近年の夏は猛暑が続き、今年はさらに酷暑になると言われています。厳しい暑さの中でたまに降る雨が心地よく感じるように、仕事や日々の暮らしの中でも息抜きは大切です。
しかし、長引く物価上昇により、お財布の紐を固く締める人や、今後のために少しでも貯蓄に回そうと考える人が増えたように見えます。
先々の計画を立てるうえで、「将来どんなお金がかかるのかわからない」「年金について詳しくないけれど、何となく不安だから今のうちに準備しておきたい」という声も少なくありません。
私は金融業界で15年にわたり法人・個人向けの営業に従事し、現在はお客様の資産運用・保険見直しのご相談を承っています。
その中で、将来の漠然とした不安を和らげるためには、まず「客観的な事実を知ること」が第一歩だとお伝えしています。
今回は、2026年度の年金額の改定内容から、現役時代の年金加入履歴別モデルケース、さらに今のシニア世代の「実際の受給状況」などを見ていきたいと思います。
1. この記事の3つのポイント
-
2026年度の年金額は4年連続で増額改定(国民年金+1.9%、厚生年金+2.0%)された -
「標準モデル」は現代の多様な働き方に合わず、加入歴により年金額に月10万円以上の差が生じる -
シニア世帯は月約4.2万円の赤字が発生しており、年金と自己資産の両輪で備える必要がある
2. 2026年度の年金額はどう変わる?標準モデル「月23万円」はもう少数派?
公的年金は、物価や賃金の変動を反映して毎年度改定されます。2026年度も改定が実施され、4年連続の増額となりました。
厚生労働省が2026年1月23日に公表した改定率は次のとおりです。
- 厚生年金(報酬比例部分): +2.0% の増額
- 国民年金(老齢基礎年金): +1.9% の増額
この改定率は、2026年4月分(6月15日の支給分)から適用が始まっています。
2.1 モデル世帯の年金額
- 国民年金(満額): 月額 7万608円(前年度比 +1300円※1) ※1 昭和31年4月1日以前生まれの方は月額7万408円です。
- 厚生年金(夫婦2人の標準モデル): 月額 23万7279円(前年度比 +4495円 ※2)※2 夫が平均的な収入(賞与込みで月額換算45万5000円)で40年間就業し、妻がその期間専業主婦だったケースを想定しています。
夫婦で月額約23万7000円という金額を見ると、「意外ともらえるのだな」と少し安心する方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、このモデル額だけを基準に老後資金を考えるのは危険です。
この厚生年金の標準モデルは、「夫が40年間会社員として働き、妻が40年間ずっと専業主婦である」という、昭和から平成初期にかけて主流だった世帯類型を大前提としています。
しかし今はどうでしょうか。
共働きが当たり前となり、生涯単身の方や、フリーランス・自営業として働く方など、ライフスタイルや働き方は大きく多様化しています。
転職を経験したり、非正規雇用で働いた期間がある方も決して珍しくありません。
つまり、「平均的・標準的」と言われるモデル世帯の年金額は、今の50代の多様な生き方にそのまま当てはまるわけではないのです。
自分自身のリアルな年金見込額を把握するためにも、次章ではライフコースに応じたより具体的な受給額の目安を確認していきましょう。
3. 働き方で月10万円も変わる?「自分はいくらもらえるか」5つのモデルで徹底検証
働き方が多様化するなか、「自分は将来どのくらい年金を受け取れるのか」と気になる人も多いでしょう。
厚生労働省は2026年度の年金額改定にあわせて、「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」を公表しています。
これは、働き方や年金加入歴ごとの受給額を試算したもので、自身の将来を考える際の参考になります。
ここでは、2026年度に65歳となる人を想定した5つのモデルケースを紹介します。
3.1 「平均年収610万の会社員」vs「自営業」老後の年金はどれほど差がつく?《ライフコース別年金シミュレーション》
【ケース1】会社員として長く働いた男性(厚生年金中心)
- 想定:平均年収 約610万円(月額換算50万9000円)で40年就業
- 年金月額の目安: 17万6793円
受給額は、老齢基礎年金約7万円と老齢厚生年金約10万7000円を合わせた金額です。
厚生年金へ長期間加入しているため、比較的高い受給額となっています。
【ケース2】自営業・フリーランスの男性(国民年金中心)
- 想定:厚生年金加入が短く(約7年)、国民年金期間が長い
- 年金月額の目安: 6万3513円
国民年金が受給額の中心となるため、会社員と比べて受給額は大きく少なくなります。
老後は預貯金や私的年金など、公的年金以外の備えも重要になります。
【ケース3】キャリアを積んだ女性(厚生年金中心)
- 想定:平均年収 約427万円(月額換算35万6000円)で33年就業
- 年金月額の目安: 13万4640円
女性は勤務期間や収入水準などの違いから、男性より受給額が低くなる傾向があります。
【ケース4】自営業などで働いた女性(国民年金中心)
- 想定:厚生年金期間が短い(約6年)
- 年金月額の目安: 6万1771円
厚生年金への加入期間が短いことから、受給額の多くは国民年金となります。
【ケース5】専業主婦の期間が長かった女性(第3号被保険者中心)
- 想定:扶養内期間が長い
- 年金月額の目安: 7万8249円
第3号被保険者期間部分は保険料を納めなくても老齢基礎年金を受け取れますが、その期間中は厚生年金が上乗せされないため、ずっと会社員だった人と比べると受給総額は少なくなります。
3.2 厚生年金への加入歴が受給額に大きく影響
同じような期間働いていても、厚生年金への加入期間によって受給額には月10万円以上の差が生じるケースがあります。
とくに、自営業が中心だった人(ケース2・4)や専業主婦期間が長い人(ケース5)は、公的年金だけで生活費を賄うことが極めて難しい実態が浮かび上がります。
4. 実際の平均受給額は?「ほんとうの見込額」を知る第一歩
モデルケースだけではなく、現在年金を受給している人の「実際の平均額」を見ることで、より実態に近い状況が分かります。
4.1 厚生年金の平均受給額
- 男性平均: 約17万円
- 女性平均: 約11万円
女性の厚生年金平均額が男性より低い背景には、過去の賃金格差や、結婚・出産を機に離職したこと、非正規雇用で働いた期間などが影響していると考えられます。
受給額の分布を見ても、女性は月額8万~10万円の層が比較的多くなっています。
4.2 国民年金の平均受給額
また、国民年金(老齢基礎年金)の満額は約6万8000円ですが、実際の平均は約5万9000円です。
保険料の未納期間や免除期間があり、満額受給の条件を満たしていない人が一定数いることが平均を引き下げる要因となっています。
5. 筆者からのコメント
金融業界に15年身を置き、多くのお客様のお金事情を拝見してきましたが、老後資金を公的年金だけで余裕をもって賄える方は決して多くありません。
年金が十分に足りているというよりは、元々の生活費を切り詰めてやりくりされているケースが多いと言えます。
まずはご自身の「長生きのリスク」を把握するために、「ねんきんネット」の年金見込額試算ツールを活用してみてください。
今後の働き方を変えた場合のシミュレーションが簡単にできます。手元に届く「ねんきん定期便」とあわせてリアルな見込額を確認し、求める生活費との「差額」を知ることで、自分らしい無理のない資産形成を探していきましょう。




