国民年金保険料は年々じわじわと上がり、令和8年度は月1万7920円です。
「これだけ払っているのに、将来もらえる年金は月6万円に満たないのがフツウ」と聞くと、負担の重さに気が滅入ってしまう方もいるかもしれません。一方で、短時間労働者の厚生年金加入をめぐる「106万円の壁」は、令和8年10月に撤廃される予定です。
この記事では、国民年金保険料の納付状況を確認したうえで、未納のリスクと免除制度、そして厚生年金に加入することのメリットを整理します。
- 国民年金保険料の実質的な納付率は85.0%で、多くの人がきちんと納めている一方、未納のままにしておくと将来の年金額や障害・遺族年金に影響する
- 収入が少なく納付が難しい場合は、免除・猶予制度を利用すれば未納にならずに済み、10年以内であれば追納もできる
- 「106万円の壁」は令和8年10月に賃金要件が撤廃される。目先の手取りは減っても、老後の年金額や障害・遺族保障の面で厚生年金への加入には大きなメリットがある
※この記事では以下の記事で使用しているデータを一部を引用しています。
1. 国民年金保険料の納付状況、実は多くの人がきちんと納めている
「国民年金は未納の人が多い」というイメージを持たれがちですが、実際の納付状況はどうなっているのでしょうか。厚生労働省が公表した最新の統計から確認します。
国民年金保険料の納付率(令和8年5月末現在)1/3
出所:厚生労働省「令和8年5月末現在 国民年金保険料の月次納付率」
保険料は納付期限(対象月の翌月末)から2年を経過すると時効により納められなくなるため、最終的な納付状況を示す指標は「3年経過納付率」です。
令和5年5月分の保険料は、令和8年5月末時点で85.0%(対前年同期+0.2ポイント)まで納められており、年々わずかに改善が続いています。国民年金の被保険者の多くは、決して「払っていない」わけではなく、きちんと納付を続けているのが実情です。
2. 未納のままにしておくのは避けたい、免除・猶予制度を活用する
とはいえ、3年経過納付率が85.0%ということは、裏を返せば一定数の未納が残っているということでもあります。収入が少ないなどの理由で納付が難しい場合、「未納のまま放置する」のではなく、免除や納付猶予の制度を利用することが大切です。
2.1 未納のまま放置するリスク
保険料を未納のまま放置すると、将来受け取る老齢基礎年金の額が少なくなるだけでなく、一定の期間以上未納が続いていると、万一の病気やケガで障害を負ったときの障害基礎年金や、家計を支える方が亡くなったときの遺族基礎年金を受け取れない場合があります。「あとで納めればいい」と先延ばしにするのではなく、納付が難しいと感じた時点で、早めに手続きをしておくことが重要です。
2.2 免除・納付猶予制度の種類
国民年金保険料には、収入が少ない方などを対象にした免除・納付猶予の制度が用意されています。生活保護を受けている方や、障害年金(2級以上)を受けている方などが対象になる「法定免除」のほか、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定基準以下の場合に申請できる「申請免除」(全額・4分の3・半額・4分の1免除)、50歳未満を対象とした「納付猶予制度」、学生を対象とした「学生納付特例」などがあります。マイナポータルを使えば、これらの免除・納付猶予の申請を電子申請できます。
免除や猶予が認められた期間は、未納とは異なり、老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます(受け取れる年金額への反映は、免除の種類によって異なります)。また、免除・猶予を受けた期間の保険料は、10年以内であればあとから納める「追納」も可能です。生活が落ち着いたタイミングで追納すれば、将来の年金額を満額に近づけることもできます。
ただし、免除・猶予から3年度目以降に追納する場合、当時の保険料に少し加算額(手数料のようなもの)が上乗せされてしまいます。経済的に余裕ができたら、できるだけ2年以内などの早めのタイミングで追納するのが最もおトクです。
3. 「106万円の壁」がなくなる、厚生年金に加入するメリットを見直す
国民年金保険料の負担そのものに加えて、パート・アルバイトなどで働く方の間では「106万円の壁」も意識されてきました。ここで、この壁の仕組みと、今後の見直しについて確認しておきます。
3.1 「106万円の壁」とは何か、令和8年10月に撤廃予定
従業員数が一定規模を超える企業で、週20時間以上働き、賃金が月8.8万円(年収換算で約106万円)以上になると、厚生年金保険・健康保険に加入することになります。この賃金要件を意識して、就業時間を調整する方が「106万円の壁」と呼ばれる問題です。厚生労働省によると、この賃金要件は最低賃金の状況を踏まえて令和8(2026)年10月に撤廃される予定です。撤廃後は、週20時間以上働くという要件を満たせば、賃金にかかわらず厚生年金保険・健康保険に加入することになります。
なお、加入する企業規模の要件(現行は従業員数51人超)も段階的に縮小・撤廃される予定で、従業員36人以上の企業は2027年10月、21人以上の企業は2029年10月、11人以上の企業は2032年10月、10人以下の企業は2035年10月から、それぞれ新たに対象になる見通しです。学生は、これらの被用者保険の加入対象には含まれません。
3.2 目先の手取りは減っても、将来の年金額は「2階建て」に
厚生年金に加入すると、給料から保険料が引かれる分、目先の手取りは少し減ります。このため「働き損になるのでは」と身構えてしまう方も少なくありません。しかし、厚生年金保険料を納めた期間は、老齢基礎年金(1階部分)に老齢厚生年金(2階部分)が上乗せされるため、将来受け取る年金額は「1階だけ」の場合と比べて大きく変わってきます。この記事の後半でも触れますが、国民年金のみの平均年金月額は5万9310円であるのに対し、厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は15万289円です。単純比較はできないものの、両者の差は決して小さくありません。
3.3 障害・遺族への保障も、厚生年金なら手厚くなる
厚生年金加入のメリットは、老後の年金額だけではありません。病気やケガで一定の障害が残った場合、国民年金からは障害基礎年金(1級・2級)が支給されますが、厚生年金に加入していれば、これに障害厚生年金が上乗せされ、より軽い等級の3級や、一時金である障害手当金が支給される場合もあります。また、一家の生計を支えていた方が亡くなった場合の遺族年金についても、国民年金の遺族基礎年金は原則として子のある配偶者や子が対象であるのに対し、厚生年金の遺族厚生年金は、子の有無にかかわらず配偶者などに支給される場合があるなど、保障の範囲が広くなります。
厚生年金への加入は、手取りが減るという目先のデメリットばかりが気になり、メリットを実感しづらいというお声をよく伺います。しかし、老後の年金額はもちろん、万一の障害や、ご家族を残して亡くなった場合の保障まで含めて考えると、1階だけと2階建てでは受け取れる金額も保障の範囲も大きく異なります。「106万円の壁」の撤廃で加入の機会が広がる方は、目先の手取りだけでなく、長い目で見た保障の差を踏まえて考えてみることをおすすめします。

