センサーや測定機器を手掛けるキーエンス(6861)の株価が、2026年7月29日に前日比でおよそ1割高となりました。前日夕に発表された2027年3月期第1四半期決算が好感されたとみられます。直近1カ月は8万円台から一時7万円近くまで水準を切り下げていただけに、決算を境にした反発が目立ちます。
本稿では株価とバリュエーション、決算の中身、そして同社ならではの財務構造を重ね合わせて読み解きます。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
それでは早速見ていきましょう。
1. 調整からの反発、2026年7月末の株価
直近約1カ月の株価は、7月初めの81,630円を高値に、7月17日には70,880円まで水準を切り下げていました。過去約1カ月ではこの7月17日が最も低い水準にあたります。
その後もおおむね7万円台前半でもみ合いが続きましたが、7月28日の終値70,950円に対し、決算発表を挟んだ翌7月29日には終値77,590円まで上昇しています。出来高もこの日は普段の数倍に膨らみました。株価水準に対し、直近時点のPBRは5倍台となっています。
調整局面からの反発を促した決算の中身を、次に確認します。
2. 第1四半期で営業利益率54%、増益率も加速
第1四半期の売上高は3,466億円で前年同期比32.8%増、営業利益は1,871億円で同44.7%増、当期純利益は1,391億円で同51.0%増となりました。営業利益率は54%に達し、増収を上回るペースで利益が伸びています。
同社は通期の業績予想を公表しない方針で知られ、四半期ごとの実績が投資家にとって数少ない手掛かりとなります。それだけに、増益率が前年同期から加速したこの四半期は、市場に強い材料と受け止められたと考えられます。
自己資本比率は95.3%と極めて高く、事業の稼ぐ力と財務の堅牢さが両立している点が、同社の特徴です。
3. 「利益率の高さ」と「資本効率」は同じではない
ここで一つの視点を補います。同社は営業利益率が5割を超える収益性で広く知られています。前期の2026年3月期でも、売上高1兆1,693億円に対し営業利益5,958億円と、利益率は51%に達しました。
一方で、株主資本の効率を示すROEは13.5%です。電気機器の中央値6.7%と比べると利益率は約8倍の開きがありますが、ROEは同業中央値7.4%に対し1.8倍程度にとどまります。
利益率の突出ぶりに比べ、ROEの優位が控えめに映るのは、分厚い自己資本が背景にあります。稼ぐ力と資本効率は必ずしも一致しない、という一例と言えます。
好調な決算とともに、引き続き株主への還元策などは注目ポイントとなるでしょう。
