そこで、直近6年間の株式相場における“株価の乱高下度”を見てみます。株価の乱高下を計る尺度はいろいろありますが、今回は馴染みのある「日経平均株価」を用いて「1週間の値幅」を振り返りましょう。1週間の「値幅」とは、その週の「高値と安値の差」です。当然ですが、この値幅が大きければ大きいほど株価が大きく変動したことになります。

そこで、1週間の値幅が1,000円を超えた回数(週の数)を以下に示します。1週間の値幅が1,000円超となるのは非常に大きな株価変動であり、「急騰」や「急落」という表現を使っても差し支えありません。まずは結果を見てみましょう。

ちなみに、トランプ大統領によるツイートは正式就任後に本格化しましたから、2014~2016年はオバマ前大統領の時期となります。

トランプ大統領の誕生以降、株価の乱高下は少なくなっている!

<週間の値幅が1,000円超となった回数>

  • 2014年:  2回
  • 2015年:  6回
  • 2016年:12回
  • 2017年:  0回
  • 2018年:10回
  • 2019年:  1回(注:2019年9月第3週まで)

いかがでしょうか。多くの人が持つイメージと比べると、かなり違った結果かもしれません。日経平均株価が1週間に1,000円変動するのはそう多くないことを前提にすると、2016年と2018年は間違いなく株価乱高下の年でした。しかし、「トランポリン相場」と称されている今年2019年は、実は2017年に続いて穏やかな株価変動の年なのです。

どのように見ても「乱高下」とは程遠い状況にあります。

次に、少しハードルを下げて、1週間の値幅が700円を超えた回数を見ます。ただ、700円でも大きな値動きに違いはありません。なお、この回数には前掲の1,000円超も含まれています。

<週間の値幅が700円超となった回数>

  • 2014年:11回
  • 2015年:17回
  • 2016年:22回
  • 2017年:  5回
  • 2018年:23回
  • 2019年:  7回(注:2019年9月第3週まで)

やはり、2019年は2017年とともに、相対的に見れば落ち着いた株価変動だということを示しています。ちなみに、日経平均株価ではなく、米国株(NYダウなど)で調べても、概ね似たような結果が得られます。

過去2年の日経平均株価の推移

“トランプ砲で株価が乱高下”は正しい表現とは言い難い事実

以上の結果だけで全てを判断することはできません。しかし、トランプ砲による株価変動は、仮にそれが(瞬時に)大幅な変動でも長い時間を要さずに戻り(反対の動きが出る)、そして、その回数は意外に少ないと推察することができます。

少なくとも、“株式市場はトランプ砲による相次ぐ乱高下で大混乱に陥っている”というのは、正しい表現ではありません。この類のニュースは、トランプ大統領が頻繁に使う「フェイクニュース」とまでは言いませんが、かなり大袈裟な報道と考えられます。実態は大きく異なっており、「トランポリン相場」はメディアが打ち上げた花火に過ぎないのではないでしょうか。

個人投資家はトランプ砲など気にせず、自分自身のブレない軸を持つべき

つまり、多くの投資家、とりわけ情報量が決して多くはない個人投資家の方々が、トランプ砲に気を取られながら株式投資を行い、その結果に右往左往するのは正常とは言い難いものがあります。

では、どうしたらいいのでしょうか?

日経平均株価を見ると、昨年末終値から現在まで+10%強上昇しています(注:9月26日現在)。仮に、日経平均連動のETFや投資信託を毎月コツコツと買っていた(積み立てていた)人は、同様のパフォーマンスを達成した可能性が高いと考えられます。

もちろん、結果論だと言えばそれまでですが、最も重要なことは、冷静な判断の上に立って、継続的に、そして時には臨機応変に投資を行うことでしょう。トランプ砲に関するニュースも含めて、ともすれば大げさな報道や意見に左右されない自分自身の「軸」を持つことが必要不可欠です。

もし、トランプ砲を気にするあまり、思ったような成果を上げていない方がいれば、この機会に是非とも株式投資の原点に立ち返ってほしいと思います。

葛西 裕一