そこで、妻であるあなたにズバリお聞きします。夫に隠し子がいないと言い切れますか?

「大丈夫、私は夫を信じていますから」

素晴らしい夫婦愛、夫への揺るぎない信頼です。これが本来の姿なのかもしれません。こう言い切れる方は、その信念を貫いて下さい。ただし、もし夫に隠し子がいることが判明した場合は、地獄へ突き落される以上の絶望感を味わうことを覚悟しなければならないでしょう。

「大丈夫、夫は私との結婚が初婚ですから」

結論から言うと、全く理由になっていません。非嫡出子を認知するのに、初婚も再婚も関係ありません。むしろ、未婚の男性が認知しているケースは少なくないと考えられます。ちなみに、男性による認知に年齢(たとえば、18歳以上でなければならない等)は法的に規定されていません。

「大丈夫、戸籍にその旨の記載がないことを確認しましたから」

かなり具体的な理由になってきましたが、残念ながら十分ではありません。妻が確認した戸籍は、現在の戸籍、つまり、夫が筆頭者として記載され、妻が配偶者として記載されている戸籍だと思われます。もし、この現在の戸籍に認知事項が記載されており、それを妻が発見した場合は修羅場と化し、家庭崩壊となることもあるでしょう。

しかし、ここに記載がないからといって、過去に夫が認知したことがないとは証明できません。

現在の戸籍だけでなく、古い戸籍も調べる必要がある

では、どうすればいいのでしょうか。

これも結論から言うと、夫の古い戸籍を調べる必要があります。通常、婚姻時には新たに戸籍を作ります(戸籍を「編成」すると言います)。つまり、夫と妻がそれまで入っていた戸籍を離脱して、2人で新たに編成した戸籍に入るわけです。

ただ、ここで重要なのは、戸籍を新たに編製する場合、古い戸籍の記載事項が全て転記載されるわけではないということです。現在の戸籍法では、その転記載されない事項に認知に関する事項も含まれているのです。

仮に、夫が妻と結婚する以前から非嫡出子を認知していたとしましょう。その旨は結婚前の戸籍には記載されています。しかし、結婚時に新たに戸籍を編製する場合、その認知に関する事項は(新しい戸籍に)転記載されないのです。

一方、認知された子(非嫡出子)の戸籍には、父親が新たな戸籍を編製することとは一切関係なく、その後もずっと残り続けます。ですから、認知された子は、自分の父親が誰なのか認識できるのです。戸籍謄本を持参した隠し子が、ある日突然登場する理由がここにあります。

おわりに

いかがでしょうか。少しでも不安を感じたならば、現在の戸籍だけでなく、夫が子供を設けることが可能になったと思われる年齢以降の古い戸籍を調べるといいでしょう。ただし、最悪の場合は、家庭が修羅場と化すリスクは覚悟するべきでしょう。「知らぬが仏」という言葉があることもお忘れなく。

葛西 裕一