パナソニック ホールディングス(6752)が、大がかりな構造改革の最中にあります。2026年3月期は改革にともなう費用がかさみ、営業利益は2,364億円と大きく落ち込みました。ところが会社は翌2027年3月期に営業利益5,500億円(前期比2.3倍)への回復を計画しています。株価は7月上旬に4,700円台をつけたあと、7月24日の終値は3,883円と高値からは一服した水準です。かつて「日本を代表する電機メーカー」だったパナソニックは、いま何を変えようとしているのか。決算の見方を押さえたうえで、業績と株価の関係を読み解きます。
1. 改革で落ちた利益、来期は「V字」計画
2026年3月期は、売上高が8兆487億円、営業利益が2,364億円、当期純利益が1,895億円でした。営業利益がふるわなかったのは、事業の選択と集中を進める過程で、リストラなどの一時的な費用が重くのしかかったためです。実際、事業の売却や人員削減をともなう改革が急ピッチで進んでいます。
会社が示す2027年3月期の計画は、売上高7兆6,000億円(前期比5.6%減)、営業利益5,500億円(同132.6%増)、当期純利益4,200億円(同121.6%増)です。売上はあえて縮む一方で、利益が一気に2倍以上に跳ね上がる——これは、もうからない事業を絞り込み、コストを下げて「稼ぐ体質」に変える、という改革の狙いをそのまま映した数字です。年間配当も40円から54円へ増配する計画です。なお、この計画の初戦となる2027年3月期第1四半期の決算も近く発表される予定で、改革が数字に表れ始めているかを確認する最初の関門になります。
2. パナソニックは「改革コストを除いた実力」で見る
ここで、いまのパナソニックの決算を読むコツに触れておきます。足元の営業利益が低いのは、本業の実力が弱いからというより、将来のために膿を出す一時的なコストを先に計上しているためです。売上高が減る計画なのも、業績不振ではなく、利益率の低い事業を意図的に手放す「選択と集中」の結果です。つまり、目先の減収や利益の落ち込みという表面的な数字だけを見ると、実態を見誤ります。改革の一時費用を除いた「地力」がどれだけあり、来期計画の5,500億円にどこまで近づけるかを追うのが、この会社の正しい見方です。
著者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日