「実家の名義は亡くなった親のまま」というご家庭は、決して少なくありません。

放置していると、正当な理由なく手続きを怠った場合に10万円以下の過料の対象になり得ることをご存知でしょうか。

「うちは何十年も前に相続した実家だから関係ない」と思われるかもしれませんが、過去の相続もすべて対象になり、しかもその猶予期限まで残り半年ほどに迫っています。

幸い、名義がわからない不動産を洗い出せる新しい制度も始まっており、うまく使えば手続きの負担を減らせます。

1. 相続登記義務化の基本ルールと「過料」の発生条件

まずは、相続登記義務化の基本的なルールを確認しておきましょう。

1.1 申請期限は「知った日から3年以内」

2024年(令和6年)4月1日から、相続などで不動産を取得した相続人は、相続登記の申請が法律上の義務になりました。

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。

複数の相続人による遺産分割協議を経て取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記をする必要があります。

1.2 過料が科されるまでのプロセス

正当な理由がないのに期限内に申請しない場合、10万円以下の過料の対象となり得ます。

ただし、期限を過ぎた瞬間に自動的に過料が科されるわけではありません。

実際には、登記官からの催告を受けても応じない場合に裁判所へ通知され、裁判所の決定を経てはじめて過料となる、いわば段階的な手続きです。

また、法務省は「正当な理由」の具体例として、相続人が極めて多数にのぼる場合や、遺言の有効性・遺産の範囲について争いがある場合などを挙げています。

過料の対象外になり得る「正当な理由」の例1/4

過料の対象外になり得る「正当な理由」の例

LIMO編集部作成

2. 「過去の相続」も対象!放置実家の猶予期限は残り半年

ここが、今回とくに押さえておきたいポイントです。

2.1 制度開始前の相続も、すべて義務化の対象

「相続登記の義務化は2024年4月からの話だから、それより前に相続した実家は関係ない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし実際には、施行日より前に発生した相続で、まだ登記をしていない不動産もすべて義務化の対象になります。

この場合、令和9年(2027年)3月31日までに登記をするという経過措置(猶予期間)が設けられています。

相続登記の経過措置2/4

相続登記の経過措置、期限まで残り196日

LIMO編集部作成

記事執筆時点(2026年9月16日)で、この経過措置の期限まで残り196日、月数にすると半年ほどしかありません。

数十年前に相続した実家をそのままにしている、という方は、思っているより時間が残されていない可能性があります。

2.2 放置を続けることの実務上のリスク

名義変更を先送りにしたまま次の世代の相続(いわゆる二次相続)が発生すると、相続人の数がさらに増え、手続きが一段と複雑になります。

また、名義が亡くなった人のままでは、実家を売却しようとしても買主が見つかりません。

過料の心配だけでなく、こうした実務上の不便さも、名義変更を後回しにできない理由になります。

3. 物件の全容がわからない…を解決する「所有不動産一覧化」の新制度

「そもそも親がどこにどんな不動産を持っていたのか、全部は把握できていない」というケースも珍しくありません。

3.1 所有不動産記録証明制度とは

これまで登記簿は土地や建物ごとに作成されており、特定の人が全国にどんな不動産を持っているかを一覧的に把握する仕組みはありませんでした。

そこで2026年2月2日から、「所有不動産記録証明制度」がスタートしています。

この制度では、不動産の所有者本人、または登記名義人の相続人からの請求にもとづき、法務局の登記官が、特定の人が所有する全国の不動産を一覧的にリスト化して証明してくれます。

3.2 親名義の不動産を漏れなく把握するために

亡くなった親(被相続人)から不動産を相続した子(相続人)であれば、この証明書を使って、登記簿上で親が所有者となっている不動産を一覧的に確認できます。

請求は法務局の窓口のほか、オンラインでも可能で、手数料は1通あたり1600円(窓口請求の場合)です。

ただし、検索条件として入力した氏名・住所と、登記簿上の氏名・住所が一致していない不動産は抽出されないため、旧姓や旧住所のままになっている不動産がある場合は注意が必要です。