3. 企業型DCを放置すると手数料だけが引かれ続ける

ここまではiDeCoの届出の話でした。転職でもうひとつ放置されやすいのが、前の勤務先の企業型確定拠出年金です。こちらは起こることが違います。

特定運営管理機関によると、企業型確定拠出年金に加入していた人が離職や転職で加入者資格を失い、6ヵ月以内に他の確定拠出年金などへ資産を移さなかった場合、その資産は国民年金基金連合会に移されて一時仮預かりの状態になります。これを自動移換といいます。

自動移換されると何が引かれるのか。LIMOの記事「iDeCoを「解約したい・引き出したい」人が直面する現実。転職時の放置と死亡時のルール」から引用します。

自動移換される際の手数料(4348円)が資産から差し引かれるだけでなく、その後も管理手数料として毎月98円(年間1176円)が差し引かれ続けます。

出所:LIMO「iDeCoを「解約したい・引き出したい」人が直面する現実。転職時の放置と死亡時のルール」

内訳は、自動移換されるときに特定運営管理機関へ3300円、国民年金基金連合会へ1048円で合わせて4348円です。管理手数料の月98円も、国民年金基金連合会の40円と特定運営管理機関の58円を合わせた金額になります。

これらはいずれも2026年4月に改定された後の金額です。改定前は管理手数料が月52円、他制度への移換手数料が1100円だったため、それ以前の解説とは数字が食い違います。

また管理手数料は、自動移換されてから4ヵ月が経過してから発生します。徴収も毎月ではなく、年1回3月末に年度分をまとめて年金資産から差し引かれる形です。

資産は現金化されて保管されるため、その間は運用されません。増えない状態で手数料だけが引かれていくことになります。

効いてくるのは手数料だけではありません。特定運営管理機関は、自動移換中は老齢給付金を受けるための通算加入者等期間に算入されず、受給可能年齢に到達しても自動移換されたままでは老齢給付金の請求ができないとしています。あとからiDeCoなどへ移すときには、移換手数料550円もかかります。

三石 由佳
三石 由佳
銀行にて企業型確定拠出年金の相談を受けていた際、移換手続きを忘れてしまう、という問い合わせが非常に多くありました。自動移換された場合は、自動移換通知書が届きます。その際はできるだけ早めに、資産移換の手続きを行いましょう。

4. 引き出して終わりにはできない

掛金が払えないなら解約したい、と考える人もいます。ただしiDeCoは、原則として60歳になるまで個人別管理資産を引き出すことができません。

例外として脱退一時金の規定はありますが、7つの要件すべてに該当する必要があります。iDeCoに加入できない者であること、たとえば国民年金保険料の免除を受けていることなどがそのひとつです。

さらに、通算拠出期間が5年以下または個人別管理資産が25万円以下であること、最後に加入者資格を喪失した日から2年以内であることなども求められます。長く積み立ててきた人ほど、この要件で外れます。

老後の資産形成を目的とした年金制度であるからこそ税制の優遇があり、その裏返しとして出口が絞られている、という構造です。

5. 住所変更も届出のうち

意外に効いてくるのが住所です。氏名や住所が変わったときは「加入者等氏名・住所変更届」を提出します。

引っ越しをして住所変更をしていないと、手続きを促す通知が手元に届きません。気づかないうちに放置の状態になっていた、ということが起こります。

掛金の引き落とし口座を変えるときにも届出があります。金融機関の統廃合で口座番号が変わった場合なども対象です。

6. まとめにかえて

就職、転職、退職で公的年金の被保険者種別が変わると、iDeCoの加入区分も変わり、届出が必要になります。出さないままだと掛金の口座振替が一時停止することもあり、止まった月の掛金は追納できません。

掛金が苦しいときは、月5000円までの減額か、加入者資格喪失届を出して運用指図者になるかの2つです。止めても口座管理の手数料はかかります。

前の勤務先の企業型確定拠出年金を6ヵ月放置すると自動移換になり、4348円が引かれたうえ、4ヵ月経過後から月98円の管理手数料がかかります。運用もされず、その間は老齢給付金の請求もできません。

iDeCoの届出も企業型DCの移換手続きも、転職したらまとめて片づけておきましょう。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班