マネープランのパンフレットで、「公的年金だけで生活するのは難しいため老後資金の準備が必要である」ということは認識していましたが、お客様から年金生活のリアルな声を聞き、あらためてその必要性を感じたものです。
厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(令和8年4月分概数)」によると、生活保護を受給している世帯のうち55.4%が高齢者世帯です。
老後の収入の柱であるはずの公的年金だけでは、生活費をまかなえないケースが相当数あることを示すデータといえます。
この記事では、生活保護の受給要件と年金受給額の実態を整理した上で、現役世代が老後に向けて今から取り組めることをお伝えします。
1. 3つのポイントの見出し
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生活保護を受給する世帯の55.4%が高齢者世帯。そのうち51.7%が一人暮らし -
厚生年金の平均月額は15万289円だが、女性は11万1413円と男女差が大きく、個人差も非常に広い -
現役世代は①ねんきん定期便で確認→②不足額を試算→③NISAやiDeCoで備えるステップを早めに踏み出したい
2. 生活保護受給世帯の55.4%が高齢者世帯
まず、生活保護の現状を数字で確認しておきましょう。
厚生労働省「被保護者調査(令和8年4月分概数)」によると、生活保護を受給する世帯の類型別の内訳は次のとおりです。
- 高齢者世帯:90万4153世帯(全体の55.4%)
- うち単身世帯:84万4861世帯(51.7%)
- うち2人以上世帯:5万9292世帯(3.6%)
- 障害者・傷病者世帯:41万5320世帯(25.4%)
- その他の世帯:25万8000世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万5253世帯(3.4%)
ここから、受給できる年金額の少なさや、生活費を補うための資産がない世帯が一定数いる現状が見えてきます。
さらに深刻なのは、その高齢者世帯の約93%が一人暮らしだということ。経済的な困窮だけでなく、頼れる身寄りがなく孤立しやすい「単身高齢者」の厳しい現状が浮き彫りになっています。
生活保護を受給する高齢者世帯の約93%が一人暮らしであることも、このデータが示す特徴のひとつです。
2.1 生活保護の受給条件を確認しておく
生活保護は、収入が国の定める最低生活費を下回り、かつ以下の4つの要件をすべて満たしても生活が成り立たない場合に受給できる制度です。年齢制限はありません。
- 資産の活用:預貯金・不動産・生命保険の解約返戻金などは原則売却・活用。持ち家や生活必需品は原則保有可能
- 能力の活用:就労可能な場合は働く努力が必要(病気・育児などで働けない場合は免除)
- 他法他施策の活用:年金や雇用保険など他の公的扶助を優先的に活用
- 扶養義務者の援助:親族からの援助が可能な場合は優先(DVなどがある場合は扶養照会が見送られることあり)
これらをすべて活用してもなお、収入が最低生活費に満たない場合、その不足分が保護費として支給されます。
高齢者世帯の多くは就労も資産活用も難しく、公的年金が事実上唯一の収入源になっているケースが少なくありません。
では、その年金はどれくらいの額なのでしょうか。
3. 老齢年金の平均受給額は月額いくらか
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、実際の受給水準を確認してみましょう。
3.1 厚生年金の平均受給月額と分布
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額は次のとおりです。
- 全体:月額15万289円
- 男性:月額16万9967円
- 女性:月額11万1413円
平均は15万円ですが、受給額の分布は1万円未満から30万円以上まで非常に幅広く、個人差の大きさが際立っています。
10万円未満の受給者が全体の約19%を占める一方、20万円超の受給者も約18%おり、二極化の傾向が見てとれます。
現役時代の収入水準と厚生年金への加入期間によって、老後の受給額がこれほど変わってくることを実感できるデータです。
3.2 国民年金の平均受給月額と分布
自営業・フリーランス・専業主婦など、国民年金のみに加入してきた方の受給額は次のとおりです。
- 全体:月額5万9310円
- 男性:月額6万1595円
- 女性:月額5万7582円
ボリュームゾーンは「6万円以上〜7万円未満」で、多くの方が満額(令和8年度:月7万608円)に近い受給額となっています。
ただし、国民年金のみでは月6万円前後が老後の年金収入となるため、生活費との差額を何らかの手段で補う必要性が高い水準です。
4. 【筆者からのアドバイス】老後に向けて現役世代が取り組む3ステップ
生活保護の受給要件を知り、年金の平均額を確認した上で、「では自分はどうすればいいのか」を考えてみましょう。
難しく考えすぎず、まずは3つのステップで整理することをおすすめします。
4.1 STEP①:ねんきん定期便で将来の年金見込み額を確認する
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」には、現時点での年金加入実績と将来の受給見込み額が記載されています。
まずここから現状を把握することが、老後の家計設計の出発点になります。スマートフォンからねんきんネットでも確認できます。
4.2 STEP②:公的年金だけで生活費をカバーできるかを試算する
確認した年金見込み額と、老後に想定される毎月の生活費を比較してみましょう。
不足額が月5万円なら年間60万円、20年間で1200万円の差になります。「どのくらい足りないのか」を数字で把握することで、必要な備えの規模感が具体的に見えてきます。
4.3 STEP③:不足が見込まれるなら、今から老後資金をつくる
不足分を補うための手段は複数あります。自分の状況に合った方法を組み合わせていきましょう。
- 預貯金の積立:元本割れリスクなし。ただし低金利・インフレ環境下では実質的な目減りに注意
- 新NISA:運用益が非課税。いつでも引き出せる柔軟性があり、少額から始めやすい
- iDeCo(個人型確定拠出年金):掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税。ただし原則60歳まで引き出せない
5. 「どんな老後を過ごしたいか」も想像してみよう
生活保護を受給する高齢者世帯は全体の55.4%。この数字から、公的年金だけでは老後の生活費をまかなえないケースが決して珍しくないことがわかります。
厚生年金の平均月額は15万円ですが、女性は11万円台にとどまり、受給額の個人差も非常に大きい。
そうした現実を踏まえると、「なんとかなるだろう」という楽観は少し脇に置いておいたほうがいいかもしれません。
老後の備えを考えるとき、「いくら貯めるか」と同じくらい大切なのが、「どんな老後を過ごしたいか」をイメージすることではないでしょうか。
今の家に住み続けるのか、趣味を楽しみたいのか、働けるうちは働きたいのか。そのイメージから逆算すれば、必要な金額も、今から取るべき行動も、自然と見えてきます。
物価高が続く中、老後資金のためにお金を回すのは簡単なことではありません。
それでも、まずはねんきん定期便を手に取り、自分の年金見込み額を確認することから始めてみてください。小さな一歩が、老後の安心へと続く道になるでしょう。
私の銀行員時代のお客様には、コーラスや手芸、ダンスなどの趣味を満喫したり、現役時代に行けなかった長期旅行に出かけたりと、セカンドライフを全力で楽しんでいる方がたくさんいらっしゃいました。
豊かで楽しい老後を迎えるためにも、老後資金は「ただ生きるための生活費」としてだけでなく、「人生を楽しむための資金」として、今から計画的に準備していきたいですね。
参考資料
和田 直子



