2. 増えた分を預貯金と保険で持ち続けるとどうなるか
第Ⅰ階級では貯蓄の57.8%が通貨性預貯金で、65歳以上の無職世帯では定期性預貯金が最も多くなっていました。給与天引きの財形貯蓄や、長く加入している貯蓄型保険で持ち続けている資金もあります。金利が上がった局面で、この持ち方はどう評価できるのでしょうか。
財形貯蓄と貯蓄型保険の位置づけは、LIMOの記事「財形貯蓄や貯蓄型保険とは?総務省の物価上昇率3.2%と政策金利を試算」から要点を借りて確認します。
2.1 財形貯蓄は3つの種類で税の扱いが分かれる
まず制度の形を押さえます。
LIMOの記事「財形貯蓄や貯蓄型保険とは?総務省の物価上昇率3.2%と政策金利を試算」によると、財形貯蓄は勤労者財産形成促進法に基づき、給与から一定額を天引きして積み立てる制度です。導入企業に勤めていれば、正社員に限らずパートや契約社員でも利用できるとされています。
種類は一般財形、財形住宅、財形年金の3つです。一般財形は使い道が自由な代わりに利子等に税金がかかり、財形住宅と財形年金は住宅資金または60歳以降の年金として使うことを条件に、利子等が非課税になります。使い道を縛る代わりに税の優遇がつく形です。
貯蓄型保険は、死亡保障などの機能に加えて解約時や満期時にお金を受け取れる保険で、学資保険、終身保険、個人年金保険が代表例として挙げられています。契約時に約束された予定利率に基づいて将来の受取額が計算される仕組みが基本だと同記事は整理しています。
2.2 政策金利は約1年半で1.0%程度まで上がった
金利の動きは日付とともに記録されています。
日本銀行の統計データによると、政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)は2024年7月まで0.1%未満で推移していました。
その後、2024年8月に0.25%程度、2025年1月24日に0.5%程度、2025年12月19日に0.75%程度、2026年6月16日に1.0%程度へと、段階的に引き上げられています。
出所:LIMO「財形貯蓄や貯蓄型保険とは?総務省の物価上昇率3.2%と政策金利を試算」
実質ゼロだった水準から1.0%程度まで、段階的に引き上げられた経緯です。同記事は、これは近年では見られなかった動きだとしています。
2.3 それでも実質金利はマイナスのまま
上がった金利は、物価と並べて見る必要があります。
ここで、名目の金利から物価上昇率を差し引いた「実質金利」を編集部で試算します。前提は2026年8月時点の政策金利1.0%程度、物価上昇率は2025年平均の3.2%です。
1.0%から3.2%を引くと、実質金利はマイナス2.2%程度という計算になります。銀行の預金金利(大手行で0.4%程度)で計算しても、マイナス2.8%程度です。
出所:LIMO「財形貯蓄や貯蓄型保険とは?総務省の物価上昇率3.2%と政策金利を試算」
前提となる物価は、総務省統計局の消費者物価指数で2025年平均の総合指数が前年比3.2%の上昇だったという値です。名目の金利が上がっても物価の上昇速度がそれを上回るため、実質的な価値という観点では資産はまだ目減りしている状態にあると同記事は述べています。
この理屈は財形貯蓄や貯蓄型保険だけの弱点ではありません。同記事は、現金や普通預金で持つ分についても同じ理屈で実質的な価値は目減りすると指摘し、むしろ給与天引きや契約という形で一定期間動かしにくくする仕組みは、目的が明確な資金には向いていると整理しています。
2.4 予定利率と標準利率は別の指標
報道の読み方にも注意が必要です。
同記事によると、標準利率は金融庁が定める基準で、保険会社が将来の保険金の支払いに備える責任準備金を積み立てる際の目安となる利率です。過去の長期国債の利回りなどを基準に見直される仕組みで、2017年4月に0.25%へ引き下げられて以降の変更は2026年8月時点で確認できていないとしています。
一方の予定利率は、各保険会社が個々の契約者に約束する利率で、会社ごと・商品ごとに設定されます。予定利率が上がったという報道は、制度全体の基準が変わったことを意味するわけではなく、各社が個別に判断した結果である可能性が高いという整理です。
既契約に新しい予定利率が自動的に適用されることは通常ないとも書かれています。気になる場合は、契約している保険会社にその契約の予定利率が何%かを確認するのが確実です。
2.5 財形貯蓄の非課税550万円には目的外払出しの規定がある
制度側の落とし穴もあります。
同記事によると、財形年金貯蓄は元本550万円までの利子等について所得税が非課税となる制度で、財形住宅貯蓄と両方を利用している場合は、両方を合わせて最高550万円までが非課税の対象になります。保険等の商品の場合は上限が異なるとされています。
非課税の要件は、5年以上の期間にわたって定期に給与天引き預入により積み立てること、そして60歳以降の年金の支払開始まで払出しをしないことです。この要件を外れる形で住宅資金や年金以外の目的で払い出すと、非課税で受け取っていた利子等について原則5年間さかのぼって課税される仕組みだと、国税庁の説明を引いて述べています。
特に注意したいのは転職や退職のタイミングだとしています。転職先に財形貯蓄制度がない場合、一定期間内に手続きをしないと目的外払い出しとみなされる可能性があるためです。なお目的を問わず使える一般財形には、そもそも利子非課税の優遇はありません。
3. 増えた器と、動かしにくい器を分けて数える
ここまで、階級と世帯区分による貯蓄の中身の違いと、財形貯蓄・貯蓄型保険の位置づけを見てきました。
階級の側では、貯蓄が最も多い第Ⅴ階級で有価証券の割合が27.0%、最も少ない第Ⅰ階級で通貨性預貯金の割合が57.8%でした。世帯区分では、65歳以上の無職世帯が定期性預貯金778万円・通貨性預貯金766万円・有価証券510万円、勤労者世帯が通貨性預貯金641万円・有価証券370万円・定期性預貯金343万円で、有価証券と定期性預貯金の順位が反転しています。
持ち方の側では、政策金利が1.0%程度まで上がっても実質金利はマイナスのままだという試算が示されています。財形貯蓄の非課税枠は財形住宅と財形年金を合わせて550万円までで、目的外に払い出すと原則5年間さかのぼって課税されます。予定利率と標準利率も別の指標です。
まずは自分の貯蓄を器ごとに書き出し、どの階級・どの世帯区分と比べているのかを決めたうえで、目的が決まっている資金とそうでない資金を分けるところからになります。財形貯蓄の継続手続きの期限や必要書類は勤務先の人事・総務等の担当部署に、契約の予定利率や解約時の条件は加入している保険会社の窓口にご確認ください。
参考資料
LIMO編集部貯蓄解説班