中学時代には陸上、高校時代にはサッカーとスポーツに明け暮れていた筆者。妊娠前に検査した骨密度や筋肉量は十分で、「アスリート並ですね!」と担当者に褒められたほどでした。
タバコも吸わず好き嫌いもなくなんでも食べ、今でも適度に運動をし、体脂肪率も「最も妊娠しやすい」とされる標準値。さらに年齢も20代と、あらゆる点から妊娠中は「自分は若いし、健康体だから大丈夫」と信じて疑いませんでした。
突然流れ出てしまった「胎児」の欠片を検査に出した数日後、結果を聞きに産婦人科を訪れた筆者が先生から言われたのは「残念ながら、はっきりした原因はわかりませんでした。もしかしたら数日前に心臓が止まっていたのかもしれませんし、もともとなんらかの染色体異常があったかもしれません」という説明。
そして予期せぬショックや悲しみで号泣している筆者に向かって、先生は「たとえ、同じ条件で水や日光などの栄養を与えても、すべての種が同じように成長して花になるとは限りません。命の誕生や母体の力は、我々産婦人科医でもわからないことがとても多いんです」とも続けました。
「高齢出産はリスクがある」と言われすぎてマヒしていた
この説明を聞いて、筆者はいくら若くて健康体だったとしても、すべての妊娠や出産には絶対大丈夫というものはなく、リスクは常につきまとうものなのだと、身をもって納得ができました。
そして同時に、「高齢出産はリスクがある」「妊娠、出産は若いうちにした方がいい」「痩せすぎたり太りすぎると妊娠しにくい」といった世の中で“常識”と思われている言説が、「確率の高低はあれど、すべての妊娠や出産にはリスクがある」という大事なことを見落とす要因にもなってしまうのではないかとも感じたのです。筆者も「自分は高齢出産じゃないから大丈夫」と、すこし感覚がマヒしていたのかもしれません。
またそうした言説によって、高齢でもないし健康体なのに流産や死産をしてしまった女性が原因を見つけるために自らのささいな言動を責めることにもつながってしまうでしょう。
筆者は実際、先生の説明を聞くまでは「20代 死産 確率」「後期流産 生活習慣 原因」などとネットで検索しては、「きっと、自分が赤ちゃんのためによくないことをしていたに違いない」と自分を責め続けていました。「死産は自分のせいではないんだ」と頭と心で理解できるまでに、結構な時間がかかったのを覚えています。
流産や死産は母親が若くて健康体でも原因不明で起こることがあるし、そして流産や死産は母親のせいではない。もし今、流産や死産を経験して悲しみに暮れている人がいたら、筆者の経験で少しでも前向きな気持ちになってくれたらと思います。
秋山 悠紀