「パチンコ=良くないもの」と思っていた筆者は、父がたまにパチンコに行っているという事実を知ってショック。しかし母に言うと、「毎日家と店の往復で飲みにも遊びにも行かないんだから、お父さんもたまにはパチンコくらいしていいじゃない」と諭されました。そして母はぼそっと「今、お店がうまくいってないから。パチンコに行きたくなる時期が数年に1回くらいくるのよ」と続けました。

当時、筆者は「いや、お店がうまくいってないなら節約のためにパチンコ行かない方がいいでしょ」と子どもながらに思いました。しかし、今なら父の気持ちがわかる気がします。

出勤や帰宅の通勤時間は満員電車などで大変だけれども、精神的にはある意味で1人になれる時間とも言えます。“通勤”という概念がない自営業であるだけでなく、常に母と行動をともにし、食事も必ず3食は母と、うち2食は子どもと一緒という状況では、息をつく間がありません。満員電車のような雑然とした空間にあえて身を置いて、1人の時間を作る必要が父にはあったのでしょう。

一方の母にも息抜きの時間はありました。思い出すと、お店にお客さんがいない時や料理の最中のちょっとしたスキマ時間などに、母はよくゲームボーイのテトリスで遊んでいました。まさかのゲームボーイです。次々と新しいゲーム機が登場する中、親戚からもらったそのゲームボーイで何年間もテトリスだけで遊んでいました。

なぜテトリスだけをずっとやっているのかと聞くと「何も考えなくていいから」と言っていた母。父も母も、パチンコやテトリスなどの視覚的に刺激があるものに触れることで頭が真っさらになり、「よし、また頑張ろう」と一呼吸おくことができていたのでしょう。仕事や夫婦間に生じる些細なストレスを消化するために、そんな息抜きの時間を互いに認め合っていたのだと思います。

夫婦げんかは寝室に行ってから

筆者は子どもの頃から、親の夫婦げんかというものを一度も見たことがありません。言い争いとまでいかない小さな小競り合いは数回見たことがあるものの、親は「子どもの前では絶対にけんかをしない」と徹底していました。

それでも仕事とプライベートがいつも一緒ならば、そうではない夫婦以上に諍いが起こりやすいはず。大人になって母から聞き出してみると、やはり両親はけんかをまったくしなかったわけではありませんでした。寝室に行って2人きりになった時にだけ、たまにけんかをしていたそうです。

筆者はこのスタイルだからこそ、両親はうまくいっていたのではないかと思いました。寝る前の寝室でしかけんかをしないということは、「寝たら終わり。次の日に持ち越さない」という自然な流れができるからです。

相手への不満を我慢すればするほど、いつか大きな爆発が起きてしまうことは夫婦生活のあるあるです。しかし、子どもの前で見境なく争うのは教育にも絶対よくありません。だからこそ、夫婦2人だけになった寝室で1日の膿を出し切れば、次の日にはまた仲の良い状態に戻れる。そんな風にして、両親は夫婦げんかをやり過ごしていたのでしょう。

筆者の夫はサラリーマンのため、筆者夫婦の生活スタイルは両親とはまったく異なります。しかし、夫婦として、子どもを持つ家族として、大変なことやストレスをどう乗り越えていくかという点において、両親が約40年間やってきたことはとても参考になることばかり。この両親が夫婦仲良くいてくれたから今の自分がいることに感謝をしつつ、自分たちに取り入れられることは積極的に取り入れていきたいと、日々感じます。

秋山 悠紀