しかし、一見理解しがたい「禁断の愛」を描いたことで可能にした、少年犯罪への扱い方があったことも事実です。

恭一郎とはつみに関係が構築されたことで、被害者家族が、加害少年の満に面会する機会を得ることになります。

満は初めて、それまで明かしていなかった恭一郎の息子を殺した理由を口にしました。また、恭一郎とはつみが関係を持つことで、恭一郎は満の今後を知り、誠実に生き、償い続けるのかを見届けることも可能にしています。

「禁断の愛」を描いたことが、事実が表に出ることがなく、不透明なままになりがちな少年犯罪の真相を明かし、被害者家族に対し、加害少年本人の口から事件を説明することを可能にしました。

フィクションという枠を越えるものではありませんが、作品として一定の意義を見出したと考えられます。これまで起きてきた数々の事実に対して、フィクションが今できる最大の役割を担ったといえるでしょう。

さらに、主人公の恭一郎を演じた遠藤憲一さん、そして非常に複雑な役であった加害少年の満を演じた清水大登さんのお芝居も秀逸でした。回を増すごとに進化するふたりの”芝居合戦”ともいえる役での交わりが、視聴者を強く惹きつけた要因でしょう。

「恭一郎が満にどう接するのか」、「少年院を経て満はどう変化しているのか」、役柄に対する興味関心を失わずにいたのは、ひとえにふたりの演技あってのことでした。

エンタメ要素の強い「禁断の愛」にも学びはある

一方で、主人公の鐘子が、「結婚している」と嘘をついたことで始まった恋愛を描いた『偽装不倫』や、事実婚状態の”夫”が亡くなったことであぶり出された3人の妻を描いた『私、旦那をシェアしてた』は「禁断の愛」といえどエンターテインメント要素の強いドラマです。

『偽装不倫』では、嘘をつくことで素直になって自分らしい恋愛ができるようになった女性の心の内を描き、『私、旦那をシェアしてた』は、事実婚状態の3人の妻たちを残して亡くなった夫の素性を探ることで、シングルマザーとなった3人の女性たちがその後の生き方を考え直す内容になっていました。

「禁断の愛」という観点においてもエンタメ要素の強い2作品でしたが、共感できるポイントがあり、学ぶべき行動があったといえます。

「禁断の愛」は、フィクションだと知っているからこそ純粋に作品を楽しめるテーマであると同時に、現実に起こり得ないこと、あるいは起こるべきではないことを擬似的に体感できるようにと、作り手が作品により強いメッセージを込めているジャンルなのかもしれません。

しかし、現実的ではない「禁断の愛」をテーマにした作品を質の良いものに仕上げ、成功させるためには、緻密なストーリーの構成や、画的なリアリティ、役者の演技力などを欠くことはできないでしょう。その点では、他のどの作品とも共通で、その評価は我々視聴者に委ねられているはずです。

視聴者として気づきを得る姿勢を忘れずに、「憧れる!」、「理不尽だ!」、「不自然だ!」と自由な感想を持つのもまた「禁断の愛」をテーマにした作品の魅力のひとつです。

【参考】
それぞれの断崖』東海テレビ
偽装不倫』日本テレビ
私、旦那をシェアしてた』読売テレビ・日本テレビ系

藤枝 あおい