4. 10月15日の振込から、年金の手取りが変わる
ここからは、10月に年金の手取りが変わる理由を確認します。
4.1 4月から8月は「仮の金額」、10月からは「確定した金額」
65歳以上で年金を年額18万円以上受け取っている方は、介護保険料や後期高齢者医療保険料、住民税などが年金から差し引かれます。この仕組みを特別徴収といいます。
後期高齢者医療保険料は、介護保険料と合わせた額が年金額の2分の1を超える場合は特別徴収の対象になりません。なお、所得税は特別徴収ではなく、源泉徴収として別の基準で差し引かれます。
差し引きは偶数月の年6回で、前半と後半で性格が異なります。
- 4月・6月・8月:仮徴収(基本的には前年度2月の本徴収と同じ額を差し引く)
- 10月・12月・2月:本徴収(その年の確定額から仮徴収分を差し引いた残りを3回に分ける)
前年の所得をもとにした税額や保険料が決まるのは6月以降です。そのため年度の前半は仮の金額で差し引き、後半で調整する流れになっています。なお、6月分と8月分の仮徴収額は、市区町村の判断で変更されることがあります。
4.2 増えた分は、10月からの3回にまとめて上乗せされる
年間の保険料が前年より1万2000円増え、6月分と8月分の仮徴収額に調整がなかった場合で見てみます。
4月・6月・8月は前年度と同じ額で差し引かれているため、増えた1万2000円は、この時点ではまだ差し引かれていません。増えた分はそのまま残り、10月からの3回に分けて上乗せされます。
1万2000円 ÷ 3回 = 1回あたり4000円
年間では1万2000円の増加ですが、10月の振込では8月までより4000円多く差し引かれることになります。年間の増加額よりも、1回あたりの変化のほうが大きく感じられるのは、この仕組みによるものです。
4.3 2026年度は、新しい保険料率が10月から手取りに反映される
後期高齢者医療の保険料率は2年ごとに改定され、令和8・9年度の新しい料率が2026年4月から適用されています。
いずれも全国平均の見込みで、実際の保険料率は都道府県ごとの広域連合によって異なります。
- 医療分の平均保険料額:年9万5875円・月7989円(令和6・7年度は年8万8940円・月7411円)
- 均等割額:年5万6083円/所得割率:10.17%
あわせて2026年4月から、子ども・子育て支援金の負担が始まっています。令和8年度の平均は年2333円・月194円です。
いずれも4月から適用されている制度ですが、4月から8月は仮徴収のため、多くの場合は手取りに表れていませんでした。10月15日の振込が、これらが反映される最初の回にあたります。
なお、年金額そのものは10月には変わりません。年金額の改定は6月の支給分から反映されます。また、10月15日に振り込まれるのは8月分と9月分です。
5. 【執筆者の見解】負担割合と手取りは、同じ前年の所得から別々に決まる
5.1 通知書は手元にあっても、どこを見ればよいかが分かりにくい
保険会社で営業をしていたころ、お客さまから年金関係の通知書を出されて、「これ、どこを見たらいいの?」と聞かれることがよくありました。
書類は手元にあるのに、どの数字が何を意味するのかが分かりにくい。同じことが、後期高齢者医療の負担割合でも起こります。判定に使われる「課税所得」は住民税の通知書に、「収入」は年金の振込通知書や源泉徴収票に、それぞれ記載されています。見る場所が決まっていれば、確認そのものは難しくありません。
5.2 窓口負担と年金の手取りは、連動していない
8月に負担割合の通知が届き、10月に振込額が変わるため、この2つがつながっていると受け取られることがあります。ただ、決まり方はそれぞれ違います。
窓口負担の割合は、課税所得28万円、145万円といった基準をまたいだかどうかで決まります。前年より所得が増えても、基準をまたがなければ割合は1割のまま変わりません。
一方、年金から差し引かれる金額は、そのときの保険料率や税額をもとに計算されます。2026年度は保険料率そのものが改定されているため、前年と所得が変わらなくても天引き額は変わります。
負担割合は「どの区分に入るか」で決まり、天引き額は「いくらになるか」で決まります。そのため、割合は1割のままでも10月の手取りだけが減る年があります。
5.3 確認する順番を決めておくと迷わない
次の順番で確認すると、自分の負担がどのように決まっているかを把握できます。
- 8月に届く負担割合の通知で、割合を確認する
- 住民税の通知書で、課税所得を確認する
- 年金の振込通知書で、10月からの差し引き額と手取りを確認する
- 3割だった場合は、収入の合計が383万円または520万円を下回っていないか確認する
各窓口や公式サイトで最新情報を確認のうえ、手続きを進めてみてください。
参考資料
- 厚生労働省「窓口負担2割の対象となるかどうかの主な判定の流れ」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」
- 厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 厚生労働省「介護、国保、後期高齢における保険料(税)の特別徴収について」
- 総務省「公的年金からの特別徴収」
小西 雅美