年金は65歳から受け取るものと思われがちですが、60歳から受け取り始めることもできます。

ただし繰上げ請求をすると、1カ月早めるごとに0.4%ずつ減額されます。60歳まで早めると24%減となり、その金額が生涯続きます。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の受給権者のうち繰上げを選んだ方は10.1%でした。

この記事では、繰上げでいくら減るのか、実際に選んでいる人はどれくらいいるのか、そして請求する前に確認しておきたい注意点を順に見ていきます。

なお、公的年金の仕組みや年代別の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

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1. 繰上げは1カ月0.4%の減額。60歳で24%減

まずは制度の中身から確認していきます。繰上げ請求は60歳から65歳になるまでの間に申し出ることができ、受け取り始めた時点で減額率が確定します。

1.1 生年月日で減額率が2つに分かれる

日本年金機構によると、繰上げの減額率は次のとおりです。

  • 昭和37年4月2日以後生まれ:1カ月あたり0.4%(60歳まで早めると最大24%減)
  • 昭和37年4月1日以前生まれ:1カ月あたり0.5%(同じく最大30%減)

減額率は「繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」に0.4%を掛けて求めます。1年早めれば4.8%、3年で14.4%、5年で24%という計算です。

1.2 満額7万608円なら月5万3662円になる

令和8年度の老齢基礎年金の満額は月7万608円です。これを60歳から受け取ると24%減となり、月5万3662円まで下がります。差は月1万6946円、年間で20万3352円です。

この5万3662円という水準を、実際に受け取っている方の平均と比べておきます。LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用します。

厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

国民年金の平均は月5万9310円です。満額を60歳から受け取った場合の5万3662円は、この平均も下回る水準ということになります。

公的年金の仕組みについては、LIMOの記事「【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金」から要点を引用して確認しておきましょう。

日本の公的年金は、2階建て構造で、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金(会社員・公務員)となっています。国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる基礎的な年金制度です。自営業やフリーランス、学生などが主に加入し、保険料は自分で納めます。受給額は加入期間に応じて決まりますが、満額でも月約7万円程度が目安です。厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金制度で、国民年金に上乗せして支給されます。保険料は給与から天引きされ、収入や加入期間によって将来の受給額が変わります。

出所:【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金

1カ月早めるごとに0.4%ずつ減り、その金額が生涯続きます1/2

繰上げ受給の減額率と老齢基礎年金の満額に対する月額

出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」、厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2. 選んでいるのは国民年金の10.1%

実際にどれくらいの方が繰上げを選んでいるのかを見ていきます。ここも令和6年度末時点の数字です。

2.1 基礎年金のみの方に限ると23.2%

受給権者の受給開始の選択状況は次のとおりです。

  • 国民年金 全体:繰上げ10.1%/本来受給87.3%/繰下げ2.6%
  • 国民年金 基礎のみ・旧国年:繰上げ23.2%/本来受給74.4%/繰下げ2.4%
  • 老齢厚生年金:繰上げ1.2%/本来受給96.9%/繰下げ1.9%

国民年金全体では10.1%ですが、基礎年金だけを受け取る方に限ると23.2%と、4人に1人近くが繰上げを選んでいます。一方、厚生年金を受け取る方の繰上げは1.2%にとどまります。

2.2 2階部分があるかどうかで選択が分かれる

厚生年金がある方は65歳前でも特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合があり、繰上げを選ぶ必要が薄くなります。基礎年金だけの方は65歳まで収入の柱がないため、早めに受け取る判断につながりやすいと考えられます。

ただし、この差の理由そのものは統計からは読み取れません。ここでは「制度の形が違えば選択も分かれている」という事実の確認にとどめておきます。

基礎年金だけの方では繰上げが23.2%と、他の区分より大幅に高くなります2/2

年金の受給開始時期の選択状況(繰上げ・本来受給・繰下げ)

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

3. 累計で追い越されるのは80歳代の前半

減額されても早くもらい始める分、受け取り始めの数年は繰上げのほうが累計額で上回ります。それが逆転する時期を計算してみます。

3.1 60歳繰上げと65歳受給が並ぶのは約80歳10カ月

60歳から24%減で受け取る場合と、65歳から満額で受け取る場合の累計額が等しくなる時期を計算すると、およそ80歳10カ月です。

この年齢より前に亡くなれば繰上げのほうが受取総額は多く、それより長く生きれば本来受給のほうが多くなります。ただしこれは年金額だけを単純に足した試算で、税金や社会保険料、その後の年金額改定は考慮していません。

宮野 茉莉子

損得の分岐点だけで決める話ではないと思います。60歳から65歳までの5年間をどう暮らすかという現実の問題が先にあって、その解決策のひとつが繰上げです。ただ取り消せない選択ですので、他の手段と並べたうえで決めてください。