によって、前年9月から当年8月までの厚生年金加入期間が追加され、その分だけ老齢厚生年金が再計算されます。

では、具体的にどのくらい増額されるのでしょうか。月収(標準報酬月額)が20万円・25万円・30万円で1年間働いた場合に、増額される年金額の目安は以下の通りです。

月収が5万円違うと、1年間で増える年金額は約3300円変わります3/3

標準報酬月額20万円・25万円・30万円のそれぞれで1年間厚生年金に加入した場合に、在職定時改定で増える年金の年額を並べた表

出所:日本年金機構「は行 報酬比例部分」をもとにLIMO編集部作成

【月収(標準報酬月額)/1年間働くことで増える年金額(年額)】

  • 20万円:約1万3000円
  • 25万円:約1万6400円
  • 30万円:約1万9700円

65歳以降に月収20万円で働く場合、1年間厚生年金に加入すると、年金額は年額で約1万3000円増える計算になります。同様に、月収25万円では約1万6400円、月収30万円では約1万9700円の増額になります。

計算に使ったのは、老齢厚生年金の報酬比例部分を求める式です。平均標準報酬額に1000分の5.481を掛け、加入月数を掛けます。月収20万円で12か月なら「20万円×5.481/1000×12か月=1万3154円」となります。

ここでは賞与がない前提で試算しています。賞与を受け取っている場合は、その分も平均標準報酬額に含まれるため、増額幅は大きくなります。実際の増額は給与水準やこれまでの加入期間などによっても異なることに注意しましょう。

なお、2026年4月からは在職老齢年金の支給停止基準が変更されています。これまでは、月収と年金月額の合計(※)が月51万円を超えると年金が減額される仕組みでしたが、2026年4月以降は「月65万円」を超えなければ支給停止されません。

※正確には「老齢厚生年金の基本月額と給与・賞与を基に計算した『総報酬月額相当額』の合計」。以下同様。

この引き上げは、令和7年の年金制度改正で基準額が令和6年度水準の50万円から62万円に改められ、そこに名目賃金変動率による改定が加わった結果です。改正の内容として「62万円」という数字を目にした方は、令和8年度の実際の基準額が65万円である点に注意してください。

以前よりも、年金を減額されなくなった方が増えたと考えられます。

2.2 手取りが減る人

まず押さえておきたいのは、在職定時改定そのものが原因で年金の振込額が減ることはない、という点です。

支給停止がある場合の支給額は「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2」で計算します。基本月額が1万円増えると支給停止額は5000円増えるため、差し引きでは5000円が手元に残ります。増え方が半分になるだけで、減りはしません。

日本年金機構も、65万円を超えても実際に支給される年金額と賃金の合計額はなだらかに増加する仕組みであり、手取り収入が減少することはないと説明しています。

では、実際に振込額が前年より減るのはどのような場合でしょうか。

ひとつは、昇給や賞与によって総報酬月額相当額が上がった場合です。合計が月65万円を超えると、超えた分の半額が支給停止額になるため、年金の振込額が前年を下回ることがあります。これは在職定時改定ではなく、収入が増えたことによる変化です。

もうひとつは、年金から天引きされる介護保険料や国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、住民税などが増えた場合です。年金額そのものは増えていても、差し引かれる額が大きくなれば、口座に入る金額は減ります。

とくに住民税は、10月支給分から天引き額が切り替わります。詳しくはLIMOの記事「【来月10月15日は年金支給日】この支給分から住民税の天引き額が切り替わる。非課税は65歳以上の単身で「155万円」以下」でまとめています。

2.3 在職老齢年金の仕組みもあわせて押さえる

在職定時改定は、過去1年間に納めた厚生年金保険料の実績を年金額に上乗せして増やし、毎年10月分から改定する制度です。この制度の適用によって、年金の基本月額が減ることはありません。

ただし、在職老齢年金による支給停止や、年金から天引きされる社会保険料・税金などによって、実際の振込額が思ったほど増えない、あるいは前年より減る場合があります。

65歳以降も厚生年金に加入して働けば、必ず手取りも増えるというわけではないため、在職定時改定だけでなく、在職老齢年金の仕組みも正しく理解しておくことが重要です。

3. 通知書は変更理由と振込額の両方を見る

2026年10月から年金額が変わる代表的なケースは、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている方に適用される在職定時改定です。

在職定時改定では、前年9月から当年8月までの厚生年金加入期間を反映して、10月分から老齢厚生年金が再計算されます。長く働いて厚生年金に加入することで、将来の年金額を増やせる仕組みです。

対象者には「年金決定通知書・支給額変更通知書」が送付されるため、内容をしっかり確認しましょう。単純に「年金が増えた・減った」と判断するのではなく、変更理由と実際の振込額を確認することが大切です。

参考資料

木内 菜穂子