百貨店が売上の8割でも、利益率が高いのは別の事業
ここからは、事業ごとの中身に下りてみたい。三越伊勢丹は「百貨店の会社」という顔で語られることが多いが、利益の源泉はそれほど単純ではない。
2027年3月期1Qのセグメント別営業利益を見ると、百貨店業が155億円(前年同期比+24.4%)と全体をけん引した。加えて、クレジット・金融・友の会業が20億円(同+15.2%)、不動産業が11億円(同+40.8%)と、非百貨店の事業もそろって伸びている。
興味深いのは利益率だ。前期(2026年3月期)通期の営業利益率で比べると、百貨店業が約15%であるのに対し、クレジット・金融・友の会業は約30%、新宿エリアの賃料収入などを持つ不動産業は約21%と、いずれも百貨店を上回る。売上の8割は百貨店が占めるが、稼ぐ効率という物差しで見ると、金融と不動産が屋台骨を静かに支えている。
「百貨店は低採算の斜陽業種」という一般的なイメージと、こうした事業ごとの利益率の実データは、必ずしも重ならない。百貨店という看板の内側に、性格の異なる高採算事業がぶら下がっている。この二つは同時に成り立っている見方だ。
コロナ後の数年で利益は回復、ROEは小売業の上位へ
時間軸を広げると、三越伊勢丹の収益力はこの数年で様変わりしている。
営業利益は、コロナ禍で落ち込んだ2022年3月期の59億円から、2026年3月期には800億円へと回復した。2026年3月期の純利益は過去最高を更新し、自己資本利益率(ROE、自己資本に対する最終利益の比率)は12.5%まで高まっている。
この水準を業種と比べてみる。小売業のROEの中央値は約7%、上位25%のラインでも約12%であり、三越伊勢丹の12.5%は業種の上位に位置する。百貨店という業態から連想される姿とは、やや異なる立ち位置だ。
株主に向けた動きも活発だ。会社は2026年8月13日に、1株を2株に分割することと、自己株式取得の上限を1,800万株から3,600万株へ引き上げることを決めた。株式分割は投資単位を下げ、幅広い投資家が買いやすい環境を整える狙いだとしている。増益基調に、株主層の拡大と資本効率への意識が重なりつつある局面と読み取れる。
筆者コメント
見逃せないのは、百貨店という業態そのものの役割が変わりつつある点だ。
かつて百貨店は、店頭で商品を売り切ることで完結するビジネスだった。だが直近の決算からは、百貨店を「顧客との接点をつくる入り口」として使い、そこで識別した顧客をカードや金融、外商へと広げていく設計が読み取れる。
そう考えると、売上の大半を占める百貨店の役割は、単体の採算だけでは測れない。集客の装置として機能し、より利益率の高い金融や不動産へ顧客をつないでいるとすれば、事業ごとの利益率を横並びで比べるだけでは全体像を捉えきれない。
株価は当面、目先の最終利益の増減や相場全体の地合いに揺さぶられるだろう。ただ、こうした顧客基盤の広がりが数字にどう表れていくかは、四半期ごとの識別顧客の動きや、事業間の利益率の変化に着眼して追っていくと見えやすい。
看板の百貨店だけでなく、その裏側でつながる事業の設計まで含めて眺める。そういう視点を持って観察していきたい局面だと考えている。
参考資料
免責事項
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石津 大希