2. 会社が任意で設ける3階部分もある

厚生年金保険は勤め先が適用事業所なら自動的に加入しますが、会社の年金にはもう一段あります。こちらは加入の義務そのものがありません。

2つの制度の位置づけの違いは、LIMOの記事「企業年金と厚生年金の違いは何か?企業型DCだけは退職後6か月放置すると自動移換され、5年で1万円超の手数料が引かれるか試算」から要点を借りて確認します。

企業年金連合会の資料によると、1階は20歳以上60歳未満の全員が加入する「国民年金」、2階は民間企業の従業員や公務員が加入する「厚生年金保険」です。厚生年金は法律で加入が義務づけられた、国が運営する公的年金です。

これに対して3階は「企業年金」と呼ばれ、確定給付企業年金(DB)・厚生年金基金・企業型確定拠出年金(DC)などが該当します。企業年金連合会は、これを基礎年金を補完し上乗せ給付を行う制度と説明しており、法定の強制加入である厚生年金とは、義務性そのものが異なります。

出所:LIMO「企業年金と厚生年金の違いは何か?企業型DCだけは退職後6か月放置すると自動移換され、5年で1万円超の手数料が引かれるか試算」

3階があるかどうかは、勤め先の判断に委ねられています。

厚生年金は要件を満たせば自動的に加入しますが、企業年金は各企業が任意に実施するかどうかを決める制度です。そのため、同じ会社員でも、勤務先に企業年金があるかどうかで、老後に受け取れる年金の階層そのものが変わってきます。

DBは、将来受け取る給付額があらかじめ決まっている制度です。運用の結果が振るわなくても、会社が不足分を補填する形で、約束された給付額が維持されます。DCは、会社が拠出した掛金を従業員自身が運用し、その運用成績によって将来受け取る額が変動する制度です。

出所:LIMO「企業年金と厚生年金の違いは何か?企業型DCだけは退職後6か月放置すると自動移換され、5年で1万円超の手数料が引かれるか試算」

このうち企業型DCには、退職後に期限がついています。

iDeCo公式サイトによると、企業型DCの加入者資格を喪失してから6か月以内に、iDeCoなど他の確定拠出年金制度へ資産を移す手続きをしないと、資産は自動的に国民年金基金連合会へ移換されます。これを「自動移換」と呼びます。

自動移換された資産は現金化され、運用の指図ができなくなります。加えて、自動移換時に特定運営管理機関と国民年金基金連合会それぞれに手数料が発生し、合計3300円+1048円の4348円が資産から差し引かれます。さらに4か月目以降は、月58円+40円の合計98円が管理手数料として毎月徴収され続けます。

出所:LIMO「企業年金と厚生年金の違いは何か?企業型DCだけは退職後6か月放置すると自動移換され、5年で1万円超の手数料が引かれるか試算」

企業型DCの自動移換にかかる手数料2/2

企業型DCの自動移換にかかる手数料

出所:企業年金連合会「企業年金制度|企業年金制度と通算年金」などを基にLIMO編集部作成

放置した期間が長引くと、金額はこう積み上がります。

自動移換時の手数料4348円に加えて、5年(60か月)分の管理手数料98円を掛け合わせると、合計1万228円です。これはあくまで手数料だけの金額で、資産が現金化され運用できない間の機会損失は含まれていません。

この金額と比べると、早めにiDeCoへ移換した場合の手数料は3379円で済みます。放置する期間が長くなるほど、この差は広がっていきます。

出所:LIMO「企業年金と厚生年金の違いは何か?企業型DCだけは退職後6か月放置すると自動移換され、5年で1万円超の手数料が引かれるか試算」

掛金を誰が出すのかという点でも、2つは違います。

厚生年金の保険料率は18.3%で固定されており、事業主と被保険者が半分ずつ負担する労使折半です。これに対して企業年金は、DB・企業型DCともに、掛金を会社が負担するのが基本です。

出所:LIMO「企業年金と厚生年金の違いは何か?企業型DCだけは退職後6か月放置すると自動移換され、5年で1万円超の手数料が引かれるか試算」

3. 2階は勤め先の形で決まり、3階は勤め先の判断で決まる

ここまで、厚生年金保険の適用事業所の線引きと、会社が任意で設ける企業年金の位置づけを見てきました。

適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)と、常時5人以上の従業員がいる個人の事業所です。個人事業所は農林漁業、サービス業などが除かれ、令和4年10月からは常時5人以上を雇用する士業の個人事業所が加わりました。

条件から外れる事業所も、従業員の半数以上の同意を得て事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受ければ適用事業所になれます。被保険者になるのは、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方です。

一方、3階部分の企業年金は各企業が任意に実施するかどうかを決める制度で、勤務先によっては制度そのものがありません。自分の勤め先の2階と3階がどうなっているかは、入社時の説明資料や就業規則、そして人事担当部署で確かめられます。適用事業所かどうかの判定に迷う場合は、管轄の年金事務所にご相談ください。

参考資料

LIMO編集部社会保障解説班