2016~18年の3年にわたって年間100台以上を出荷してきたFPD(Flat Panel Display)露光装置。この市場はニコンとキヤノンが独占しているが、2019年はFPDメーカーの設備投資がスローダウンしていることにより、4年ぶりに100台を下回る見通し。年間で90台前後まで落ち込むとみられる。

TFTのパターニングに不可欠

 FPD露光装置は、液晶ディスプレーや有機ELディスプレーの画素を駆動する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor=TFT)をガラス基板上に形成するのに使用される。TFTの回路パターンが書かれている原版であるフォトマスクに光を照射し、レンズを介してパターンをガラス基板上に露光する。

 例えば、近年の薄型テレビの主流である解像度4Kのディスプレーでは、3840×2160画素=約830万画素をガラス上に形成する必要があり、1画素は赤青緑の3原色で構成されるため、約2500万個のTFTを露光する必要がある。

キヤノンとニコンが市場を二分

 もともと、キヤノンはテレビ用ディスプレーを製造する大型パネル用露光装置、ニコンはスマートフォン用ディスプレー向けの中小型パネル用露光装置に強いと言われてきた。だが近年は、キヤノンが中小型用に新機種を投入してシェアを伸ばす一方、ニコンが10.5世代(10.5G=2940×3370mm)と呼ばれる大型ガラス基板用を独占的に供給するなど、両社はFPD技術の進化に応じて激しくシェアを争ってきた。

 16年は、FPDメーカーがスマートフォン向けにLTPS液晶への投資を大きく増やしたためニコンが大きく出荷を伸ばしたが、17年は中小型用新機種を投入したキヤノンが有機ELへの投資拡大の波に乗って、出荷台数でニコンを逆転した。だが、18年は中国FPDメーカーが10.5G新工場への投資を開始したこともあって、再びニコンがキヤノンを出荷台数で上回った。

キヤノンは年間で51台を計画

 19年4~6月期のFPD露光装置の出荷台数は、キヤノン、ニコンの主要2社合計で24台にとどまった。30台を下回ったのは16年1~3月期以来13四半期ぶりのことだ。

 4~6月期にキヤノンは前年同期比1台減の15台を出荷した。スマートフォンの販売減速などで、中小型FPD向け投資の調整局面が続いていることが影響した。1~3月期に出荷した15台とあわせて、19年上期の出荷実績は30台(前年同期は37台)となった。また、一部パネルメーカーが投資計画を先送りしたことで、年間販売台数を当初計画の56台から51台へ5台減らした。

ニコンは10.5G用が増加も減収

 ニコンは、4~6月期に前四半期比10台減の9台を出荷した。内訳は、10.5G用が4台、7/8G用が3台、5/6G用が2台。中国メーカーのテレビ向け設備投資が8Gから10.5Gにシフトした影響で、8G装置の販売台数が大幅に減少した。これにより、1~3月期に出荷した16台とあわせて、19年は半期で25台を出荷(前年同期は38台)した。

 19年度通期(20年3月期)は18年度比33台減の37台の出荷を見込んでおり、期初計画を据え置いている。内訳は、10.5G用が22台、7/8G用が10台、5/6G用が5台。高単価の10.5G用は増えるが、6Gおよび8G用の台数減で大幅な減収になる見通しだ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏