猛暑が続く8月。お盆の帰省などで家族が集まる季節ですが、実は75歳以上のシニア世代やそのご家族にとって、今月(8月)は家計を左右する非常に重要な「お金の節目」であることをご存じでしょうか。
後期高齢者医療制度では、医療機関の窓口で支払う自己負担割合(1〜3割)の定期見直しが毎年行われており、まさに今月(8月)から、新たな負担割合へと一斉に更新されたタイミングなのです。
この負担割合を左右するのが、さかのぼること2カ月前、毎年6月ごろに役所から届いた「住民税の決定通知書」に記載された所得データです。
「75歳を過ぎれば医療費は安くなる」というかつてのイメージは、団塊の世代がすべて75歳以上となった現在、変わりつつあります。
この記事では後期高齢者医療制度の基本に触れたあと、老後の医療費について考えていきます。
1. この記事の3つのポイント
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75歳で自動移行する「後期高齢者医療制度」は所得で負担が分かれる -
窓口負担割合は「自分一人」ではなく「世帯単位」で合算判定される -
負担割合の切り替えは「毎年8月」。現在の割合は書類やスマホで確認できる
2. 【75歳以上】後期高齢者医療制度で何が変わる?75歳から始まる仕組みを解説
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人を対象とした公的医療保険制度です。
原則として75歳になると、それまで加入していた健康保険の種類や働き方にかかわらず、自動的に後期高齢者医療制度へ移行します。
また、65歳から74歳までの人でも、一定の障害認定を受けている場合は、本人の申請によって後期高齢者医療制度へ加入することができます。
制度へ切り替わる際は、基本的に本人が特別な手続きを行う必要はありません。
後期高齢者医療制度へ移行すると、医療機関の窓口で支払う自己負担割合は、全員が同じになるわけではありません。
世帯の所得水準や住民税の課税状況などをもとに、「1割」「2割」「3割」のいずれかが適用される仕組みとなっており、どの区分になるかによって実際の医療費負担にも大きな違いが生じます。
それでは、後期高齢者医療制度では、窓口負担割合がどのような基準で決まるのかを確認していきましょう。
3. 【75歳以上】医療費は何割負担になる?1割・2割・3割の判定基準を確認
後期高齢者医療制度では、医療機関で支払う自己負担割合が、被保険者の所得水準に応じて3つの区分に分けられています。
判定は世帯単位で行われ、次のいずれかが適用されます。
3.1 1割負担:標準的な所得水準の人
後期高齢者の多くが該当する区分で、2割・3割負担の要件に当てはまらない場合は、原則として1割負担となります。
3.2 2割負担:一般所得者のうち、一定以上の所得がある人
次の①と②の両方に該当する場合
- ①同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の方がいる。
- ②同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。
・1人の場合は200万円以上
・2人以上の場合は合計320万円以上
3.3 3割負担:現役世代と同程度の所得がある人
同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上の方がいる場合
上記に加えて、以下の収入等の要件を満す人。
- 世帯内に被保険者が1人の場合:被保険者の収入金額の合計が383万円以上
- 世帯内に被保険者が2人以上の場合:被保険者全員の収入金額の合計が520万円以上
- 世帯内に被保険者が1人で、かつ70歳以上75歳未満の人がいる場合:被保険者と70歳以上75歳未満の人の収入金額の合計が520万円以上
3割負担は、課税所得や収入額が一定基準を超え、「現役並み所得者」と判定された場合に適用されます。
3.4 窓口負担割合の確認方法
実際の自己負担割合は、後期高齢者医療資格確認書に記載されています。紙の資格確認書を利用している場合は、記載内容を見ることで現在の負担割合を確認できます。
一方、マイナ保険証を利用している場合は、マイナポータルから負担割合を確認できます。受診前に確認しておけば、おおよその医療費負担を把握したうえで医療機関を利用しやすくなるでしょう。
4. 単身世帯と夫婦世帯でどう変わる?負担割合を決める「世帯合算」の仕組みと注意点
後期高齢者医療制度において、窓口での自己負担割合(1〜3割)を決定する際、個人の所得だけを見るのではありません。
「同一世帯にいる後期高齢者医療制度の被保険者全員」の所得状況を合算して総合的に判断する仕組みになっています。
そのため、「自分自身の年金は少ないから、自己負担も一番軽いはず」という主観的な判断は通用しない点に注意が必要です。
たとえば、本人の年金受給額がどれほど低くても、同居している配偶者に一定以上の所得がある場合、世帯全体が「現役並み所得者(3割負担)」と判定されてしまうケースがあるからです。
ただし、この所得合算の対象になるのは、あくまで「同じ世帯の中で、ともに後期高齢者医療制度に加入している人」同士に限定されます。
年の差夫婦などで、配偶者がまだ74歳以下であり、国民健康保険や職場の健康保険といった「異なる公的医療保険」に加入している期間は、その配偶者にどれだけ高い所得があっても本人の窓口負担判定に合算されることはありません。
5. 筆者からのコメント
後期高齢者医療制度の窓口負担で最も見落としがちなのが、負担が「個人」ではなく「同じ世帯にいる被保険者全員」の所得で判定されるという世帯合算の仕組みです。
ご自身の年金受給額が少なくても、同居する配偶者の所得状況によって判定が引き上げられるため、いざその時になって慌てる方も少なくありません。
そこで、知っておきたいのが世帯合算で3割負担の対象になりそうな場合でも、制度のなかに「実際の年収(収入額)が基準未満なら3割負担から除外される」という、実態に即した判定ルール(基準収入額適用)が最初から組み込まれている点。
単に課税所得の数値だけで機械的に線を引くのではなく、生活に困窮しないためのセーフティネットが用意されています。
日頃から厚生労働省などの一次データや行政の最新資料を分析していると、こうした「暮らしを守るための防衛策」の存在に気づかされます。
リタイアを控えた世代はもちろん、現役世代のうちから公的保険のルールを正しくインプットしておくこと。
それが、働き方や生き方が多様化する現代において、将来の漠然とした不安を解消するための心強い武器になります。
後期高齢医療制度の基本や判定基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説

