4. “少しの差”で対象が変わる—確認したい注意点
この給付金で戸惑いやすいのが、「わずかな差で対象から外れる」ことです。たとえば老齢の場合、前年の年金収入とその他の所得の合計が基準額を超えると、原則として対象外になります。ただし、超えた額が一定の範囲内であれば、「補足的老齢年金生活者支援給付金」として、段階的に減った額を受け取れる場合があります。いきなりゼロになるのを防ぐ仕組みです。
また、「世帯全員が市町村民税非課税」という条件も見落としがちです。本人が非課税でも、同居する家族に課税されている人がいると対象になりません。逆に、同居家族の状況が変わるなどで、翌年度から新たに対象になることもあります。
大切なのは、「去年は対象外だったから今年も無理」と決めつけないことです。収入や世帯の状況は年ごとに変わります。毎年秋以降に届く案内やはがきを見逃さず、対象になりそうなら早めに確認・請求することが、受け取り漏れを防ぐいちばんのコツです。
5. まとめにかえて
年金生活者支援給付金は、年金収入などが少ない方を支える“上乗せ”の給付金です。2026年度は基準額が月5620円(前年比+3.2%)に増額され、老齢・障害・遺族の3種類があります。ただし、所得や世帯の課税状況などの要件があり、少しの差で対象が変わること、そして要件を満たしても請求しないと受け取れないことに注意が必要です。
9月ごろは、新たに対象となる方へ請求書(はがき)が届く時期です。届いたら早めに返送を。対象になりそうなのに案内が来ない、判断に迷うといった場合は、年金事務所やねんきんダイヤル、お住まいの市区町村に確認してみましょう。受け取れる支援を取りこぼさないことが、家計の安心につながります。
6. 元証券会社社員の執筆者コメント
元証券会社で個人向けの資産形成に携わってきた立場から、この給付金についてお伝えします。年金生活者支援給付金のように「申請してはじめて受け取れる」制度は、知っているかどうかで差が生まれます。金額は月数千円でも、年単位・老後の長い期間でみれば決して小さくありません。まずは、ご自身やご家族が要件に当てはまりそうか、届いたはがきや市区町村の案内をていねいに確認してください。そのうえで、給付金だけに頼らず、現役のうちから積立貯金や積立投資などで少しずつ備えておくと、収入の基盤に厚みが出ます。公的な支援は取りこぼさず活用し、足りない部分は自分で準備する。この両輪が、老後のお金と向き合ううえで大切だと考えています。
参考資料
宮野 茉莉子
著者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
くらしとお金の経済メディア『LIMO』編集長/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)
1984年生まれ。東京女子大学哲学科卒業後、2008年に野村證券株式会社に入社。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)を保有し、支店にて国内外株式、債券、投資信託、保険商品などの販売を通じて個人顧客向け資産運用コンサルティング業務に従事し、個人のお金の悩みを解決してきた。特に投資信託や株式、債券などを用い、顧客ニーズにあわせた丁寧でわかりやすい資産運用提案が強み。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』編集長。厚生労働省や金融庁など官公庁の公開情報等をもとに公的年金(厚生年金保険と国民年金)、社会保障制度、貯蓄、教育、キャリアなどをテーマに執筆中。専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも副編集長として記事を執筆している。3児のひとり親で中学・高校社会科(公民)教員免許保有。趣味は音楽鑑賞と読書(2026年6月26日更新)