赤字転落を経た銘柄が、そこから回復基調に転じる場面では、業績と株価の両方が同じ方向に動く姿が見られることがあります。資生堂(4911)の直近1年は、そのプロセスの縮図として受け止められる動きを見せました。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

それでは早速見ていきましょう。

2026年12月期第1四半期は営業利益+57.9%、当期利益+127.1%と回復軌道へ

2026年12月期第1四半期の決算内容(IFRS=国際財務報告基準)は、回復基調を示す数値となりました。

売上収益は2,320億円で前期比+1.6%、営業利益は123億円で+57.9%、当期利益は84億円で+127.1%と、いずれも増益で着地しています。売上の伸びは穏やかながら、営業利益と当期利益は前年比で大きく回復した姿です。

会社が示している通期予想は、売上収益9,900億円で+2.1%、営業利益690億円、当期利益420億円が示されています。前期の営業利益が-288億円の赤字だった水準から、通期予想では約978億円の改善を織り込んだ数値となっており、黒字転換の見通しが立てられている姿です。

過去5期の営業利益はピーク407億円から-288億円へ、そして再上昇の起点に

背景にあるのは、過去5期の利益推移が明確な下降トレンドから底打ちへの移行局面を描いてきた点ではないでしょうか。

営業利益は2021年12月期の407億円から、2022年12月期388億円、2023年12月期281億円、2024年12月期76億円、2025年12月期-288億円と、4期連続で低下し続け、直近期には赤字転落となりました。

ROE(自己資本利益率)も同様に、2021年12月期の9.3%から、2022年12月期6.0%、2023年12月期3.6%、2024年12月期-1.7%、2025年12月期-6.6%と一貫した低下トレンドを描いてきました。

業種内での相対水準を見ますと、化学216社(2025年12月期)のROE中央値は6.4%、営業利益率中央値は7.0%です。同社の2025年12月期の実績はいずれも中央値を大きく下回っており、業種内でも下位圏に位置していた姿です。

配当は減配局面を経て復配見通しへ

見るべきは、こうした業績悪化局面の中で、配当水準もダイナミックに動いてきた点ではないでしょうか。

分割調整後の1株配当は2021年12月期の50円から、2022年12月期100円まで積み上がったのち、2023年12月期60円、2024年12月期40円、2025年12月期40円と減配傾向が続きました。翌2026年12月期は60円の予想が示されており、業績回復と連動した復配の姿が確認できます。

純資産配当率(DOE)は2.75%と、化学中央値の2.47%を上回っています。減配局面を経ても、絶対的な還元厚みは業種内では平均並みの位置を保っている姿です。

株価は1年で大きく上昇、業績反転を先取り

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価の直近1年(月末終値ベース、参照期間は2025年8月末〜2026年7月執筆時点)の推移は、業績の底打ち・反転を先取りする姿となりました。

2025年8月末は2,400円台で推移していた後、緩やかな上下を経て、2026年2月末には直近1年の中で最も高い水準である3,300円台まで一気に切り上がりました。

その後は下押しに転じ、2026年6月末には2,600円台まで戻す場面がありましたが、2026年7月には再び3,200円台まで戻しています。起点の2025年8月末と直近を比べますと、1年トータルでは大きな上昇となりました。

過去5年で見た株主総利回り(TSR)は0.36倍と、同期間のTOPIX 2.13倍を大きく下回っています。長期では過去のピーク水準から大きく調整してきた累積過程にありつつ、直近1年の動きはその位相の中での底打ちシグナルとも読み取れる姿です。

筆者コメント

一般に「化粧品大手はディフェンシブでボラティリティが低い」というイメージが投資家の間で先に立ちがちです。しかし同社の過去5期の利益トレンドや、2025年12月期の赤字転落の姿は、必ずしもその通念どおりではありません。事業ポートフォリオの構成や地域別売上のバランスによって、化粧品業界の中でも銘柄ごとに業績の位相が大きく異なる姿として読み取れます。

一方で、株価が業績反転を先取りして動く姿は、赤字転落局面から回復局面への移行を市場が織り込んでいる兆しとも受け止められます。翌期予想の黒字転換見通しと第1四半期の実績を重ねますと、業績実勢が徐々に株価水準に追いつく段階にあるとも読み取れます。

赤字転落を経た銘柄を眺めるときは、直近単期の実績だけでなく、過去数期の下降トレンドの深さと、市場が織り込んでいる回復シナリオの整合性を同時に見ていく着眼点が有効ではないでしょうか。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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石津 大希