年金は65歳から受け取るものだと思っていたけれど、”遅らせると増える”と聞いたことがある。そんな方もいるのではないでしょうか。
厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度末現在で繰下げ受給を選んでいたのは、老齢厚生年金の受給権者のうち1.9%でした。
この記事では、繰下げ受給の増額率と令和8年度の年金額をもとにした試算、そして実際に繰下げを選んでいる人の割合を確認します。
なお、年金額の目安については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 年金の繰下げ受給とは。1か月あたり0.7%増えて上限は84%になる
はじめに、繰下げ受給の基本を確認します。
日本年金機構によると、老齢年金は66歳以後75歳までの間で繰り下げて、増額した年金を受け取ることができます。
1.1 繰下げの申出ができるのは66歳から75歳まで
増額率は「0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」で計算されます。
1年遅らせれば8.4%、5年遅らせて70歳からなら42%、10年遅らせて75歳からなら84%です。
上限は84%で、75歳に達した月を過ぎてから申し出ても、それ以上は増えません。
なお昭和27年4月1日以前に生まれた方は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなり、増額率は最大42%です。
繰下げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金のそれぞれについて選ぶことができます。
1.2 令和8年度の老齢基礎年金で増額後の月額を試算する
日本年金機構によると、令和8年4月分からの老齢基礎年金の満額は月7万608円です(昭和31年4月2日以後に生まれた方の1人分)。
この額をもとに、繰り下げた場合の月額を1歳刻みで試算したものが次の図です。
70歳まで繰り下げると月10万263円、75歳まで繰り下げると月12万9918円になります。
本来の満額と比べると、75歳まで繰り下げた場合は月5万9310円多い計算です。
ただしこれは令和8年度の年金額で計算した目安にすぎません。
年金額は毎年度改定されるため、実際に受け取るときの額は、そのときの年金額に増額率をかけたものになります。
2. 厚生年金と国民年金で、繰下げ受給を選んだ人はどのくらいか
次に、繰下げ受給を実際に選んでいる人がどのくらいいるのかを確認します。
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」に、繰上げ・繰下げの受給状況がまとめられています。
2.1 国民年金は繰上げが減り、繰下げが増えている
繰下げ受給とは反対に、65歳より前に受け取り始めて年金額が減るしくみが繰上げ受給です。
減額率は原則1か月あたり0.4%で、昭和37年4月1日以前に生まれた方は0.5%です。
令和6年度末現在、国民年金の受給権者のうち基礎のみ・旧国年に該当する方では、繰上げが23.2%、繰下げが2.4%でした。
概況では、繰上げ率は低下傾向にある一方で、繰下げ率は上昇傾向にあると説明されています。
年度末時点で70歳の受給権者に限ると、繰上げは10.1%、繰下げは5.5%です。
2.2 老齢厚生年金で繰下げを選んだ人は1.9%
老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金の受給権者を含まない)では、令和6年度末現在で繰上げが1.2%、繰下げが1.9%でした。
年度末時点で70歳の受給権者に限ると、繰上げは0.7%、繰下げは4.2%で、こちらも上昇傾向です。
令和4年4月から新たに設けられた5年を超える繰下げをしている方は、令和6年度末現在で2万7983人でした。
受け取り方の違いは、実際の年金額にも表れています。
老齢基礎年金(受給資格期間を原則25年以上有する受給者)の平均年金月額は、繰上げが4万6448円、本来が6万503円、繰下げが7万7244円でした。
繰下げを選んだ84万人の平均は、本来どおり受け取っている2875万人の平均を月1万6741円上回っています。
繰下げの話になると「何歳まで生きれば得か」に関心が集まりがちです。
ただ、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられます。夫婦であれば、どちらの年金をいつから受け取るかという組み合わせで考えると、選べる幅が広がります。

