相続に関するトラブル・係争が増加しています。直近の統計データではありませんが、「平成24年度司法統計」(最高裁判所)によると、家庭裁判所への相続関係の相談件数は約17万5千件となり、10年間で約2倍弱増となりました。
増加する相続に関するトラブル
この相談件数はその後も漸増していると見られますが、年間の死亡者数が約136万人ですから、単純計算だと約15%が相続相談をしていることになります。さらに、死亡者には未成年を含めた若年層も相当数含まれているため、実態面では20~25%という推察も可能です。
また、遺産分割事件の件数(家事調停・審判) も、平成14年の9,148件が16年後の平成30年には13,040件に増加しており、過去最高となりました。1985年は約5,100件だったことからも、遺産相続に係るトラブルが増加の一途を辿っていることがわかります。
さらに、やや意外なのは、こうした遺産分割トラブルの約75%が遺産総額5,000万円以下であり、うち1,000万円以下は約33%です。1,000万円や5,000万円が少額とは言いませんが、遺産分割のトラブルは身近に起こり得る問題であることがよく分かります。
遺産分割係争の原因の1つは“隠し子”の登場
本来、民法によって法定相続分が定められているため、ここまで多くの係争は起きないと考えるのが普通です。しかしながら、相続で最も優先される遺言書が残されている場合、その内容に異議を唱える相続人が多いのが実情のようです。また、特別寄与分や特別受益分、生前贈与の扱いも係争理由となることが少なくありません。
そして、見逃せない係争理由の1つが、突然に新たな相続人が登場するケースです。具体的な例として、亡くなった人(被相続人)に“隠し子”がいたことが挙げられます。隠し子は歴とした相続人であり、財産分与の対象者です。基本的に拒否できません。しかしながら、ある日突然現れたこの相続人を、心情的に容易に受け入れることができないことも理解できます。
ここから先は、話を簡単にするため、夫に“隠し子”がいるかどうかで考えてみます。もちろん、逆の場合、つまり、妻に“隠し子”がいる可能性もあり得なくはないですが、極めて稀なケースかもしれません。異論もあるかとは思いますが、やはり、隠し子がいるのは夫というケースがほとんどでしょう。
まず、“隠し子”とは何でしょうか?
これは、夫が認知した非嫡出子を指します。ここで「非嫡出子」とは、婚姻関係のない女性との間に生まれた子を意味します。その非嫡出子を“自分の子”と認めることを認知と言います。
そして、男性が認知手続きを取ると、男性の戸籍にはその旨が記載され、認知された子(非嫡出子)の戸籍にもその旨が記載されます。時々、芸能人など著名人に“隠し子”がいたことが明らかになって、週刊誌のネタになったりしています。
なお、女性(つまり母親)は分娩という事実によって当然に親子関係が生じるため、認知の手続きは不要です。
夫に隠し子がいないと断言できますか?
相続の際、こうした“隠し子”が係争の要因になることが多いのは、ある日突然、戸籍謄本を持参して登場するからです。逆に言うと、早くから隠し子の存在を知っていれば、メンタル面を含めて様々な準備をすることができるでしょう。