10月15日は年金の支給日です。10月は、年金から差し引かれる保険料や税金が「仮の金額」から確定額に切り替わるため、手取り額が変わることがあります。

また、75歳以上の後期高齢者医療制度では、窓口負担割合が毎年8月に見直されます。

ここでは、1〜3割負担を分ける所得・収入基準と判定の仕組み、10月に手取りが変わる理由を解説します。

1. 後期高齢者医療の窓口負担を分ける所得・収入の基準

はじめに、窓口負担の割合がどのような順番で判定されるのかを確認します。

まず現役並み所得者かどうかを見て、当てはまらなければ課税所得28万円と、年金収入+その他の合計所得金額の順に判定します1/4

後期高齢者医療の窓口負担割合が1割・2割・3割のどれになるかの判定の流れを示した表

出所:厚生労働省「窓口負担2割の対象となるかどうかの主な判定の流れ」をもとにLIMO編集部作成

窓口負担の割合を分ける基準で、押さえておきたい点が3つあります。

  • 課税所得が145万円以上でも、収入の合計が単身世帯383万円未満、複数世帯520万円未満であれば、申請により1割または2割になります
  • 判定は毎年8月1日に切り替わり、前年の所得と収入をもとに行われます
  • 10月に年金の手取りが変わるのは、差し引かれる金額が仮の額から確定額に切り替わるためで、年金額そのものが減ったわけではありません

ここでいう複数世帯は、同じ世帯に75歳以上の後期高齢者医療の被保険者が2人以上いる世帯を指します。

1.1 判定ラインを月額に直すと、平均的な年金額との距離が見える

基準は年額で示されているため、月額に直して比べてみます。

  • 単身世帯の2割ライン 年200万円 = 月16万6667円
  • 複数世帯の2割ライン 年320万円 = 月26万6667円
  • 単身世帯の3割ライン 年383万円 = 月31万9167円
  • 複数世帯の3割ライン 年520万円 = 月43万3333円

※12で割った単純計算による筆者試算です。2割ラインは「年金収入+その他の合計所得金額」、3割ラインは「収入の合計」の基準です。

一方、75歳以上の方が実際に受け取っている年金は次の水準です。

厚生年金保険(第1号)の平均年金月額は、75歳以上のどの年齢層でも15万円台から16万円台です2/4

75歳以上の年齢層別に厚生年金保険(第1号)と国民年金の平均年金月額を並べた表

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

単身世帯の2割ラインは月16万6667円です。85〜89歳の厚生年金の平均月額16万5486円は、この線まで約1200円という位置にあります。

ただし、2割になるには課税所得28万円以上という要件も同時に満たす必要があります。年金額だけで負担割合が決まるわけではありません。

2. 判定に使われるのは「課税所得」と「収入」の2段階

判定は、世帯単位で行われます。同じ世帯に後期高齢者医療の被保険者が複数いる場合は、全員をまとめて見ます。
前年の所得をもとに6月に住民税が確定し、その内容が8月1日から窓口負担の割合に反映されます。

不動産を売却した年や、満期保険金を受け取った年など、一時的に所得が増えると、その翌年度の負担割合が上がることがあります。

2.1 2割の判定では「年金は収入、それ以外は所得」を使う

2割になるのは、次の2つを両方満たす場合です。

  • 基準1:世帯内の75歳以上の方に、課税所得28万円以上の方がいる
  • 基準2:「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身世帯で200万円以上、複数世帯で合計320万円以上

ここで注意したいのが、基準2の計算方法です。同じ式のなかで、年金は控除を差し引く前の「収入」を使い、それ以外は控除を差し引いた後の「所得」を使います。

なお「課税所得」とは、住民税納税通知書の「課税標準」の額を指します。前年の収入から、公的年金等控除や給与所得控除、基礎控除や社会保険料控除などを差し引いた後の金額です。
「その他の合計所得金額」は、事業収入や給与収入などから、必要経費や給与所得控除などを差し引いた後の金額を指します。
また、遺族年金と障害年金は年金収入に含まれません。

2.2 【単身世帯】年金収入200万円が目安になる

単身世帯で年金以外に収入がなく、課税所得が28万円以上のケースを当てはめます。

  • 基準1:課税所得28万円以上に該当する
  • 基準2:年金収入200万円 + その他の合計所得金額0円 = 200万円

200万円 ≧ 200万円 のため、基準2に該当。
両方に当てはまるため、窓口負担は2割になります。

2.3 【複数世帯】夫婦の年金収入の合計320万円が目安になる

75歳以上の夫婦2人の世帯では、2人分を合計して判定します。ここでは、どちらかの課税所得が28万円以上であるケースを当てはめます。

  • 基準1:課税所得28万円以上の方が世帯にいる
  • 基準2:夫の年金収入220万円 + 妻の年金収入100万円 = 320万円

320万円 ≧ 320万円 のため、基準2に該当。
この場合、世帯全員が2割負担となります。

2.4 3割の判定に使われるのは、控除前の「収入」

3割(現役並み所得者)になるのは、次の2つを両方満たす場合です。

  • 基準1:世帯内の75歳以上の方に、課税所得145万円以上の方がいる
  • 基準2:収入の合計が、単身世帯で383万円以上、複数世帯で520万円以上

2割の判定と違い、こちらは所得が混ざらず、すべて控除を差し引く前の「収入」で見ます。年金の源泉徴収票でいえば「支払金額」にあたる金額です。
課税所得は住民税の通知書に、収入は年金の振込通知書や源泉徴収票に記載されています。それぞれ確認する書類が異なります。

3. 高額療養費制度により、1か月に支払う医療費には上限がある

ここまでは負担割合の話でしたが、実際に支払う金額にはもうひとつの仕組みがはたらきます。
窓口負担が2割や3割になっても、1か月に支払う医療費には上限が設けられています。これが高額療養費制度で、その上限額を自己負担限度額といいます。

この上限額は、2026年(令和8年)8月診療分から見直されました。

令和8年8月からは、外来の上限額が引き上げられたほか、世帯の自己負担に年単位の上限額が設けられています3/4

70歳以上の所得区分ごとに、外来の上限額、月単位の上限額、年単位の上限額を並べた表(令和8年8月から令和9年7月まで)

出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」をもとにLIMO編集部作成

70歳以上で一般所得区分(課税所得145万円未満・年収約370万円まで)にあたる方の外来の上限額は、次のように変わりました。

  • 2026年8月より前:1か月1万8000円(年間14万4000円)
  • 2026年8月から:1か月2万2000円(年間21万6000円)

外来の年間上限は以前からあり、今回は金額が引き上げられました。これとは別に、世帯の月ごとの上限額に対して新たに「年単位の上限額」が設けられ、一般所得区分では53万円です。月ごとの上限に達しない月が続いても、年間の負担額がこの額に達すると、それ以上の負担は不要になります。

住民税非課税区分の外来の上限額は、8000円から1万1000円になりました。あわせて外来の年間上限9万6000円が新たに設けられ、毎月上限額まで利用する方の年間の負担は増えないようにされています。一定所得以下の区分は8000円で据え置かれています。

なお、令和9年8月からは所得区分がさらに細かく分かれ、上限額がもう一度見直される予定です。

負担割合の数字だけを見るのではなく、上限額とあわせて確認すると、実際に支払う金額の見通しが立てやすくなります。