「貯金できない人には共通の特徴がある」という言い方を、SNSやネット記事でよく見かけます。しかし、性格や習慣だけで貯蓄の有無を断定できるほど、家計の事情は単純ではありません。

総務省の家計調査を見ると、貯蓄現在高(二人以上の世帯)の平均値2059万円を下回る世帯は66.1%、実に3分の2にのぼります。つまり「貯まっていない」と感じる世帯のほうが、統計上は多数派です。

この記事では、性格論ではなく公的統計に基づいて「貯まっていない」とされる世帯の実態を確認し、あわせて金融経済教育推進機構(J-FLEC)が示す「先取り貯蓄」という口座の使い分け方を、編集部の試算とともに整理します。

ココがポイント
  • 家計調査(総務省・2025年平均)では、貯蓄現在高の平均値2059万円を下回る世帯が66.1%を占めます。
  • 「貯金ゼロ世帯の割合」は、実は総務省の家計調査本体には直接示された数字がありません。
  • J-FLECが示す「先取り貯蓄」は、給与が入った直後に一定額を別口座へ移す方法で、公式サイトのコラムに具体的な目安例が示されています。

1. 「貯金できない人の特徴」という言説の落とし穴

ネット上の記事を見ると、「貯金できない人の特徴」として、目的なく貯めようとする、残った分だけ貯金しようとする、といった行動パターンがよく紹介されています。

1.1 性格論では家計の実態が見えない

こうした行動パターンの指摘自体は、家計管理の工夫として参考になる面もあります。ただし、これらは個々の記事の考察であり、公的統計が「貯金できない人の性格」を調査した結果ではありません。

収入額、世帯構成、住居費の有無など、貯蓄額を左右する要因は多岐にわたります。性格だけを取り出して断定すると、家計の構造的な事情が見えなくなってしまいます。

齊藤 慧
「あなたの特徴のせい」と言われると、なんとなく身につまされる気がしてしまうものです。収入や住居費、家族構成まで人によって違うのに、性格だけを取り出して評価されるのは少し乱暴な話でもあります。まず数字で自分の状況を確かめるところから始めれば、それで十分な一歩になります。

そこで、この記事ではまず公的統計から「貯まっていない」とされる世帯の実態を確認します。

2. 公的統計で見る「貯まっていない」世帯の実態

総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年(令和7年)平均から、二人以上の世帯の貯蓄現在高の分布を見ていきます。

2.1 平均値を下回る世帯が3分の2を占める

2025年平均の貯蓄現在高(平均値、0世帯を含む)は2059万円でした。前年比75万円・3.8%増で、比較可能な2002年以降で最多の水準です。

ただし、この平均値を下回る世帯は66.1%、約3分の2を占めます。平均値は一部の高額保有世帯に引き上げられやすいためです。

実際の分布に近いとされる中央値(貯蓄保有世帯)は1264万円でした。0世帯を含めた中央値は1167万円です。この差自体が、貯蓄を全く保有していない世帯が一定数存在することを示しています。

2.2 【家計調査で見る貯蓄現在高の実態(2025年平均)】

ストックの水準

  • 貯蓄現在高(平均値):2059万円(前年比3.8%増)
  • 貯蓄現在高(保有世帯の中央値):1264万円(前年1189万円)
  • 貯蓄現在高(0世帯を含む中央値):1167万円

分布の偏り

  • 平均値2059万円を下回る世帯の割合:66.1%

2.3 「貯金ゼロ世帯」の割合は、実は公表されていない

ここで注意したいのは、「貯金ゼロ世帯が何%いるか」という数字そのものは、この家計調査の資料本体には直接示されていない、という点です。

保有世帯の中央値と0世帯を含めた中央値の差から、貯蓄ゼロの世帯が一定数存在することは推測できます。しかし、その割合を明示した文章は資料内に見当たりませんでした。

「貯金ゼロ世帯は何割」という言い方をする記事を見かけたら、その数字の出典が総務省の家計調査そのものではない可能性がある、と留意しておくとよいでしょう。

3. 年代・世帯構成で変わる「貯まっていない」の中身

「貯まっていない」とされる層の実態は、年代や世帯構成によって大きく異なります。ここではJ-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の年代別データを見てみます。

3.1 単身世帯20代の3人に1人は金融資産を保有していない

J-FLECの調査における「金融資産」は、預貯金のうち日常的な出し入れに備えている部分を除いた、運用・将来のために蓄えている部分を指します。総務省の家計調査の「貯蓄現在高」とは対象範囲の定義が異なります。

この調査によると、単身世帯20代のうち、金融資産を保有していない世帯の割合は33.2%でした。100万円未満(保有世帯)を合わせると、実質的に100万円未満の層が57.8%に達します(編集部集計)。

一方、金融資産を保有している世帯だけで見た単身20代の中央値は146万円です。保有世帯に限るか、非保有世帯を含めるかで、見える実態が大きく変わることが分かります。

齊藤 慧
3人に1人という数字だけ見ると、なんとも重く感じてしまいますね。社会人になって間もない年代であれば、資産がまだ少ないのは自然な面もあります。今どの位置にいるかを知ることと、これから資産をどう積み上げていくかは、まったく別の話として考えたいところです。

4. 【編集者の視点】

「20代は貯金ゼロが3割」という数字は、注意して扱う必要があります。この調査は単身世帯・二人以上世帯を分けて集計しており、世帯構成によって前提が大きく変わるからです。

例えば、実家暮らしで生活費の負担が軽い20代と、一人暮らしで家賃・生活費をすべて自分で負担する20代とでは、同じ収入でも手元に残る額はまったく違います。統計上の年代区分は、こうした生活実態の違いまでは反映していません。

自分の状況を確かめるときは、平均や中央値をそのまま当てはめるのではなく、まず自分の手取りと固定費(住居費・通信費・保険料など)を書き出し、そこから残る額を見ることが先です。数字を確認する作業自体が、家計の見通しをつける最初の一歩になります。

5. 貯まる人が実践する「先取り貯蓄」という口座の使い分け

ここからは、貯蓄を続けやすくする仕組みとして知られる「先取り貯蓄」を、公的機関の情報に基づいて整理します。

5.1 J-FLECが示す「先取り貯蓄」の考え方

金融経済教育推進機構(J-FLEC)は、公開コラムの中で「先取り貯蓄」を家計管理のコツとして紹介しています。

上手にお金を貯めるコツは「先取り貯蓄」をすることです。給料が入ったら、まず一定額を貯蓄し、残りで生活する方法です。例えば手取り21万円で2〜3万円を先取りできれば、年間で24〜36万円の貯蓄ができます。銀行の自動積立や、NISA(少額投資非課税制度)などを活用すれば無理なくお金を貯める仕組みを作ることができます。

出典:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「初任給の手取り額はいくら?給与明細の見方と社会人の1年目から始めたい家計管理の基本」(2026年4月22日公開)

ポイントは「残った分を貯金する」のではなく、「先に貯蓄分を確保し、残りで生活する」という順序を逆転させている点です。生活費用の口座と、先取りした分を移す口座を分けておくことで、この順序が仕組みとして続きやすくなります。

5.2 「何%を先取りすべきか」に公的な目安はない

ここで気をつけたいのは、「収入の何割を貯蓄すべきか」という公的機関による推奨割合は見当たらない、という点です。金融庁・総務省・J-FLECのいずれにも、そうしたガイドラインは確認できませんでした。

J-FLECのコラムで示された「手取り21万円で2〜3万円」という例は、比率にすると約9.5%〜14.3%にあたります(編集部算出)。あくまで一例であり、これを一律の正解として当てはめる必要はありません。

齊藤 慧
「〇割貯めなきゃ」という目標に縛られて、途中で息切れしてしまう方は少なくないだろうと感じます。周りの目安を追いかけるより、まず自分にとって無理のないラインを見つけることのほうが、結果的にずっと長く続く仕組みになるはずです。焦って高い比率から始める必要はありません。

この目安をもとに、収入額別にどれくらいの差が出るのかを編集部で試算してみました。

前提:先取り貯蓄の比率を5%・10%・15%と仮定した編集部試算(月額・年額)

 

手取り月収 5%で先取り 10%で先取り 15%で先取り
20万円 5%:月1万円/年12万円 10%:月2万円/年24万円 15%:月3万円/年36万円
25万円 5%:月1万2500円/年15万円 10%:月2万5000円/年30万円 15%:月3万7500円/年45万円
30万円 5%:月1万5000円/年18万円 10%:月3万円/年36万円 15%:月4万5000円/年54万円

5.3 【手取り月収別・先取り貯蓄の年間額(編集部試算)】

手取り月収別・先取り貯蓄の年間額2/2

手取り月収別・先取り貯蓄の年間額

出所:LIMO編集部作成

手取り20万円の場合

  • 手取り20万円・5%:月1万円・年12万円
  • 手取り20万円・10%:月2万円・年24万円
  • 手取り20万円・15%:月3万円・年36万円

手取り25万円の場合

  • 手取り25万円・5%:月1万2500円・年15万円
  • 手取り25万円・10%:月2万5000円・年30万円
  • 手取り25万円・15%:月3万7500円・年45万円

手取り30万円の場合

  • 手取り30万円・5%:月1万5000円・年18万円
  • 手取り30万円・10%:月3万円・年36万円
  • 手取り30万円・15%:月4万5000円・年54万円

J-FLECの例(手取り21万円で2〜3万円)は、この試算で言えばおおむね10〜15%の範囲に収まります。無理のない比率から始め、生活に支障が出ないかを数か月確認してから見直す、という進め方が現実的です。

6. 口座を分ける仕組みが続きやすい理由と、その注意点

「先取り貯蓄」を仕組みとして機能させるうえで、生活用の口座と貯蓄用の口座を分けることには、実務上のいくつかの利点と注意点があります。

6.1 手元に残る金額が可視化される

生活費用の口座と貯蓄用の口座を分けておくと、生活費用の口座に残っている金額が「今月使える範囲」として一目で分かるようになります。

J-FLECのコラムが示す「銀行の自動積立」は、この口座の分離を、毎回自分で振替操作をしなくても自動的に進める仕組みです。給与が入るたびに一定額を貯蓄用の口座へ自動的に移すことで、先取りの手間そのものを減らせます。

6.2 NISAなど非課税制度との組み合わせ

J-FLECのコラムはNISA(少額投資非課税制度)の活用も例示しています。新NISAのつみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円で、併用すると年間最大360万円まで投資できます。

非課税保有限度額は1800万円です。先取りした資金の一部を、生活防衛費として現金で確保する口座と、長期の資産形成に回す非課税制度とに分けて管理する考え方も、選択肢のひとつになります。

7. 【編集者の視点】

口座を分ける・自動化するという仕組みは、貯蓄を続けやすくする有効な工夫です。ただし、実務上気をつけたい点もあります。

まず、先取りする額を生活の実態に対して大きく設定しすぎると、生活費用の口座が不足し、貯蓄用の口座から資金を戻す事態になりかねません。この場合、当初の「先取り」の意味が薄れてしまいます。まずは1〜2か月、無理のない金額で試してから調整するほうが、仕組みとして定着しやすくなります。

次に、NISAのような投資性の商品に回す資金と、急な出費に備える現金は、性質が異なります。当面使う予定のない資金だけを投資に回し、生活費の3〜6か月分程度は現金で確保しておく、という順序を守ることが、資金の性質を混同しない基本的な考え方です。

口座の使い分け方に迷う場合は、まず自分の毎月の固定費と変動費を書き出し、生活費用の口座に残す額の目安を決めることから始めるとよいでしょう。金融機関の窓口でも、口座の分け方や自動振替の設定方法について相談できます。

齊藤 慧
仕組みさえ整えば、性格を変える必要はありません。口座を分けて自動化するというのは、意志の力に頼らずに続けるための、静かだけれど実践的な工夫だと感じています。手取り21万円で2〜3万円というJ-FLECの例のように、比率にすればごく小さな一歩でも、続けやすい形に変えるだけで結果は変わってきます。今日から全部を変える必要はなく、まず一つ、口座を分けるところから始めれば十分です。

※本記事は、編集部が総務省・金融経済教育推進機構(J-FLEC)・金融庁が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

8. まとめ

  • 総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年平均では、貯蓄現在高の平均値2059万円を下回る世帯が66.1%を占めます。
  • 「貯金ゼロ世帯の割合」は、家計調査の資料本体には直接示されていません。
  • J-FLECの調査では、単身世帯20代の33.2%が金融資産を保有していないという結果が出ています。
  • J-FLECは「先取り貯蓄」を家計管理のコツとして紹介しており、給与が入った直後に一定額を別口座へ移す方法を例示しています。
  • 「何%を先取りすべきか」という公的な推奨基準はなく、無理のない比率から試すことが現実的です。

「貯金できない人の特徴」という言い方は、性格の問題として片づけてしまいがちです。しかし公的統計を見る限り、貯蓄額を左右する要因は世帯構成や年代によって大きく異なり、一つの性格論では説明がつきません。

まずは自分の手取りと固定費を書き出し、先取りできる金額の目安を確認してみることから始めてみてください。口座を分けて自動化する仕組みを整えれば、貯蓄を続けるハードルは下げられます。

9. よくある質問

9.1 Q. 先取り貯蓄はいくらから始めればいいですか?

A. 公的機関による一律の推奨割合は確認されていません。J-FLECのコラムで示された例(手取り21万円で2〜3万円、比率にして約9.5〜14.3%)を参考に、まずは無理のない金額で試し、生活に支障が出ないか数か月確認してから見直す方法が現実的です。

9.2 Q. 口座を分けるだけで本当に貯まるようになりますか?

A. 口座を分けること自体が貯蓄額を保証するわけではありません。ただし、生活費用の口座に残る金額が可視化され、銀行の自動積立を使えば先取りの手間を減らせるため、貯蓄を続けやすくする仕組みとして有効とされています。

9.3 Q. 貯金ゼロ世帯は実際どれくらいいますか?

A. 総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」には、貯蓄ゼロ世帯の割合を直接示した記述が見当たりません。J-FLECの世論調査(2025年)では、単身世帯20代のうち金融資産を保有していない世帯が33.2%という結果が出ています。ただし調査対象・金融資産の定義が異なるため、単純な比較はできません。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班