10月から年末にかけては、冬のボーナスの使い道や、その年のNISAの投資枠をどう使い切るかを考える方も多い時期です。

純金融資産1億円以上の「富裕層」「超富裕層」は、2023年時点で合わせて165万3000世帯。全世帯のおよそ3%にあたります。

「自分には縁のない話」と感じるかもしれませんが、同じ調査では、会社員として働きながら株式相場の上昇などを受けて富裕層に届いた「いつの間にか富裕層」の存在も指摘されています。この記事では、富裕層の実態を確認したうえで、世帯年収別の「資産の中身」から、資産を築いた層の預貯金と投資の配分を読み解いていきます。記事後半では、ファイナンシャルアドバイザーの横野会由子が、投資に回す順番の考え方を解説します。

横野 会由子
40代・50代の方から「まとまった資金をどう振り分けるか」というご相談をよくいただきます。この記事では、年収別の資産構成データから、資産を築いた層が「守り」と「増やす」をどう配分しているかを読み解きます。

なお、富裕層の定義や世帯数のデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

「富裕層ピラミッドは5つの階層」日本に富裕層は何世帯いる?「実は、あなたの家のお隣さんも?」いつの間にか富裕層の出現!
「富裕層ピラミッドは5つの階層」日本に富裕層は何世帯いる?「実は、あなたの家のお隣さんも?」いつの間にか富裕層の出現!

1. 富裕層の定義・割合

「富裕層」と呼ばれる資産家たちは、どのような世帯なのでしょうか。野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産保有額(※)に応じて世帯を以下の5つの層に分類しています。

※純金融資産保有額:預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いたもの

1.1 純金融資産保有額の階層別にみた「保有資産規模と世帯数」

  • マス層(3000万円未満):約4424.7万世帯
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):約576.5万世帯
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):約403.9万世帯
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):約153.5万世帯
  • 超富裕層(5億円以上):約11.8万世帯

ここでは純金融資産1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義し、世帯数や保有資産の規模についての推計データが公表されています。

このうち「富裕層」と「超富裕層」を合わせた世帯数は165万3000世帯に達し、全世帯の約3%を占めることが分かりました。この合計世帯数は、推計が開始された2005年以降で最多です。また、富裕層・超富裕層それぞれの世帯数も2013年以降、継続的に増加傾向となっています。

2. 富裕層+超富裕層|資産額と世帯数の推移

「超富裕層」と「富裕層」を合わせた、純金融資産1億円以上を持つ資産家たちについて、世帯数や資産総額の推移をみていきます。

  • 2005年:86万5000世帯・213兆円
  • 2007年:90万3000世帯・254兆円
  • 2009年:84万5000世帯・195兆円
  • 2011年:81万世帯・188兆円
  • 2013年:100万7000世帯・241兆円
  • 2015年:121万7000世帯・272兆円
  • 2017年:126万7000世帯・299兆円
  • 2019年:132万7000世帯・333兆円
  • 2021年:148万5000世帯・364兆円
  • 2023年:165万3000世帯・469兆円

富裕層と超富裕層の世帯数と資産総額は、世界金融危機や東日本大震災などの影響を受けて一時的に落ち込んだものの、長期的に見ると増加傾向にあります。とくに2021年から2023年にかけての伸びは顕著です。この背景には、株価上昇や円安による資産価値の増大などがあったことが、同調査レポートでは指摘されています。

2.1 【一覧表】富裕層の世帯数と純金融資産保有規模(2023年)

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯・135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯・334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯・333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯・282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯・711兆円

なお、富裕層と超富裕層が保有する資産の合計は、前回調査より約3割ほど増加し469兆円に。全世帯の純金融資産の約26%が、この2つの層に集中している計算になります。

3. 「いつの間にか富裕層」と「スーパーパワーファミリー」

今回の調査では「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」と呼ばれる、新しいタイプの富裕層たちの出現が指摘されています。

「いつの間にか富裕層」は、近年の株式相場の上昇を受けて運用資産が大きく増え、富裕層の仲間入りをした層です。40歳代後半から50歳代の一般的な会社員が、従業員持株会やNISAなどを活用するなかで純金融資産1億円を超えたケースが想定されており、富裕層以上の世帯の1〜2割程度と推定されています。

「スーパーパワーファミリー」は、都市部に住む世帯年収3000万円以上の大企業共働き世帯に代表される層です。教育費や住宅ローンの負担が重い時期を経て、40歳前後で世帯年収が2000万円を超えるころから資産が急速に増え、50歳前後で富裕層に到達する可能性があるとされています。

この「新しい富裕層」に共通するのは、相続や親の資産だけに頼らず、働きながら得た収入と、長く続けてきた投資によって資産を築いている点と言えるでしょう。

資産を築いた人に共通する考え方や行動については、資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動でも紹介しています。

4. 年収別にみる金融商品の種類別内訳

2025年12月、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」の結果から、2人以上世帯の世帯年収ごとの金融資産内訳に関するデータを見ていきます。金融資産を保有していない世帯も含めた平均値です。

4.1 世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額3/3

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

金融資産保有額

  • 全国: 1940万円
  • 収入はない: 634万円
  • 300万円未満: 858万円
  • 300~500万円未満: 1431万円
  • 500~750万円未満: 1755万円
  • 750~1000万円未満: 2222万円
  • 1000~1200万円未満: 2725万円
  • 1200万円以上: 5635万円

預貯金(運用または将来の備え)

  • 全国: 745万円
  • 収入はない: 385万円
  • 300万円未満: 368万円
  • 300~500万円未満: 631万円
  • 500~750万円未満: 693万円
  • 750~1000万円未満: 908万円
  • 1000~1200万円未満: 1028万円
  • 1200万円以上: 1649万円

債券

  • 全国: 78万円
  • 収入はない: 7万円
  • 300万円未満: 36万円
  • 300~500万円未満: 54万円
  • 500~750万円未満: 58万円
  • 750~1000万円未満: 67万円
  • 1000~1200万円未満: 91万円
  • 1200万円以上: 343万円

株式

  • 全国: 433万円
  • 収入はない: 33万円
  • 300万円未満: 191万円
  • 300~500万円未満: 235万円
  • 500~750万円未満: 365万円
  • 750~1000万円未満: 434万円
  • 1000~1200万円未満: 572万円
  • 1200万円以上: 1792万円

投資信託

  • 全国: 216万円
  • 収入はない: 153万円
  • 300万円未満: 79万円
  • 300~500万円未満: 167万円
  • 500~750万円未満: 189万円
  • 750~1000万円未満: 238万円
  • 1000~1200万円未満: 292万円
  • 1200万円以上: 682万円

「債券・株式・投資信託の合計額」と「金融資産保有額全体に占める割合」

  • 全国: 727万円(37.5%)
  • 収入はない: 193万円(30.4%)
  • 300万円未満: 306万円(35.7%)
  • 300~500万円未満: 456万円(31.9%)
  • 500~750万円未満: 612万円(34.9%)
  • 750~1000万円未満: 739万円(33.3%)
  • 1000~1200万円未満: 955万円(35.0%)
  • 1200万円以上: 2817万円(50.0%)

データを見ると「債券・株式・投資信託」への投資額そのものは、年収とある程度相関しています。金融資産保有額全体に占める割合を見ると、年収が1200万円未満の層ではおおむね30%台となっています。

それにより、資産運用が一部の富裕層だけのものではなく、標準的な年収の世帯にも普及している様子がうかがえます。一方で、年収が1200万円以上の層は、金融資産保有額全体に占める「債券・株式・投資信託」の割合が50.0%となっており、資産運用を活用した資産形成に積極的に取り組んでいる様子が確認できました。

ただし、年収1200万円以上の層は預貯金を減らしているわけではありません。預貯金の保有額は1649万円と、すべての年収区分のなかでもっとも多くなっています。手元の預貯金を厚く持ったうえで、運用にも資金を置いている姿が読み取れます。

なお、これらは調査時点の平均値であり、個々の世帯の状況や適切な資産配分を示すものではありません。必要な預貯金の額は、家族構成や収入の安定性によって大きく変わります。

横野 会由子
「投資比率を上げれば資産が増える」と受け取られがちですが、データを見ると順番は逆です。守りの絶対額を確保できたから、投資に回せる余裕が生まれている。この順番はご相談の現場でも実感しています。

インフレが進む今、預貯金だけに頼らず、家計に合った無理のない投資で資産を育てることも選択肢の1つです。ライフスタイルや保有している資産全体のバランスも踏まえたうえで、ご自身のリスク許容度に合った資産形成の方法を選んでいくことが大切になります。

5. 比率を真似るのではなく、順番を真似る

純金融資産1億円以上の富裕層・超富裕層は165万3000世帯と、推計開始以来の最多を更新しました。全世帯の約3%で、純金融資産の約26%を保有しています。その中には、会社員として働きながら株式などの値上がりで富裕層に届いた「いつの間にか富裕層」も含まれています。

世帯年収別に見ると、年収1200万円以上の層は金融資産の50.0%を債券・株式・投資信託で持つ一方、預貯金も1649万円とすべての年収区分でもっとも多くなっていました。守りを削って投資に回しているのではなく、手元の預貯金を厚く持ったうえで運用にも資金を置いていることが分かります。

投資比率という数字だけを真似ても、同じ結果になるとは限りません。参考にしたいのは比率よりも、「守りを固めてから、余裕資金を増やす側に回す」という順番のほうです。

記事後半では、この順番を家計にどう当てはめるかを、ファイナンシャルアドバイザーの横野会由子が解説します。