株価と投資の連動が薄れる
2010年から継続して実施しているサラリーマン1万人アンケートでは「投資をしているかどうか」を聞いています。投資をしていると回答する人は、おおむね3割強で長らく続いていますが、細かく分析すると、その比率の変化が2015年あたりに現れていることがわかります。
下のグラフは株価と投資家比率の推移を比べたものです。このグラフでは、株価はアンケート調査を実施した日の日経平均の終値平均を取り、投資家比率はアンケート調査で「投資をしている」と回答した人の比率を使っています。
2010年から2015年にかけては、株価が上昇すると投資家比率が低下し、株価が下落またはもみ合うと投資家比率が上昇していることがわかります。
これは、投資家が「安くなったから買い、高くなったから売る」という相場観を示しているように映ります。いわゆる株価がボックス圏の動きをすると見ているわけです。ところが2015年をボトムに株価はそれほど上昇しているわけではないのに、投資家比率はじりじりとその比率を上げています。
2019年の投資家比率は36.8%と、これまで7回の調査のなかで最も高い比率となりました。最も低かった2015年の30.4%からみると、6ポイント以上の上昇です。その間、日経平均の終値平均は20,165円から21,190円と1,000円ほど上昇していますが、2015年までの株価の動きと比べると、それほど大きな変化とは言えません。
投資家の相場観が変わったのでしょうか。
新しい投資家の台頭か
どうもそうではないかもしれません。投資家の相場観が変わったのではなく、違った投資家が徐々にその姿を見せているからかもしれません。積立投資家の台頭です。まだ台頭と言うほどではないかもしれませんが、徐々にその影響力がアンケート調査の中にも出てきているとすれば、現役世代に本当の意味での資産形成層が登場しつつあり、うれしいところです。
次回のコラム以降で積立投資家の台頭の兆候が出ているデータを順次紹介していくことにします。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史