かつて総合電機の苦戦組と見られてきた会社が、いつの間にか別の姿になっていることがある。NEC(6701)はその一例だろう。1Q決算で当期利益(IFRS)が大きく伸び、これを受けて7月30日に株価は大幅高となった。株価と決算、そして収益構造の変化を順にたどりたい。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

1カ月で2割超上昇し、決算で高値を更新した株価

1/1

出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近1カ月の株価は、7月1日の3,981円を安値に切り上がり、7月30日には5,002円と、過去1カ月で最も高い水準を付けた。1Q決算は7月29日に開示され、翌7月30日は前日比で8%あまりの大幅高となった。1カ月で2割を超える上昇だ。

株価水準に対する直近のPBR(株価純資産倍率)は約2.9倍だ。利益の伸びを追いかけるように、市場の評価もようやく動き始めた局面だと読み取れる。

1Qは売上収益8,198億円(前年同期比+14.5%)、営業利益588億円(+66.1%)、当期利益497億円(+157.4%)と、増収を大きく上回るペースで利益が伸びた。前期の2026年3月期も、営業利益3,599億円、当期利益2,702億円と、いずれも前の期から大幅に増えている。

かつて低収益に苦しんだ会社という印象からすると、この利益の伸び方にはだいぶ差を感じる。

稼ぐ効率の右肩上がりと、追いかける評価

変化は単年の数字ではなく、流れに表れている。営業利益率は5期前のおよそ4%から前期には10%まで切り上がった。ROE(自己資本利益率)も13.0%と、電気機器の中央値7.4%を上回る。低採算の事業を整理し、ITサービスや社会インフラなど高利益率な領域へ軸足を移してきた成果だと考えられる。

苦戦組という以前のイメージと、足元の収益性の間にははっきりとしたギャップがある。7月30日の大幅高は、そのギャップに市場が気づき始めた一歩なのかもしれない。ただし評価が本格的に上を向くかは、この利益率が景気の変化でもある程度崩れないと確かめられてからだろう。その点を意識しながら、今後も同社を追っていきたい。

5期の比較でわかる変化

過去5期を並べると、利益の質が変わってきたことがわかる。営業利益は5期前の1,325億円から前期の3,599億円へ増え、その間に営業利益率はおよそ4%から10%へ、ROEも10%前後から13%へと切り上がった。

売上高そのものは大きく伸びていない。伸びたのは収益性だ。規模を追うのではなく採算を上げる経営に、重心が移ってきたと読み取れる。

資本の使い方にも変化が見て取れる。かつて多く抱えていた政策保有株を、この数年で緩やかに圧縮してきた。事業の採算改善と、資本効率を意識した資産の見直しが並行して進んでいる。

利益率の改善が続き、余分な資産が絞られていけば、ROEはさらに一段高い水準まで上がる可能性がある。実際にそれが起こるのか、そしてそれが起こる場合、市場の評価がそこにどう追いつくかが、次の論点になるだろう。

筆者コメント

NECの収益構造は、いま変わりつつあると考える。

総合電機というと、多くの事業を抱えて薄く広く稼ぐ、効率を上げにくい業態という印象が根強い。だがNECの数字は、その印象と逆の方向へ動いてきた。規模はほぼ横ばいのまま、収益性は着実に上がっている。整理すべき事業を整理し、伸ばすべき領域に絞る。王道にして効く手を、数期かけて積み重ねてきた結果だろう。

面白いのは、これだけ中身が変わっても、市場からの評価がつい最近まで不安定だったような点だ。7月30日の大幅高は、その半信半疑が解消し始めた兆しなのかもしれない。

だとすれば、これから見るべきは派手な増益率よりも「売上が不調な局面でも利益率の下げが限定的となるかどうか」だ。構造転換が本物なら、不況期の利益率にこそ差が出る。改善の持続性を決算のたびに確かめていきたい。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
     

石津 大希