5. 老後のリアルな赤字額と「デキュムレーション」の現実

新NISAなどを活用して現役時代に資産を築いたあと、老後にはそれらをどのように使っていくのかという「デキュムレーション(資産の取り崩し)」の視点が極めて重要になります。

総務省が公表した「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の無職夫婦二人暮らし世帯における1カ月あたりの実収入は平均25万4395円、そのうち社会保障給付(主に年金)は22万8614円となっています。

これに対し、税金や社会保険料、生活費を含む実支出は平均29万6829円にのぼります。

つまり、平均的な年金暮らし世帯であっても、毎月約4.2万円の赤字が発生しているのがリアルな現状です。

年間では約51万円の取り崩しが必要となり、65歳から90歳までの25年間で約1270万円が不足する計算になります。
さらに、これらはあくまで「日常的な生活費」の平均値にすぎません。

年齢を重ねるにつれて、病気による医療費の自己負担額が増加したり、介護が必要になったりするリスクが高まります。民間企業の調査では、生涯で介護に必要な費用はおよそ2300万円に達するという試算もあるほどです。

現役時代に新NISAなどを活用して「年金に上乗せできる自分だけの私的年金」を確保しておくことは、老後を安心して楽しむための必要不可欠なステップだといえます。

6. 70歳代夫婦の貯蓄「平均2416万円」でも「中央値1178万円」の現実。格差が広がる老後の二極化

「老後資金はどのくらい準備できているのだろうか」と、同世代の貯蓄状況が気になる方は多いでしょう。

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70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、本格的な年金生活を送る70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額の「平均値」は2416万円となっています。

この数字だけを見ると、「老後の資金としては十分に足りるのではないか」と安心するかもしれません。

しかし、データをより実態に近い、保有額が低い順(または高い順)に並べたときにちょうど中央に位置する世帯の金額を示す「中央値」でみると、状況は一変します。

70歳代夫婦世帯の貯蓄の「中央値」は、1178万円まで下がるのです。

平均値と中央値の間に1200万円以上の大きな開きがあるのは、一部の富裕層が平均を大きく押し上げているためです。

さらに詳しく資産保有額の分布を見ていくと、その背景にある格差の現実が浮き彫りになります。

同調査によると、70歳代の中で貯蓄を含む金融資産がまったくない「金融資産非保有(貯蓄ゼロ)」の世帯が10.9%(約1割)存在する一方で、3000万円以上の資産を持つ世帯も25.2%(全体の約4分の1)にのぼっています。

同じ年代であっても、現役時代からの計画的な資産形成や退職金の有無、さらには能動的に準備を行ってきたかどうかで、老後のゆとりにはきわめて大きな格差が生じているのがセカンドライフの実態なのです。

この「平均値2416万円、中央値1178万円」というデータは、一部の平均という数字だけを安心の目安にすることの危険性を明確に示しています。

「なんとかなる」と楽観視せず、まだ時間のある現役時代から新NISAなどを活用し、自分の意志で早くから能動的に資産を育てていく必要性がここにあります。

7. まとめにかえて|無理なく続けることが資産形成の成功につながる

新NISAを活用した積立投資は、毎月10万円の短期集中型でも、毎月3万円の長期継続型でも、時間を味方につけて将来の資産を育てる強力な手段です。

投資において最も重要なのは「始めること」、そして「無理なく継続すること」です。

最初から高額な積立を設定し、相場下落時の不安から途中でやめてしまっては本末転倒です。

まずは日々の生活費や万が一の備えとなる預貯金をしっかり確保し、「余裕資金の範囲内」でスタートすることが長期的な成功の秘訣といえます。

物価上昇が続くこれからの時代、預金だけで資産価値を守り切ることは簡単ではありません。

新NISAの制度やリスクを正しく理解し、ご自身の家計に合ったペースで投資を取り入れることが、将来の安心と選択肢を広げる第一歩となるでしょう。

熊谷 良子

新NISAで資産運用をスタートする際、もう一つ賢く活用したい仕組みが「非課税保有限度額(生涯枠)の再利用」です。

旧NISA制度では、一度商品を売却すると非課税枠は消滅していましたが、新NISAでは売却した商品の「購入時の金額(取得価額)」分だけ生涯投資枠(1800万円)が翌年以降に復活し、年間投資枠の範囲内で再度投資に使うことができます。

例えば、大きなライフイベントで一部を現金化しても、家計が落ち着いた後に再度非課税で積立を再開することが可能です。

「一度投資したら老後まで絶対に解約できない」と身構える必要はありません。

いつでも必要なタイミングで売却ができ、翌年以降に生涯枠が復活するという柔軟なルールを念頭に置いて、マイペースに心地よい距離感で付き合っていくことが、長く投資を続けるためのヒントとなるでしょう。

※免責事項
本記事は情報提供を目的としており、投資の推奨や勧誘を行うものではありません。投資には元本割れのリスクが伴うため、最終的な投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。また、記事内のシミュレーション結果は将来の運用成果を保証するものではありません。執筆時点(2026年7月)の情報を基に作成しておりますが、本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

参考資料