日本全国に路線網を持つJR6社。会社ごとの規模の違いは、数字にするとどれくらいあるのでしょうか。

その手がかりになるのが、国土交通省が毎年発表している「鉄道統計年報」です。

今回はこの資料から、旅客運輸収入と営業キロを比べていきます。

この記事の3つのポイント
  • JR東日本の旅客運輸収入は1兆4317億6257万5000円で最多
  • 営業キロもJR東日本が7302.2キロでトップ
  • JR北海道は営業キロ3位に対し、旅客運輸収入は5位

1. JR各社の旅客運輸収入

国土交通省が毎年発表している令和4年度の「鉄道統計年報」によると、JR各社の旅客運輸収入は以下のようになりました。

  • 東日本旅客鉄道:1兆4317億6257万5000円
  • 東海旅客鉄道:1兆699億7878万6000円
  • 西日本旅客鉄道:6945億4122万3000円
  • 九州旅客鉄道:1214億4490万6000円
  • 北海道旅客鉄道:585億8040万9000円
  • 四国旅客鉄道:177億6036万円

1位のJR東日本と6位のJR四国では、およそ80倍の開きがあります。

JR東日本とJR東海の2社だけで、6社合計のかなりの部分を占める構図です。首都圏の通勤需要と東海道新幹線という、それぞれ強力な収益基盤を持っていることが数字に表れています。

2. JR各社の営業キロ

続いて、JR各社の旅客についての営業キロは以下のようになりました。

  • 東日本旅客鉄道:7302.2キロ
  • 西日本旅客鉄道:4903.1キロ
  • 北海道旅客鉄道:2372.3キロ
  • 九州旅客鉄道:2342.6キロ
  • 東海旅客鉄道:1970.8キロ
  • 四国旅客鉄道:853.7キロ

旅客運輸収入、営業キロとも最も多いのは、JR東日本です。その後、旅客運輸収入はJR東海、JR西日本が、営業キロについてはJR西日本、JR北海道が続きます。

3. JR北海道に見る「距離と収入のギャップ」

2つのランキングを並べると、順位が入れ替わる会社があることに気づきます。

興味深いのはJR北海道ではないでしょうか。旅客運輸収入が6社中5位であるのに対し、営業キロは3位になっています。つまり、1キロあたりの利益が低い傾向にあることがわかりますね。

実際に計算してみましょう。旅客運輸収入を営業キロで割ると、1キロあたりの収入が求められます。

  • 東海旅客鉄道:約5億4300万円/キロ
  • 東日本旅客鉄道:約1億9600万円/キロ
  • 西日本旅客鉄道:約1億4200万円/キロ
  • 九州旅客鉄道:約5200万円/キロ
  • 北海道旅客鉄道:約2500万円/キロ
  • 四国旅客鉄道:約2100万円/キロ

JR東海の約5億4300万円に対し、JR北海道は約2500万円。その差は約22倍です。

JR東海は営業キロが1970.8キロと6社中5位でありながら、収入は2位。東海道新幹線という高収益路線に集中している構造が、この数字に表れています。

6社の数字をそれぞれ合計してみると、順位表とは別の見え方が出てきます。

旅客運輸収入を6社分足すと、およそ3兆3940億円。このうちJR東日本とJR東海の2社で約74%を占めます。本文にある「かなりの部分」は、およそ4分の3ということになります。

一方、営業キロの6社合計はおよそ1万9745キロです。JR四国の853.7キロは距離では全体の約4%にあたりますが、収入では約0.5%にとどまります。本文で取り上げられているJR北海道も、距離では約12%を占めるのに対し、収入では約1.7%です(いずれも単純計算です)。

距離の割合と収入の割合が、それぞれ7倍から8倍ずれている計算になります。同じ「6社中5位」「6社中6位」という並びでも、何を分母に置くかで開き方はまったく違うようです。

この差がどこから生まれるのかを、次に見ていきます。

中沢 新

4. 鉄道事業の「密度」という視点

この差を生むのは、路線の長さではなく、そこを利用する人の数です。

都市部の路線では、短い距離でも1日に何十万人もが利用します。一方、広大な面積に路線が敷かれた地域では、同じ距離を維持するための費用は変わらないのに、利用者数は限られます。

線路、駅、信号設備、除雪。これらの維持費は距離に比例して発生します。収入が距離に比例しないなかで、費用は距離に比例する。この構造が、地方路線の経営を難しくしています。

JR北海道の場合、冬季の除雪費用という固有のコストも加わります。営業キロ3位という長い路線網を、限られた収入で維持する必要があるということです。

5. 鉄道統計を暮らしの視点から見る

こうした数字は、鉄道会社の経営の話にとどまりません。

路線の維持が難しくなれば、地域の交通手段が失われます。通学、通院、買い物といった日常の移動に直接影響します。

以前ご紹介した家計調査では、二人以上世帯の「交通」の支出が月5703円、「自動車等関係費」が2万8355円でした。鉄道が利用できない地域では、自動車への依存度が高まり、家計の負担も変わってきます。

鉄道統計年報の数字は、地域の暮らしのかたちとつながっているといえるでしょう。

6. 新幹線が収益構造を左右する

JR各社の収入格差を生む最大の要因が、新幹線の有無と規模です。

JR東海の1キロあたり収入が約5億4300万円と突出しているのは、東海道新幹線が営業キロの一部でありながら、収入の大半を生み出しているためです。東京・名古屋・大阪という三大都市圏を結ぶ路線は、他に代えがたい収益基盤といえます。

JR東日本も、東北・上越・北陸の各新幹線に加え、首都圏の通勤路線という2つの柱を持っています。営業キロ7302.2キロという広大な路線網を、これらの高収益部門が支える構造です。

一方、JR四国は新幹線を持ちません。JR北海道の新幹線も、区間が限られています。

同じ「JR」でも、経営の前提条件はまったく異なる。統計の数字は、その現実を映しています。

7. まとめにかえて

今回は、国土交通省の鉄道統計年報からJR各社の数字を確認しました。

  • 旅客運輸収入の最多はJR東日本の1兆4317億6257万5000円
  • 営業キロもJR東日本が7302.2キロでトップ
  • JR北海道は営業キロ3位に対し旅客運輸収入は5位
  • 1キロあたり収入はJR東海が最も高い

同じJRでも、路線網の広さと収益力はまったく異なっています。

8. 【執筆者コメント】距離の長さは、本数の多さではない

私は群馬県の山間地域に住んでいます。日常の移動はほとんど車で、時刻表を意識する機会はそう多くありません。

そのうえで営業キロという数字を見ると、少し不思議な感じがします。この指標が数えているのは路線の距離で、そこを1日に何本の列車が走るかは含まれていません。本数の多い区間と少ない区間が、同じ1キロとして足し上げられています。

暮らしの側から見ると、効いてくるのは距離よりも本数のほうです。路線があること自体はありがたいのですが、乗れる時間が限られていれば、結局は車を選ぶことになります。逆にいえば、本数が確保されている区間は、距離が短くても生活の支えになっているということでもあります。

本文にあるとおり、線路や駅、除雪の費用は距離に比例して発生します。距離を維持する費用と、その距離が生む収入。そのあいだに本数があるのだと考えると、地方路線をめぐる話が少し具体的に見えてくるように思います。

参考資料

中沢 新