We need men who can dream of things that never were.
私たちは、今までに無いものを夢見る人々を必要としている。
by ジョン・F・ケネディ
フロンティア・スピリッツで新時代に投資
第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが掲げた「ニューフロンティア政策」は、アメリカ国民の西部開拓時代に培われた開拓者精神(フロンティア・スピリッツ)を呼び覚まし、新たなフロンティア(未開拓地)に挑戦するという目標を与え、国力増強に成功しました。
投資の世界での「フロンティア」は、中東、アフリカ、アジア、中南米など、経済発展の初期段階にあり、将来的に高い成長と新ビジネス誕生の可能性を秘めた国々を指します(注1)。世界経済の減速が懸念される今こそ、投資家としてのフロンティア・スピリッツを呼び覚まし、若き成長国に目を向けるべきではないでしょうか。
フロンティア諸国が世界経済のトップランナーへ
2030年というとはるか先のようですが、たった11年後の未来です。下のグラフは、2030年までの各国の経済成長率の予想を示したものです。米国、日本など先進国の減速もそうですが、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)平均も4%にとどまると予想されています。
振り返れば、今から10年前に当たる2009年に初めてBRICs4ヵ国による首脳会議が開催され、その後、ブラジル・ロシア・インド・中国は著しい成長を遂げ、世界経済成長をけん引するトップランナーと呼ばれるまでになりました。そして、次の10年にかけて、トップランナーになる可能性を秘めているのは、フロンティア諸国とも考えられています。
米中貿易摩擦でさえも、フロンティア市場にとっては追い風
米中貿易交渉の緊張の高まりが、世界経済に重くのしかかっていますが、その中で頭角を現してきたのが、フロンティア国であるベトナムとフィリピンです。
対米輸出関税を回避するための中国の代替地となる輸出拠点として注目され、輸出を大きく伸ばしています。また、太平洋に出やすい地理的優位性に加え、労働コストの低さから、関税回避で生産拠点を移転させる中国企業だけでなく、世界の企業からの直接投資も拡大しています。
イノベーションがもたらす、フロンティアゆえの優位性
「フロンティア諸国-無限の可能性に満ちた新時代の幕開け」でも、ケニアのキャッシュレス決済を例にリープフロッグの説明をしましたが、インフラや法制度が未整備だからこそ、既成の価値観にとらわれず、先進諸国が経てきたような段階的な進歩を飛び越えて、新たなテクノロジーの爆発的な普及により、異次元の発展を遂げる可能性があります。
リープフロッグ事例 – ドローンによる配送革命で救われる命
たとえば、ドローンによる配送サービスですが、日本でもすでにさまざまな企業が実証実験を行っており、一部ではサービスを開始しています。しかしながら、ドローンによる事故や配達中の盗難等に対する損害賠償など、導入への課題も多く、法整備が必要とされているため、技術的には可能でも、全国的に普及するまでにはいたっていません。
ところが、アフリカ諸国では、世界に先駆けて、すでにドローンによる配送サービスを実用化しました。高層ビルや鉄塔・電線が少ないという利点を生かし、道路や鉄道が未整備で配送に何時間もかかる過疎地の病院まで、医薬品や輸血用血液を配送することで、多くの命を救っています。
成長への先回り投資
フロンティア諸国の金融市場は規模が小さく、上場企業の情報開示が未熟等、様々な留意点はありますが、22世紀まで続く人口増加、国家規模のインフラ開発、そして、未開拓であるがゆえに優位性のあるイノベーション、この3つが同時進行するフロンティア諸国では、未知の領域での発展が見込まれます。
新時代の投資テーマとして、若い成長国であるフロンティア諸国が経済成長のトップランナーになる前に、その潜在的な成長力を先回りしてポートフォリオに組み込むことは、リターンを高めるだけでなく、分散投資の面からも非常に重要と言えるでしょう。
注1:フロンティア諸国の定義は各社異なる場合があります。