5. 「振込額」は30万円とは限らない

年金月額が15万円の場合、2ヶ月分の控除前年金額は原則30万円です。ただし、実際に口座へ振り込まれる金額が30万円になるとは限りません。年金からは、人によって以下の税金や社会保険料が差し引かれるためです。

  • 介護保険料
  • 国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
  • 所得税・復興特別所得税
  • 住民税(森林環境税含む)

上記の税金や社会保険料は、所得や受給する年金の種類・金額などによって、年金から差し引かれるかどうかが決まります。

日本年金機構から届く年金振込通知書には、控除前の「年金支払額」と、税金・社会保険料を差し引いた「控除後振込額」が記載されています。手元に入ってくるお金は、税金・社会保険料を差し引いた「控除後振込額」です。

たとえば、年金支払額が30万円でも、税金や保険料が合計6万円天引きされれば、実際の振込額は24万円です。振り込まれた金額をもとに家計管理をしていくことになるため、家計を考える際は、額面ではなく控除後の金額を確認しましょう。

石上ユウキ

「年金額=手取り額」だと思い込んでいる方は少なくない印象です。年金振込通知書が届いたら、控除前・控除後どちらの金額なのかを必ず確認する習慣をつけておきましょう。

次章では、年金と家計に対する考え方をファイナンシャル・プランナー視点で解説します。

6. 【FP見解】年金と家計への考え方

月額15万円以上の年金を受け取っている人の割合は49.8%ですが、一方で約半数の人は年金が月額15万円未満です。老後の家計が苦しくならないようにするには、大きく分けて以下の2つの方法があります。

  • 公的年金を増やす
  • 公的年金以外の資産を増やす

まず考えたいのは、公的年金を増やす手法です。たとえば、国民年金については、60歳時点で納付期間が40年に満たない場合、所定の要件を満たせば65歳まで任意加入できます。任意加入すれば、国民年金を満額に近づけやすくなるでしょう。

また、厚生年金保険は原則70歳まで加入できるため、退職後も働けば厚生年金の受給額が増えます。65歳以上で働きながら年金を受け取っている人であれば「在職定時改定」という年金額を再計算する仕組みにより、納めた保険料が早期に年金に反映されます。

このほか、年金の受給タイミングを65歳以降に遅らせる「繰下げ受給」などの活用も検討してみましょう。

より自由に老後資産を設計したい場合は、公的年金以外の資産を増やすほうが適しているでしょう。具体的には、iDeCoやNISAといった制度の活用を検討したいところです。iDeCoは自分で掛金を拠出・運用する年金制度で、以下のような税制優遇が特徴です。

  • 掛金が所得控除の対象になる
  • 運用益が非課税になる
  • 受取時も所得控除の対象になる

一方、NISAは、少額から積立投資ができる制度で、運用益が非課税になるのが特徴です。通常20.315%かかる税金がかからなくなるため、利益をそのまま手元に残せます。年間で360万円、生涯で1800万円までと投資枠に上限があるため、計画的に活用しましょう。どちらを使う場合でも、元本が保証されるとは限らないため、リスクをどれくらい許容できるか、何年運用するかといった点も確かめておきたいところです。

なお、年金や資産を増やす際は、闇雲に金額を増やせばよいわけではありません。まずは家計の状況を理解することが大切です。医療費や公共交通の費用など老後生活の支出額を見通し「年金だけではいくら足りないのか」「どれくらい資産が増えれば生活にゆとりが生まれるか」を正しく把握することから始めてみましょう。

7. 監修者コメント:49.8%という数字の裏側で、今から準備できること

中本 智恵

月15万円以上の年金を受け取る人が49.8%という数字は、裏を返せば残りの50.2%はそれ未満だということです。老後の年金額は現役時代の働き方や加入期間によって大きく変わるため、「平均並みだから大丈夫」と考えるのではなく、まずはご自身の見込み額を確認することが第一歩になります。

銀行の窓口でも、繰下げ受給やiDeCo・NISAについて「得なのは分かるが、自分に合っているか分からない」というご相談をよく受けてきました。公的年金を増やす方法と、公的年金以外で資産を増やす方法は、どちらか一方ではなく、ご自身の家計状況に応じて組み合わせて検討するのがよいと思います。

特にiDeCoやNISAは、非課税というメリットがある一方で、元本保証がない点や資金の流動性(iDeCoは原則60歳まで引き出せません)といった制約もあります。始める前に、ご自身がどれくらいリスクを許容できるか、いつまでに使う予定のお金なのかを整理しておくことをおすすめします。

8. まとめ

厚生年金(国民年金含む)を1回の支給で30万円(月額15万円)以上受け取る人は、全体の49.8%と半数に近い割合でした。この金額は税金や社会保険料が差し引かれる前の金額となっているため、実際に使える金額は年金振込通知書などで確かめる必要があります。

年金額が少なく将来の家計が不安なのであれば、老後の年金の増やし方について考えてみたり、今から時間をかけて資産を運用して生活に十分な金額を確保したりすることが大切です。まずは家計支出を把握し、無理なく暮らせる金額がいくらなのか確かめてみるとよいでしょう。

参考資料

石上 ユウキ