高齢期に使える公的な給付や負担の軽減には、いくつかの種類があります。年金に上乗せされるものもあれば、医療や介護の自己負担に上限を設けるもの、保険料そのものを安くするものもあります。
これらの制度の条件をみると、「世帯」という言葉がよく出てきます。ところが、その世帯がどこまでを指すのかは制度ごとに違い、住民票の世帯全員を見るものもあれば、同じ医療保険に入っている方だけを見るものもあります。
この記事では、年金生活者支援給付金、高額療養費、高額介護サービス費、後期高齢者医療の保険料の軽減という4つの制度について、判定に使う世帯の範囲と、2026年9月時点の金額を確認します。
なお、後期高齢者医療制度の自己負担割合や高額療養費制度に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 【高齢者が使える給付と軽減】判定に使う「世帯」の意味が制度ごとに違う
4つの制度はどれも世帯という言葉を使いますが、指している範囲はそろっていません。
まず、その違いを見ていきましょう。
1.1 年金生活者支援給付金は住民票の世帯全員の課税状況で判定する
年金生活者支援給付金の支給要件のひとつは、請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税であることです。
ここでの世帯は、住民票の上で同じ世帯になっている方全員を指します。本人の年金収入が少なくても、同じ世帯に住民税が課税されている方がいれば要件を満たしません。
1.2 高額療養費は同じ医療保険に入っている方だけで判定する
一方、後期高齢者医療制度の高額療養費では、世帯の範囲がもっと狭くなります。
神奈川県後期高齢者医療広域連合の説明では、自己負担限度額は個人単位を適用したあとに世帯単位を適用し、この世帯単位は同じ世帯で後期高齢者医療制度に加入している方のみが対象です。
同じ住民票の世帯にいても、たとえば74歳以下で国民健康保険に入っている配偶者の医療費は、ここには合算されません。
4つの制度で「世帯」の意味はどう違うか1/2
出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」、厚生労働省「サービスにかかる利用料」、神奈川県後期高齢者医療広域連合「高額療養費」を参考にLIMO編集部作成
2. 年金生活者支援給付金は令和8年10月分から所得基準額が上がる
年金に上乗せして受け取れるのが、年金生活者支援給付金です。
金額と要件を確認しておきましょう。
2.1 令和8年度の老齢年金生活者支援給付金は月5620円が基準
老齢年金生活者支援給付金の額は、保険料納付済期間に基づく額と保険料免除期間に基づく額を足して決まります。
令和8年度は、保険料納付済期間に基づく額が「5620円×保険料納付済期間÷480月」、保険料免除期間に基づく額が「1万1768円×保険料免除期間÷480月」です。
月5620円は基準額であり、受け取る額がこの金額どおりになるとは限りません。保険料を納めた期間が短ければ、実際の額は少なくなります。
2.2 所得基準額は令和8年10月分から82万6500円になる
支給要件は、65歳以上で老齢基礎年金を受けていること、請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税であること、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が所得基準額以下であることの3つです。
この所得基準額が、令和8年10月分から82万6500円に引き上げられます。昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円です。
令和8年9月分までは80万9000円(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円)でしたので、前年に基準をわずかに超えて対象外になった方も、判定が変わる可能性があります。
3. 後期高齢者医療の高額療養費は令和8年8月診療分から限度額が変わった
医療費の自己負担に上限を設けるのが、高額療養費制度です。
後期高齢者医療制度では、令和8年8月診療分から限度額の見直しがありました。
3.1 外来(個人単位)と外来+入院(世帯単位)の2段構えになっている
70歳以上の方の高額療養費には、外来だけを個人単位で見る上限と、外来と入院を合わせて世帯単位で見る上限の2段階があります。
一般Ⅰ・一般Ⅱの区分であれば、外来(個人単位)が月2万2000円、外来+入院(世帯単位)が月6万1500円です。
過去12カ月に高額療養費の支給が3回あった場合、4回目以降は多数回該当として限度額がさらに下がります。
3.2 令和8年8月から年間の上限額が新しく設けられた
厚生労働省によると、令和8年8月からは月ごとの上限に加えて、年単位の上限額が新設されました。年間とは8月から翌年7月までを指します。
一般Ⅰ・一般Ⅱでは、外来の年間合算が21万6000円、外来+入院の年間上限が53万円です。年収約200万円未満であることが確認できた方は、年間上限が41万円になります。
ただし、この見直しは負担が下がる方向だけのものではありません。厚生労働省は、主に療養期間が短期の方に追加の負担を求める一方で、多数回該当の金額を維持し、年間上限を新たに設けたと説明しています。
【外来(個人単位)の限度額】
- 現役並み所得者Ⅲ・Ⅱ・Ⅰ:設定なし
- 一般Ⅱ:2万2000円
- 一般Ⅰ:2万2000円
- 区分Ⅱ:1万1000円
- 区分Ⅰ:8000円
【外来+入院(世帯単位)の限度額。〔 〕内は多数回該当】
- 現役並み所得者Ⅲ:27万300円+(総医療費-90万1000円)×1%〔14万100円〕
- 現役並み所得者Ⅱ:17万9100円+(総医療費-59万7000円)×1%〔9万3000円〕
- 現役並み所得者Ⅰ:8万5800円+(総医療費-28万6000円)×1%〔4万4400円〕
- 一般Ⅱ:6万1500円〔4万4400円〕
- 一般Ⅰ:6万1500円〔4万4400円〕
- 区分Ⅱ:2万5700円〔2万4600円〕
- 区分Ⅰ:1万5700円
自己負担割合そのものの決まり方については、LIMOの記事「【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
後期高齢者医療制度では、医療機関で支払う自己負担割合は、被保険者の所得水準に応じて3つの区分に分けられています。判定は世帯単位で行われ、次のいずれかの割合が適用されます。
出所:【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説
後期高齢者医療の保険料を計算していた頃、世帯のどこまでが判定に入るのかは、窓口でとくに説明に時間がかかる部分でした。制度ごとに範囲が違うので、ひとつの制度の感覚で他の制度を判断しないことが大切です。


