昨年の海外から日本への旅行者数は3119万人と、10年前の約4倍に増加しました。東京オリンピックやラグビーワールドカップも開催されることから、日本に関する注目度はますます高まっています。また、政府も外国人観光客をさらに増やそうと力を入れている状況です。

このような中、旅行会社を始めたいという方の相談が増えています。そこで今回は、旅行会社を始めるために必要なものを確認していきたいと思います。

旅行業とは

一般や企業などの顧客に対し、ツアー旅行を企画・販売したり、他社が企画したツアーを取り次ぎしたり、航空券や切符を手配したりといった業務を行うことを、旅行業といいます。旅行業は誰でも自由にできるわけではなく、行政機関に登録した個人や法人だけが行えます。

旅行業の分類

旅行会社を始めるには、行いたい業務の範囲が、第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業などに分類されている旅行業のどれに該当するかを確認しなければなりません。

第1種旅行業

募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行、受託契約に基づく代理販売(受託販売)など、すべての国内・海外の旅行業務を取り扱うことができます。

第2種旅行業

海外の募集型企画旅行を自ら実施することはできませんが、それ以外の国内・海外の旅行業務を取り扱うことができます。

第3種旅行業

海外の募集型企画旅行を自ら実施することはできません。国内の募集型企画旅行は、一定の条件を満たす限定的なものに限り実施することができます。受注型企画旅行や手配旅行、受託契約に基づく代理販売などは、第1種・第2種旅行業者と同様に、国内・海外の両方を取り扱うことができます。

地域限定

第3種旅行業の業務範囲で、対象地域を隣接する市町村に限定したものです。

財産要件

旅行会社は顧客からお金を預かり、航空会社や鉄道、ホテルなどに支払います。預かったお金を各社に適切に支払いができないと、顧客は旅行できなくなります。そのためにしっかりと会社に財産があるかどうか、取り扱う分類により要件が決まっています。分類により下記のお金が必要になります。

第1種旅行業:3000万円以上
第2種旅行業:700万円以上
第3種旅行業:300万円以上
地域限定:100万円以上

旅行業務取扱管理者

旅行業務取扱管理者の選任が必要となります。営業所には旅行業務取扱管理者を選任して配置し、旅行の取引条件の説明など業務の管理監督をさせなければなりません。また、海外旅行を取り扱うためには、旅行業務取扱管理者ではなく、総合旅行業務取扱管理者の選任が必要になります。

営業保証金

営業の開始には保証金が必要になります。旅行業の登録が決定したら、法務局へ保証金を供託しなければ営業を開始することはできません。保証金の額は次のとおりです。

第1種旅行業:7000万円
第2種旅行業:1100万円
第3種旅行業:300万円
地域限定:15万円

また、上記保証金の供託に代えて、旅行業協会へ入会して保証金分担金を支払うこともできます。保証金分担金の額は、次のとおりです。

第1種旅行業:1400万円
第2種旅行業:220万円
第3種旅行業:60万円
地域限定:3万円

まとめ

旅行業は、今後、益々成長していく業種であると思います。しかし、この魅力的な事業を行うためには、複雑な要件の解釈や煩雑な登録が必要となっています。旅行業を始めたい方は、専門知識を持った行政書士に一度、相談されることをおすすめします。

中野 裕哲