2026年8月7日の東京株式市場は、小幅に続落しました。半導体関連株の一角が軟調となったことが相場全体の重荷となる一方、決算関連では明暗が分かれ、内容が市場の期待に届かなかった銘柄には売りが出たのに対し、フジクラなど業績好調な銘柄には買いが入りました。ゲーム・IPビジネス関連銘柄も総じて選好されるなか、任天堂(7974)は前日比+402円(+5.26%)の8,043円で取引を終え、大幅続伸となりました。終値ベースで8,000円台を回復するのは、7月30日の終値8,145円以来、約1週間ぶりです。

株価が動いた背景にあるのは、前日8月6日の大引け後に発表された2027年3月期第1四半期決算です。

1. この記事を読むとわかる3つのポイント

  • 任天堂の1Q(2026年4-6月)は減収ながら、営業利益は前年同期比150.5%増の1,425億円に急拡大、経常利益・純利益も大幅増益
  • 増益の背景はソフトウェア販売比率の上昇やデジタル売上の拡大、米国の関税還付。通期の業績計画は5月8日公表分から変更なく据え置き
  •  株価は8月7日に前日比5%超の大幅続伸。バリュエーション面での位置づけも解説

2. 1Q決算の中身:営業利益は前年同期比150.5%増に拡大

任天堂が2026年8月6日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4月-6月)の連結決算は、次のとおりです。

  • 売上高:5,178億円(前年同期比9.5%減)
  • 営業利益:1,425億円(同150.5%増)
  • 経常利益:2,061億円(同115.1%増)
  • 最終利益(四半期純利益):1,474億円(同53.5%増)

売上高が前年同期(5,723億円)から減少した一方、営業利益率は9.9%から27.5%へと17.6ポイント改善しました。

減収ながら増益となったのは、ソフトウェアの販売が堅調に推移して売上高に占める割合が高まったことに加え、売上原価として計上していた米国のIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税の還付を受けたことなどが要因です。経常利益はこれに持分法による投資利益303億円、為替差益168億円、受取利息131億円などが加わり、前年同期比115.1%増の2,061億円となりました。

通期の業績計画(売上高2兆500億円、営業利益3,700億円、経常利益4,300億円、純利益3,100億円)に対する進捗率は、営業利益で38.5%、経常利益で47.9%、純利益で47.6%となっており、1Q時点では比較的高い進捗となっています。

3. 任天堂の事業モデル:ハード・ソフト・IP収入の三本柱

任天堂の収益は大きく3つの柱で成り立っています。1つ目はNintendo Switch 2やNintendo Switchなどのゲーム専用機(ハードウェア)の販売、2つ目はそのハード向けに供給する自社・サードパーティ製ソフトウェア(パッケージおよびダウンロード販売)、3つ目が映画化やライセンス許諾などによるIP関連収入です。ハード単体の販売台数が伸び悩む局面でも、ソフトウェアやIP収入でカバーできる構造になっている点が特徴です。

今1Qでは、Nintendo Switch 2のハードウェア販売台数が382万台(前年同期比34.4%減)、Nintendo Switchが66万台(同31.8%減)と、いずれも前年同期(Switch 2発売直後で需要が集中した期間)からは減少しました。一方でソフトウェアは、Nintendo Switch 2向けが946万本(同9.2%増)、Nintendo Switch向けが3,381万本(同38.6%増)と、いずれも伸びています。『トモダチ コレクション わくわく生活』が794万本、『ぽこ あ ポケモン』が127万本のヒットとなりました。

4. 大幅増益の背景にある2つの強み

1つ目の強みは、ソフトウェアとデジタル販売の伸びです。パッケージ併売ダウンロードソフトの売上が増加したことなどにより、デジタル売上高は1,327億円(前年同期比90.0%増)となり、ソフトウェア+デジタル売上高全体に占めるデジタル比率は61.5%(前年同期比+2.2ポイント)まで上昇しました。ソフトウェアの販売が堅調で売上高に占める割合が上昇したことが、営業利益率の改善につながりました。

2つ目の強みは、IP(知的財産)関連収入の拡大です。『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が多くの観客を集めたことなどにより、IP関連収入は348億円(同107.4%増)となりました。ゲーム販売以外の収益源を育てられている点は、任天堂の多角化の進捗を示しています。

ここまでを整理すると、任天堂の1Q決算は減収ながらソフト・デジタル比率の上昇や関税還付、IP収入の拡大により大幅増益となり、通期計画は据え置かれました。株価はこの内容を好感して8月7日に大幅続伸しました。

次のページでは急伸後の任天堂株がバリュエーション面でどのような水準にあるのかを、PER・PBR・配当利回りや年初来高値・安値と合わせて解説します。