次に考えるのは、映画をつくるために絶対必要なお金です。出演する俳優さんや女優さんのギャラ、制作会社社員の給料、映画のセット、交通費、宿泊費や食事代、宣伝広告費など、1つの映画に関するコストは莫大な金額になります。

『劇場版 おっさんずラブ〜LOVE or DEAD~』は具体的な金額は出ていませんが、日本の映画は通常5億円以下、超大作になると10億円くらいかかると言われています。ちなみに、洋画だと普通に数十億〜数百億円。桁違いです。

その金額を娘に話すと「そんなにかかるなら赤字になっちゃうじゃん」と。でも、ここで考えるのはお金の回収の仕方です。一人当たり1,000〜1,800円だとしても、たくさんの人が観れば制作費を上回る収入になります。世の中には、少数の人が大きなお金を出し合うやり方と、多数の人が小額を出し合うやり方があり、映画は後者に当てはまるのです。

グッズやDVDなど長い目で見た利益

映画がビジネスとして成り立つには、制作費よりも収入が多くならないといけません。収入源として映画鑑賞料はもちろんですが、販売されているグッズもけっこうキモかなと感じます。

娘は750円のキーホルダーを買ったのですが、「この750円も映画にとっては大切なお金だね」と言っていました。そして「じゃ、他も買っていい?」と。そこでダメとは言いにくい母ではありますが、これも映画のためかと思うと首を縦に振るしかありません。

映画公開の後にはDVDにもなりますし、権利収入もあるでしょう。そのため、公開されている映画だけではなく、この先もお金が入ってくる仕組みがちゃんとできていることを娘に説明すると、「ずっとチャリンチャリンが続くのっていいね」と目を輝かせていました。

お金の話しはしちゃいけないの?

筆者の娘は中学生ですが、毎日のように色々な疑問を抱えて過ごしています。年齢的にも自分で欲しい物を買いたい欲求があり、お金への興味も強いです。

だからこそ、儲かるのか儲からないのかと考えてしまうのだと思います。もちろん、自分がビジネス的な考えをしていることはよくわかっていないのでしょう。でも、大切なのは「儲かるの?」という疑問を持つことだと筆者は考えています。

「お金のことなんて言っちゃダメ」という風潮もありますが、お金は一生付き合っていくもの。儲かる仕組み、稼ぐ仕組みを理解しないと将来困るのは我が子なのだから、疑問を持ったら「そんなこと聞かないの」と言わずに一緒に考えればいいのではないでしょうか。むしろ、親の方からどんどん疑問を投げかけるのもいいのかなと思うくらいです。

テーマはゴロゴロしている

お金や経済の仕組みを子どもと一緒に考えるとき、難しいテーマはいりません。今回のように一緒に観た映画から話が発展することも多々あります。

実は娘はディズニーも大好きなので、何百億円もかけてアトラクションをつくるとわかって、「ディズニー大丈夫かな?」と心配したこともありました。そして「やっぱり私が何回も行かないとね」と言っていましたが、子どもなりにディズニーが儲かるにはどうすればいいのか知っているんだなと思って筆者は聞いていました。

子どもの疑問の中には大人でさえ「あれ?」と思うこともありますが、そのときは調べればいいのです。筆者も日本の映画制作費は知らなかったので、ネットで調べて初めて知ったくらいです。わからないことはわからないで調べる方法を教えればいいだけですから、日々の生活の中でちょっとしたことを広げていく、そのきっかけ作りをしてみてはいかがでしょうか。

【参考】
『劇場版 おっさんずラブ〜LOVE or DEAD~』2019「劇場版おっさんずラブ」製作委員会
「ムビチケ ネットで座席指定できる映画観賞券」㈱ムービーウォーカー

川崎 さちえ