定年が段階的に延びていると聞いてはいても、自分が何歳で定年を迎えるのか、60歳を過ぎてから給与がどう変わるのかまで確かめている方は、それほど多くないかもしれません。
国家公務員の定年は令和5年度から2年に1歳ずつ引き上げられており、令和8年度(2026年度)の定年年齢は62歳です。あわせて、60歳に達した日後の最初の4月1日以後は基本給が7割水準になる措置も設けられています。
この記事では、人事院と内閣官房内閣人事局の資料をもとに、公務員の定年引上げのスケジュールと、60歳以降の給与および働き方の選択肢を確認していきます。
- 国家公務員の定年年齢は2年に1歳ずつ引き上げられ、令和8年度(2026年度)は62歳になっている
- 60歳に達した日後の最初の4月1日以後、基本給は7割水準になる
- 60歳以降の働き方は、常勤での継続、定年前再任用短時間勤務、暫定再任用の3通りが示されている
1. 公務員の定年引上げで、2026年度(令和8年度)の定年年齢は62歳になった
公務員の定年は、一度に65歳へ延びたわけではありません。2年に1歳ずつという緩やかなペースで動いているため、生年によって定年を迎える年度が変わります。
まずは、国家公務員の定年年齢がどのように引き上げられてきたのかを見ていきましょう。
国家公務員の定年年齢は2年に1歳ずつ引き上げられ、令和8年度(2026年度)は62歳です1/2
出所:人事院給与局・内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」(令和8年4月)をもとにLIMO編集部作成
1.1 定年年齢は2年に1歳ずつ引き上げられ、令和13年度に65歳となる
人事院給与局と内閣官房内閣人事局の資料によると、国家公務員の定年年齢は令和5年度と令和6年度が61歳、令和7年度と令和8年度は62歳です。
その後も令和9年度から10年度が63歳、令和11年度から12年度が64歳と進み、令和13年度に65歳という完成形にたどり着きます。
同じ資料には、職員の生年と定年の対応表も載っています。この表では、昭和39年4月2日から40年4月1日までに生まれた方が令和8年度に62歳となり、この年度が定年退職の年度にあたります。
昭和40年4月2日から41年4月1日までに生まれた方は、令和10年度に63歳で定年を迎える区分です。
1.2 誕生日が1日違うだけで、定年退職の年度が2年ずれることがある
ここで注意しておきたいのが、区分の境目です。
昭和40年4月1日に生まれた方は、令和8年度に62歳で定年退職を迎えます。一方、その翌日の昭和40年4月2日に生まれた方は、令和10年度に63歳での定年です。
誕生日が1日違うだけで、退職の年度が2年ずれることになります。年齢計算に関する法律により、誕生日の前日に年齢が加算されるためです。
4月1日や4月2日の前後に誕生日がある方は、自分の生年月日を対応表に当てて確かめておくと確実です。
1.3 地方公務員の定年も、国家公務員の定年を基準に条例で定められる
地方公務員の定年は、地方公務員法にもとづき、国家公務員の定年を基準として各地方公共団体が条例で定めることになっています。
総務省公務員部の資料でも、国家公務員の定年が段階的に65歳へ引き上げられることを踏まえ、地方公務員についても同様に段階的に引き上げる必要があるとされています。実際の適用時期や細かな取扱いは各団体の条例によりますので、勤務先の人事担当部門の案内を確かめてください。
2. 公務員の定年引上げにあわせて、61歳に達する年度から基本給は7割水準になる
定年が延びる一方で、60歳を過ぎてからの基本給には引下げの措置が入っています。ここが、定年引上げのなかでもっとも家計に響く部分です。
どの時点から、どの程度下がるのかを具体的な例で見ていきます。
60歳に達した日後の最初の4月1日以後、俸給月額は7割水準になります2/2
出所:人事院給与局・内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」(令和8年4月)をもとにLIMO編集部作成
2.1 本府省課長補佐級の例では42万7000円が29万8900円になる
資料では「当分の間、61歳に達する年度以後の俸給月額(基本給)は、俸給月額の7割水準になります」と説明されています。切り替わるのは、60歳に達した日後の最初の4月1日です。
示されている例では、本府省課長補佐級にあたる行政職俸給表(一)6級73号俸の俸給月額「42万7000円」が、7割水準の「29万8900円」になります。なお、勤務成績に応じた昇給などはあり得るとも書かれています。
2.2 役職定年で降任した場合、7割の基準となるのは降任前の俸給月額
管理監督職の職員は、60歳の誕生日から最初の4月1日までの間に、非管理監督職のポストへ降任等することになります。いわゆる役職定年制です。
この場合、7割水準の計算の土台になるのは降任等した後の額ではなく、降任等する前の俸給月額です。資料の例では、本府省課長級の53万2000円が課長補佐級の42万7000円へ降格したうえで、最終的な支給額は53万2000円の7割にあたる37万2400円と示されています。
差額にあたる管理監督職勤務上限年齢調整額が俸給として支給される仕組みで、降任と7割措置の減額が単純に重なるわけではありません。
2.3 住居手当や扶養手当は7割水準にならない
7割措置は、すべての手当に一律にかかるものではありません。人事院は「諸手当のうち俸給月額の水準と関係するものも60歳前の7割水準」と説明しています。
資料では、7割水準となる手当として地域手当や期末手当・勤勉手当などが挙げられています。いずれも俸給月額をもとに算定される手当です。
一方で、住居手当、扶養手当、通勤手当などは7割水準とならない手当として区分されています。生活に直結する手当が維持される点は、収入の見通しを立てるうえで押さえておきたいところです。
3. 公務員の定年引上げで、60歳以降に選べる働き方は3通り
60歳を過ぎてからの働き方は、定年まで常勤で働き続ける形だけではありません。資料のフローチャートでは、3つの道筋が示されています。
いずれを選ぶかは、任命権者から情報提供を受けたうえで、60歳以後の勤務について本人が意思を表明する流れになっています。
3.1 引き続き非管理監督職のポストで常勤職員として勤務する
もっとも基本になるのが、そのまま常勤職員として定年まで働く形です。管理監督職の職員は、役職定年により非管理監督職のポストへ降任等することになります。
この場合、給与は前の章で見たとおり、60歳に達した日後の最初の4月1日以後に7割水準へ切り替わります。
3.2 定年前再任用短時間勤務制で、短時間のポストに再任用される
本人の希望により、60歳以後に定年前で退職し、短時間勤務のポストに再任用される道もあります。定年前再任用短時間勤務制と呼ばれる仕組みです。
勤務時間は1週間当たり15.5時間から31時間の範囲で、任期は採用の日から常勤職員の定年退職日にあたる日までです。基本給は、俸給表の定年前再任用短時間勤務職員の欄の額に、1週間当たりの勤務時間の割合を掛けて算定されます。
この形を選ぶ場合、常勤職員としては退職することになりますので、その時点で退職手当が支給されます。
3.3 定年退職後に、暫定再任用職員として65歳まで働く
定年が段階的に引き上げられている経過期間には、暫定再任用制度も置かれています。65歳まで再任用できるよう、以前の再任用制度と同様の仕組みを残したものです。
勤務時間はフルタイムが1週間当たり38時間45分、短時間が15.5時間から31時間です。任期は1年を超えない範囲で定められ、更新を重ねて最大で65歳に到達する年度の末日まで働けます。
収入の水準が変わる時期は、支出を削る話よりも先に手取りの把握が必要だと考えていました。定年引上げの時期についても、まずは自分の定年年度と給与の変わり目を確かめるところから始めるのが確実です。
4. 【元ファイナンシャルアドバイザーの視点】公務員の定年引上げで、家計はどこを先に確かめるか
ここまでは制度の中身を確認してきました。ここからは、かつてファイナンシャルアドバイザーとして金融商品を扱っていた立場から、数字の受け止め方を書いていきます。
なお、以下は一般的な考え方の整理であり、個別の判断は勤務先の人事担当部門や共済組合の相談窓口で確かめてください。
4.1 月額ではなく年収ベースで落ち込み幅をつかむ
7割措置の話を聞いたとき、多くの方は月々の基本給の減り方に目が向きます。ただ、家計への影響がはっきり出るのは年収のほうです。
期末手当・勤勉手当も7割水準となる手当に含まれているため、賞与の水準も同じ方向に動きます。一方で住居手当や扶養手当は7割になりませんので、年収がそのまま3割減るわけでもありません。
投資信託や生命保険の商品分析を担当していた頃、収入の変化を月額だけで見て判断すると、あとから見通しが合わなくなる例をよく見てきました。給与明細と賞与の実額を並べて、年間でいくらになるのかを一度書き出しておくと、判断の土台がぶれません。
4.2 収入が変わる時点を先に書き出しておく
公務員の定年引上げの局面では、収入が変わる時点が何度か訪れます。60歳の誕生日からの異動期間、60歳に達した日後の最初の4月1日、そして自分の定年退職日です。
この3つの時点を書き出しておくと、教育費や住宅ローンの返済が重なる時期と照らし合わせられます。重なりが見えたときに、繰上げ返済の時期をずらすのか、手元資金を厚くしておくのかという判断ができます。
5. 公務員の定年引上げで見落としやすい2つのポイントとは?
制度の説明を読んだだけでは気づきにくく、あとから知って驚かれやすい部分があります。ここでは2つに絞って挙げておきます。
5.1 期末手当・勤勉手当も7割水準になる
7割措置というと基本給だけの話だと受け取られやすいのですが、資料では地域手当と並んで期末手当・勤勉手当も7割水準となる手当に区分されています。
賞与の比重が大きい方ほど、年収での落ち込み幅は基本給の減り方より大きく感じられるはずです。
5.2 地方公務員では、60歳から64歳の応募認定退職で給料月額が割増されない
ここは地方公務員についての話になります。総務省の資料では、早期退職募集制度に応募して認定を受けて退職する場合の給料月額の割増率について、当分の間、現行の定年制度下で対象とされていた年齢と割増率を維持するとされています。
そのうえで、60歳から64歳の方が応募認定退職する場合、給料月額は割増されないと明記されています。早期退職募集制度を使えば必ず上乗せがあるとは限らない点に注意してください。
国家公務員の場合の取扱いは別の規定によりますので、勤務先の人事担当部門に確かめてください。
