婚姻届を出していない「内縁関係」や「事実婚」のパートナーが亡くなったとき、遺族年金は受け取れないと思い込んでいる人は少なくありません。しかし、公的年金の制度上、内縁関係にある夫や妻も、一定の要件を満たせば「配偶者」として遺族年金の対象になります。ただし、戸籍上の婚姻関係がない分、独自の証明や注意点があるのも事実です。

この記事では、内縁関係でも遺族年金を受け取れる理由と、実際の平均受給額、請求する際に気をつけたい点を確認していきます。

1. 内縁関係のパートナーがいる人は、万一への備えを見落としていないか

「籍を入れていないから、パートナーが亡くなっても自分には年金の権利がない」と考えている人は、まず制度の基本を知っておくことが大切です。婚姻届を出していなくても、生活の実態が夫婦同然であれば、遺族年金の請求ができる可能性があります。反対に、実態を証明する準備をしていないと、本来受け取れるはずの年金を請求できないままになってしまうこともあります。

2. 遺族年金の「配偶者」には内縁関係(事実婚)も含まれる

まず押さえておきたいのが、公的年金の制度上「配偶者」の範囲が、戸籍上の婚姻関係だけに限られていないという点です。

2.1 厚生年金保険法・国民年金法は婚姻届の有無を問わない

厚生年金保険法および国民年金法には、「配偶者」「夫」「妻」について、婚姻の届出をしていなくても、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む、と定められています。つまり、法律上は婚姻届を出した配偶者と、内縁関係(事実婚)にある配偶者を、原則として同じように扱う仕組みになっています。

2.2 「事実婚関係」と認められるための考え方

内縁関係が「事実上婚姻関係と同様の事情」にあると認められるためには、当事者どうしに夫婦としての共同生活を送る意思があり、実際に同居して生計を共にしているといった実態が求められます。日本年金機構では、こうした関係を確認するために「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」の提出を求めており、申立書には第三者による証明が必要とされています。戸籍のように公的な記録がないぶん、生活実態を裏付ける書類をそろえる必要がある点が、婚姻届を出している場合との大きな違いです。

和田直子
事実婚の証明で最も強みになるのが『住民票』です。もしお二人の住民票の世帯が別々(お互いが世帯主)になっている場合は、世帯を一つに合併し、続柄を『妻(未届)』や『夫(未届)』に登録変更しておくことをおすすめします。これだけで将来の年金手続きが圧倒的にスムーズになります。

3. 遺族年金の平均額はどのくらい?

内縁関係であっても、実際に受け取れる遺族年金の額の考え方は、婚姻届を出している場合と変わりません。厚生労働省年金局の統計から、実際の平均受給額を確認してみましょう。

3.1 遺族厚生年金の平均月額は8万4228円

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の遺族年金(遺族厚生年金)を受け取っている人の平均年金月額は、令和6年度末現在で8万4228円です。亡くなった人の厚生年金の加入期間や納めていた保険料によって、実際の受給額は一人ひとり異なります。

3.2 遺族基礎年金の平均月額は8万8917円

同じ資料によると、国民年金の遺族年金(遺族基礎年金)を受け取っている人の平均年金月額は、令和6年度末現在で8万8917円です。遺族基礎年金は、子の人数に応じて金額が加算される仕組みのため、子どもがいる世帯ほど平均額が高くなる傾向があります。

遺族年金の平均月額(令和6年度末現在・受給者平均)1/2

遺族年金の平均月額(令和6年度末現在・受給者平均)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

和田直子
遺族厚生年金も遺族基礎年金も、あくまで平均額であり、亡くなった方の年金加入期間や納付状況によって金額は大きく変わります。内縁関係の場合、まずは自分が受給要件を満たすかどうかを確認したうえで、年金事務所で見込み額を確認するとよいでしょう。