2019年8月5日に行われた、日本水産株式会社2020年3月期第1四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料
スピーカー:日本水産株式会社 取締役常務執行役員 山本晋也 氏
2020年3月期 第1四半期決算 サマリー
山本晋也氏:本日はお忙しいなかお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
2020年3月期第1四半期決算は非常に悪く見えますが、計画比で申し上げれば、年間ではほぼ計画どおりと考えております。年間計画に変更はございませんので、そのことをまず冒頭に申し上げます。
それでは決算短信補足資料にしたがいまして、簡単にご説明をさせていただきます。
売上高は1,741億円で、減収でございます。これは会計処理の変更といいますか、取引価格の変更のためです。
2019年3月期の決算のときにも申し上げましたが、コンビニエンスストア等の取引において、センターフィーを売上で計上していたものを、売上からネットする取引に変えた環境の影響が、24億円程度ございます。その24億円を除きますと、増収の内容でございます。
以下、営業利益・経常利益・四半期純利益はスライドのとおりです。営業利益は前年比17億円の減益。経常利益は21億円の減益。四半期純利益も16億円の減益でございます。
繰り返しになりますが、年間の計画に対しては、おおむね進捗の範囲内と考えております。
この先どうなるのかというご心配もあろうかと思います。2018年はご承知のとおり、稚魚斃死の影響で、南米の鮭鱒養殖事業の生産がありませんでした。
そういう状況は、今年はございません。順調に生産し、進んでおります。そのため、2019年3月期第2四半期は、南米養殖事業が前年比で大きく回復すると見込んでおります。
また、2019年3月期第1四半期からすでに、国内外の食品事業において価格改定を進めています。こちらは、(今後の)肝になる部分と申し上げてもいいかもしれません。国内だけではなく海外も含めまして、価格改定をうまく実施して浸透させることが、大きなポイントの1つかなと思っております。
私どもは第3四半期が山場ですので、その最重要期に向けて、しっかりと在庫マネージメントを含めて実施していくことが大切だと認識しております。
2020年3月期 第1四半期決算 セグメント別概況
事業別では、水産事業が為替の影響もややございまして、若干の減収でございます。。
食品事業は先ほど申し上げたとおり、センターフィーの取引形態の変更にともなう影響が24億円ございますので、実質的には48億円の増収とみていただいてよいかと思います。
ファインケミカル・物流は、スライドのとおりです。「その他」事業は予定の範囲内ですが、昨年度はエンジニアリング事業で外の仕事を大きく受注することができたのですが、今年度はそれがありませんでしたので、大きく減収になっています。
主な営業利益増減要因
主な営業利益の増減理由です。南米鮭鱒養殖事業は、販売価格が堅調で、養殖事業で見ればプラスです。しかし、その商品が日本国内もしくは米国内に留まって在庫になっていたために、実質的には利益が実現していません。
グループ外に出ていない、実現していないということで、マイナス調整をしている結果、実質的に第1四半期で切ると、減益となっています。
また、日本・ヨーロッパの食品事業の原材料が上がってまいりまして、2018年度と比べますとコスト高で苦戦しているのが実態でございます。
「その他」は今申し上げましたエンジニアリング事業においての2018年度の反動でございます。
連結貸借対照表(前期末比)
スライドはバランスシートになります。
前期と比べまして、総資産が130億円膨らみました。在庫と売上増加にともなう売掛金増が主たる要素です。加えて、設備投資を実施している関係もあり、固定資産も若干増えいます。
連結キャッシュ・フロー(前年同期比)
連結キャッシュ・フローでございます。先ほど申し上げたように、棚卸資産と売掛金が膨らんでいることもあり、営業キャッシュ・フローはマイナスとなりました。
タイミングもございますが、前期の営業キャッシュ・フローはプラスでしたので、それと比較しますとかなり営業キャッシュ・フローが悪くなっています。
設備投資につきましても第1四半期から発生しており、国内の養殖事業を中心に60億円受注いたしました。
営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローを合わせますと、120億円の資金需要が発生いたしましたが、借入金と預金の取り崩しで対応した状況でございます。
水産事業
ここからは各事業別でございます。水産事業では、売上は若干減収となりました。ヨーロッパの為替の影響が大きく残っています。
営業利益は、これも繰り返しになりますが、南米の養殖事業はいいのですが、まだグループ外に販売が完了しておりませんので、その調整の影響を受けて減益でございます。
水産事業 売上高・営業利益(前年同期比)
スライドのグラフは、左側から漁業、養殖、加工・商事、ニッスイ個別となってございます。
漁業が若干の減益。養殖は大きく増益に見えますが、連結調整つまり棚卸資産の未実現の調整が加わります。スライドの右下に破線で括ってあるところをご覧いただきますと、緑色で前年同期が17億円、今期が11億円と数字が書いてあります。
在池魚評価、つまりまだ子どもの魚の評価益と、連結調整を全部織り込んだ損益が、前年同期は17億円で、今期は11億円ということです。繰り返しになりますが、現時点で見ると販売が完了してないものもあるため、減益になっています。言い換えると、これから販売すれば利益が出るということでございます。
加工・商事は、おおむね前年同期並みの損益。ニッスイ個別は3億円程度ですが、増益です。
水産事業 ニッスイ個別(前年同期比)
ニッスイの個別です。スライド左上の折れ線グラフをご覧いただきますと、売上はほぼ前年どおりの傾向で推移しております。
一方、下の棒グラフをご覧いただきますと、第1四半期の営業利益はプラスになりました。
7ページ目のスライドで、水産事業の2019年3月期第2四半期の営業利益をご覧いただきますと、ほとんど損益がありません。これは鮭鱒の養殖事業に、稚魚の丙種の影響が非常に(大きく)出たということです。
それを国内で販売するニッスイの損益的にも厳しかったため、2019年3月期第2四半期(のニッスイ個別の営業利益)はやはり小さくなっています。
今年度は稚魚の丙種の影響がありません。販売するものが十分ありますので、しっかりと利益が取れるのではないかと考えています。
食品事業
食品事業は880億円の売上高で、大きく増収とさきほど申し上げました。実際は、前年同期に対しプラス24億円とご覧ください。一方、営業利益は非常に苦戦しており、7億円の減益でございます。
スライド右側の冷凍すり身輸入価格推移の折れ線グラフのとおり、コストが上がっています。
食品事業 売上高・営業利益(前年同期比)
加工・商事とチルド、ニッスイ個別とグラフが分かれています。加工・商事関係は会社ごとにデコボコはありますが、おおむね前年同期並みでございます。少し想定外だったのはチルドです。前年同期が9億円でしたが、6億円に減益でございます。
1つは減益要素と見ていました新工場の減価償却費です。。これに加え、6月から7月と、つい最近まで続いておりました天候不順による影響が思ったよりも出まして、販売数量減少などで減益になっています。
ニッスイ個別につきましては若干(の変動)でございます。
食品事業 ニッスイ個別(前年同期比)
スライド左上の折れ線グラフで売上をご覧いただきますと、とくに4月が好調ですが、それ以降も好調を維持しております。
一方営業利益は、値上げの浸透が完全ではない部分や、冷凍食品のようにこれから値上げするものもあり、まだ完全に取りきれていない状況でございます。
ファインケミカル事業
ファインケミカル事業です。機能性原料事業は2018年に引き続き非常に好調ですが、日水製薬も含めたグループ会社が苦戦していることもございまして、差し引きはおおむね前年同期並みの損益となっています。
物流事業
物流事業は、事業的にはとくに大きな問題はありませんが、退職給付債務の算定方法を、対象人数が300人を超えた関係で簡便法から原則法に変更することになり、その関係で債務が膨らんだ影響が2億円強ございました。
この影響を含めて、前年同期比マイナス1億円の結果となっています。ここまでが第1四半期の状況でございます。
2020年3月期の打ち手について
これ以降はこれからの取り組みです。
水産では、養殖事業をしっかり利益の出る体制にしていきます。高度化、あるいは加工拠点の拡大等々を進めてまいります。また、海外を中心とした販売エリアの拡大も進めたいと思っております。
食品は、生産工場の最適化を図っていくことで、より効率化を目指していきたいと思っていることと、価格改定をしっかりと実施して浸透させることが収益へつながっていくものと考えています。
ファインケミカルは、高純度EPAの海外展開についてまだ現時点で申し上げられることはないのですが、粛々と準備を進めております。今後に向けた体制づくりをしていきましょう、ということです。
DHAについては、引き続き需要増になっておりますので、これもしっかり売っていくのが、今後の体制でございます。
今後の取組み:水産事業
水産事業について、もう少しブレイクダウンします。「BAP」「ASC」と認証が取れておりますので、北米を中心に養殖魚の更なる拡販を進めてまいります。
飼育の安定化というのは、スライドではとくに黒瀬ぶりをあげていますが、採卵の多回数化をして、より安定した種苗を取って、他社との差別化を進めていきたいと思っています。種苗センターがだんだん不足してまいりましたので、設備の増強も計画しています。
ヨーロッパにつきましては、イギリスの水産会社を買いました。既存のノルディック・シーフード社を含めた水産関係の会社、あるいはフランスのシテ・マリン社との協働なども含めて、相乗効果を進めてまいりたいと思っています。
今後の取組み:食品事業
食品事業です。海外では、ヨーロッパのMITI社を子会社化いたしましたので、工場を新設したのと同時に、この生産体制を使いながらより拡大したいという考えです。
KING&PRINCEについては、えび原料以外の商品の拡充をしています。スライドの写真はコンビニエンス向けのフィッシュバーガーですが、こういうものの拡充を進めてまいります。
苦戦していますチルド事業。新工場の稼働をきっちり安定化して、体制づくりをしないといけないことと、新工場を含めて既存の工場とのあいだの生産体制はどういうかたちが1番最適なのかを、突き詰めていきたいと思ってございます。
スライド右端の価格改定については、さきほど申し上げました。
今後の取組み:ファインケミカル事業
ファインケミカルも先ほど申し上げた通りで、なかなか表立っていろいろな話ができないのですが、粛々と進んでいるとご理解いただければと思っております。
2019年秋冬新商品 ①
新商品についてです。基本的には、人手不足あるいは時間短縮に対応できること、そして魚の持つ栄養価をどれだけみなさんにお届けできるかという視点で、いろいろな商品を準備しています。
スライドの左上は調理に人手を要しない、凍ったまま使える自然解凍のものです。
中央はお魚をミンチ状にしまして、様々な料理に使えるものです。写真はガパオライスを出していますが、このような使い方ができます。
スライド右側は野菜と魚をすでに一定程度調理した状態で、フライパンで炒めていただくだけで調理品になる商品群です。
2019年秋冬新商品 ②
家庭用の冷凍食品(の新商品)です。電子レンジで調理することで、魚や栄養が摂れる商品群でございます。
中央は私どもの持つ技術です。写真のような、すり身を原料に、ほたて風味の商品ですとか、カニフレークの商品などです。いわゆるカニフレークとは違いまして、より食感がカニに近い商品群でございます。
右の写真は魚の美味しさや栄養を手軽にということで、「さかなのかわりソーセージ」です。1本で、いわし1匹分のいろいろな栄養価が取れる商品となっております。
ラグビーW杯「ALL BLACKS(ニュージーランド代表)」とのコラボ
ラグビーのワールドカップがございますが、私どもは30年間「ALL BLACKS」のスポンサーをしており、彼らとタイアップしながら商品のキャンペーンをしております。
賞味期限の年月表示(フードロス削減の推進)
フードロスの対応です。賞味期限の延長で、缶詰については7月より日付ではなく年月表示に変更をいたしました。スライドの写真にあるように、蓋に年月を表示するようにしています。
Shell Ocean Discovery XPRIZE 準優勝!!
Shellがはじめました、XPRIZという全世界の海洋での技術競争についてです。私どもはJAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)が所有する船舶の運航委託を受けていますので、JAMSTECと協働して海洋の地形探査などのコンペティションに出ました。
その結果、アメリカに次いで日本が準優勝を獲得しました。そのお手伝いを少ししましたよ、というものでございます。
【参考】 連結損益計算書(前年同期比)
損益計算書でございます。売上高、売上総利益、販売費のところには、チルド事業の取引形態の影響が24億円ありますと記載しております。
営業利益と経常利益のあいだの営業外につきましては、前年同期は為替差益だったものが2020年3月期第1四半期は為替差損になったことを表示しています。
以上簡単ですが、ご説明させていただきました。