社会人1年目、あるいは20代前半で「自分の貯金額は少なすぎるのでは」と不安になったことはないでしょうか。
同世代の貯金額を検索すると「平均」や「中央値」という数字が出てきますが、実はこの2つの数字は一人で暮らしているか、家族と暮らしているかによって、見え方が大きく変わります。
本記事では、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表する最新の世論調査データを直接確認し、20代の貯金額の「中央値」の正体と、同じ20代の中でも生じている格差の実態を整理します。
- 20代の金融資産の中央値は、二人以上世帯で125万円、単身世帯で37万円です(非保有世帯を含む実態値)。
- 単身世帯の20代では、資産100万円未満の世帯が57.8%を占める一方、1000万円以上の世帯は4.7%にとどまり、低い水準への偏りが目立ちます。
- この記事では、平均・中央値の違いだけでなく、世帯構成別の前提の違いと、社会人1年目から意識できる積立ペースの目安を編集部で試算します。
1. 20代の貯金、「平均」と「中央値」はどれくらい違うのか
まず基礎知識として、20代の貯金額に関する公的な調査結果を確認します。総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」には、実は「20代」という年齢区分そのものが存在しません。
1.1 公表されている20代のデータは何を根拠にしているか
総務省の家計調査で示される年齢区分は「40歳未満・40〜49歳・50〜59歳・60〜69歳・70歳以上」の5区分のみです。20代単独の貯蓄現在高は、この調査からは分かりません。
そのため、20代の実態を知るには、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施する「家計の金融行動に関する世論調査」の年齢階級別データを使うのが妥当です。
2025年調査(二人以上世帯)によると、20歳代の金融資産保有額は、金融資産を保有していない世帯を含めた実態値で平均525万円・中央値125万円でした。
2. 中央値にも「2種類」があることを見落とさない
この記事の核心に入る前に、もう一つ基礎として押さえておきたいのが、中央値の集計対象の違いです。
2.1 「保有世帯のみ」と「非保有世帯を含む」の差
先ほどの125万円は、金融資産を保有していない世帯(つまり資産ゼロ)も含めた数字です。一方、金融資産を保有している世帯だけに限ると、20代の中央値は260万円まで上がります。
平均値で見ても、非保有世帯を含むと525万円、保有世帯のみだと683万円と、160万円近い差があります。
集計の前提を確認しないまま「20代の中央値は〇〇万円」という数字だけを比べると、実は違う条件の数字を比較してしまうことになります。
3. 二人以上世帯と単身世帯、どちらの数字を参考にすべきか
ここからが本題です。20代は、他の年代に比べて一人暮らし・単身世帯の割合が高い年代だと考えられます。
ところが、総務省の家計調査は二人以上世帯のみを対象としており、単身世帯の貯蓄現在高(資産のストック)は同じ形式では公表されていません。
3.1 単身世帯のデータを直接確認した結果
そこで編集部は、J-FLECが公表する単身世帯調査の「各種分類別データ」を直接確認しました。その結果、20歳代の単身世帯の金融資産保有額は、非保有世帯を含む実態値で平均255万円・中央値37万円でした。
保有世帯のみで見ると、平均388万円・中央値146万円という結果になっています。
ここで一つの発見があります。二人以上世帯20代の中央値(実態値125万円、保有世帯のみ260万円)と比べると、単身世帯20代の中央値(実態値37万円、保有世帯のみ146万円)はいずれも大きく下回ります。同じ20代でも、単身か二人以上かで実態値の見え方はかなり異なります。
3.2 【20歳代の金融資産保有額まとめ】
非保有世帯を含む実態値
- 二人以上世帯:平均525万円/中央値125万円
- 単身世帯:平均255万円/中央値37万円
保有世帯のみ
- 二人以上世帯:平均683万円/中央値260万円
- 単身世帯:平均388万円/中央値146万円
4. 【編集者の視点】
実務の罠として指摘したいのは、「20代の貯金の平均・中央値」という検索結果の多くが、実は世帯構成を明示していない、または二人以上世帯のデータをそのまま20代全体の話として紹介している点です。
20代前半の一人暮らしの会社員が、自分より年齢層の高い二人以上世帯(実家を出て家族を持った世帯も含まれる)の数字と自分を比べてしまうと、前提がずれた比較になります。
防衛策としては、まず自分が「単身世帯」「二人以上世帯」のどちらに近いかを確認し、該当する調査結果を参照することです。
厳密な世帯区分にこだわりすぎる必要はありませんが、少なくとも「この数字はどちらの世帯を対象にしているか」という一文を、数字と一緒に確認する習慣は持っておくとよいでしょう。
5. 同じ20代でも、資産のある人とない人の差が大きい
ここまでは平均・中央値という「代表値」の話でしたが、20代の実態をより正確に知るには、資産額の分布そのものを見る必要があります。
5.1 単身世帯20代の資産分布
J-FLECの単身世帯調査(20歳代、非保有世帯を含む)の分布を確認すると、金融資産を保有していない世帯が33.2%を占めています。
これに「100万円未満」の保有世帯24.6%を足すと、実質的に資産100万円未満の世帯は合計57.8%にのぼります。20代の単身者の半数以上が、この水準にあるということです。
一方で、1000万円以上を保有する世帯(1000万〜1500万円・1500万〜2000万円・2000万〜3000万円・3000万円以上の合計)は4.7%にとどまります。
中央値という一つの数字だけを見ると「20代はだいたい37万円前後」という印象を持ちますが、実際には半数以上が資産100万円未満に集中しており、まとまった資産を持つ層はごく一部という、低い水準への偏りが目立つ分布になっています。
5.2 【単身世帯20代の資産分布まとめ】
資産が少ない層
- 金融資産を保有していない:33.2%
- 100万円未満の保有世帯:24.6%
- 合計(編集部集計):57.8%
資産がまとまっている層
- 1000万円以上を保有する世帯(編集部集計):4.7%
5.3 単身世帯と二人以上世帯、どちらのばらつきが大きいか
編集部でもう一つ試算したのが、平均値が中央値の何倍にあたるかという「倍率」です。この倍率が大きいほど、一部の世帯に数字が引き上げられている度合いが大きいと考えられます。
単身世帯20代(非保有世帯を含む)は、平均255万円÷中央値37万円で約6.89倍になります。
二人以上世帯20代(非保有世帯を含む)は、平均525万円÷中央値125万円で約4.20倍です。
単身世帯のほうが倍率が大きく、少数の資産形成が進んだ層が平均値をより強く引き上げている構造がうかがえます。20代の中でも、単身世帯は資産のばらつきが特に大きい層だといえそうです。
6. 【編集者の視点】
この分布から読み取れる実務上の罠は、「平均に追いつこう」と考えること自体にあまり意味がない、という点です。
20代の平均値(非保有世帯を含む単身世帯で255万円)は、一部の資産を多く持つ世帯に引き上げられた数字であり、大多数が到達している水準ではありません。
一方で、中央値(37万円)を「これくらいで十分」と捉えるのも早計です。57.8%が実質100万円未満にいるという事実は、裏を返せば4割超はそれを上回っているということでもあります。
防衛策としては、代表値(平均・中央値)ではなく、自分が今どのペースで資産を積み上げているかという時間軸で管理するほうが実用的です。次の章で、その具体的な考え方を試算します。
7. 社会人1年目から意識できる、積立ペースの目安
20代を20歳から29歳までの10年間と仮定すると、単身世帯の中央値37万円は、単純計算でどのくらいのペースに相当するのでしょうか。
7.1 編集部試算:中央値に相当する積立ペース
10年間=120か月で37万円を均等に積み立てたと仮定すると、月あたり約3083円というペースになります(編集部試算、単純な均等割りであり実際の貯蓄行動を示すものではありません)。
同じ計算を二人以上世帯の中央値125万円に当てはめると、月あたり約1万417円になります。
保有世帯のみの中央値(単身146万円)で同じ計算をすると、月あたり約1万2167円というペースになります。
この試算はあくまで前提を単純化した参考値です。ボーナスでまとめて積み立てる方、社会人1年目はほとんど積み立てられず後半で増やす方など、実際の積み方は人によって異なります。
7.2 【積立ペースの編集部試算まとめ】
前提:20〜29歳の10年間(120か月)で均等に積み立てたと仮定した単純計算
- 単身世帯・中央値37万円の場合:月約3083円
- 二人以上世帯・中央値125万円の場合:月約1万417円
- 単身世帯・保有世帯のみの中央値146万円の場合:月約1万2167円
この金額感を踏まえると、新NISAのつみたて投資枠(年間120万円、月あたり最大10万円)の枠自体は、20代の実際の積立ペースに対してかなり余裕がある設計になっていることが分かります。
つまり「非課税枠を使い切れないから意味がない」と考える必要はなく、月数千円からでも枠の範囲に十分収まるペースだということです。
※本記事は、編集部が金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
8. 【編集者の視点】
制度への接合として補足しておきたいのが、新NISAの非課税保有限度額1800万円と、年間投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円、併用で年間360万円)は別の枠組みだという点です。
20代のうちは非課税保有限度額を意識する段階ではなく、まずは年間投資枠の中で、無理のない金額を継続できるかどうかを優先して考えるほうが実務的です。
特定の金融商品を推奨するものではありませんが、制度の枠組みとして「毎年いくらまで」と「生涯でいくらまで」が別の数字であることは、早い段階で知っておいて損はありません。
確認先としては、金融庁の新NISA特設ウェブサイトや、口座を開設している金融機関の窓口で、自分の積立設定がどの枠に該当するかを確認できます。
9. まとめ
- 総務省の家計調査には「20代」単独の貯蓄データは存在せず、20代の実態はJ-FLECの世論調査で確認する必要があります。
- 20代の金融資産の中央値は、二人以上世帯125万円・単身世帯37万円です(非保有世帯を含む実態値)。
- 単身世帯20代では、実質100万円未満の世帯が57.8%、1000万円以上の世帯は4.7%と、低い水準への偏りが見られます。
- 社会人1年目からの積立ペースは、中央値ベースで月8000円台からが一つの目安になります。
20代の貯金額をめぐる「平均」「中央値」という数字は、集計対象が二人以上世帯か単身世帯か、資産を保有している世帯だけを見るかどうかで、印象が大きく変わります。
自分の状況に近い数字を選んだうえで、代表値そのものに一喜一憂するより、まずは無理のないペースで積立を続けられるかどうかを確認することから始めてみてください。
10. よくある質問
10.1 Q. 20代の貯金の中央値はいくらですか。
A. J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、20歳代の金融資産保有額の中央値は、非保有世帯を含む実態値で二人以上世帯125万円、単身世帯37万円です。金融資産を保有している世帯のみで見ると、二人以上世帯260万円、単身世帯146万円になります。
10.2 Q. 20代の貯金の平均はいくらですか。
A. 同調査では、非保有世帯を含む実態値で二人以上世帯525万円、単身世帯255万円です。平均値は一部の資産を多く持つ世帯の影響を受けやすいため、中央値と合わせて確認することをおすすめします。
10.3 Q. 社会人1年目でも貯金がなくても大丈夫ですか。
A. 単身世帯の20代では、資産を保有していない世帯を含めると実質100万円未満の世帯が57.8%にのぼります。社会人1年目で貯金が少ないこと自体は、同世代の中でも珍しいケースではないと考えられます。焦って大きな金額を目指すより、無理のないペースで積立を継続することが実務的です。
10.4 Q. 総務省の家計調査で20代の貯蓄額は分かりませんか。
A. 総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」の世帯主年齢階級別区分は「40歳未満・40〜49歳・50〜59歳・60〜69歳・70歳以上」の5区分のみで、20代を単独で示すデータは公表されていません。20代単独のデータが必要な場合は、J-FLECの世論調査を参照する必要があります。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」各種分類別データ
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)のポイント」(2025年12月18日公表)
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」(2026年5月19日公表)
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」図表の訂正に関するお知らせ
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」(金融庁)
LIMO編集部貯蓄解説班
