2026年9月、秋に向けて来年度の年金制度改正の議論が本格化するなか、将来の年金や万が一の保障に対する関心が社会全体で高まっています。ご家族が亡くなられた後の手続きを進めるなかで、「残された家族の生活を支える遺族年金が、いったいいくらもらえるのか」は、多くの方が最も気にされるポイントです。

私自身、FP(ファイナンシャル・プランナー)として家計相談をお受けするなかで、「夫はまだ若く厚生年金の加入期間が短いので、遺族年金はほとんどもらえないのではないか」と不安な表情でご相談に来られる方に数多くお会いしてきました。たしかに遺族厚生年金は現役時代の加入期間が影響しますが、実は働き盛りで万が一のことがあったご家族をしっかりと守るための特例が用意されています。

この記事では、遺族基礎年金と遺族厚生年金の基本的な金額を確認したうえで、遺族厚生年金の額を左右する「短期要件」と「長期要件」の違い、そして加入期間が短くても安心な「300月みなし」の特例について分かりやすく解説します。

1. 遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれる

遺族年金は1つの年金ではなく、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金保険から支給される遺族厚生年金に分かれています。

亡くなった方がどの制度に加入していたか、遺族に18歳到達年度末までの子がいるかどうかで、受け取れるものが変わります。

1.1 遺族基礎年金は年84万7300円に子の加算額を足す

遺族基礎年金を受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。

日本年金機構によると、令和8年4月分からの額は、子のある配偶者が受け取るときで年84万7300円に子の加算額を足した額となります。昭和31年4月1日以前生まれの方は年84万4900円です。

子の加算額は、1人目と2人目がそれぞれ年24万3800円、3人目以降がそれぞれ年8万1300円です。

1.2 遺族厚生年金は老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3

遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。

報酬比例部分は、平均標準報酬額と厚生年金保険の加入月数から計算します。現役時代の報酬が高く、加入期間が長いほど大きくなるしくみです。

遺族基礎年金のように全員が同じ額になるわけではなく、亡くなった方の記録によって一人ひとり変わります。

2. 遺族厚生年金を左右する「短期要件」と「長期要件」の違い

遺族厚生年金の受給要件は4つあり、このうち大きく短期要件と長期要件に分けて扱われます。どちらにあたるかで、年金額の計算に使う被保険者期間が変わります。

2.1 短期要件にあたるのは、在職中の死亡など3つの場合

日本年金機構が挙げている受給要件のうち、短期要件にあたるのは次の3つです。

  • 厚生年金保険の被保険者である間に亡くなったとき
  • 厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなったとき
  • 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が亡くなったとき

在職中の死亡が代表例で、働き盛りの世代にあてはまりやすい要件です。

2.2 働き盛りを守る「300月みなし」特例とは?

この3つの要件にあてはまる場合、厚生年金保険の被保険者期間が300月未満であれば、300月とみなして年金額を計算します。

300月は25年にあたります。20歳代や30歳代で亡くなった場合、実際の加入月数は300月に届かないことが多くなります。

みなしのしくみがあることで、加入期間の短さがそのまま遺族厚生年金の額に反映されない扱いになっています。

2.3 長期要件は受給資格期間25年以上を満たした方が亡くなったとき

もう1つの要件が、老齢厚生年金の受給資格を満たした方が亡くなったときです。こちらは長期要件と呼ばれます。

日本年金機構は、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間ならびに65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上あることを要件としています。

長期要件の場合は300月みなしの対象にならず、実際の被保険者期間で計算します。

遺族厚生年金は、どの要件にあてはまるかで年金額の計算に使う被保険者期間が変わります1/2

遺族厚生年金の短期要件と長期要件で計算に使う被保険者期間が変わることを示した比較表

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」を参考にLIMO編集部作成

遺族基礎年金は令和8年4月分から年84万7300円が基本額です2/2

令和8年度の遺族基礎年金の額と子の加算額を示した表

出所:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」を参考にLIMO編集部作成

村岸 理美

ライフプランのご相談では、遺族年金を「加入期間が短いからほとんど出ない」と思い込んでいる方に何度かお会いしました。

300月みなしは、要件にあてはまるかどうかで扱いが分かれます。ご自身のケースがどちらにあたるかは、年金事務所で確かめておくと安心です。