図表1でも分かりますが、金価格が急上昇したのは2008年のリーマン・ショック以降です。ところが、この間は株価も債券も金も上がるといった、かつての経済理論では対処できない局面となっているのです。

足元の金価格の上昇には長期的な観察が必要です。つまり、リスク資産のヘッジ対象資産であるのか、あるいは純粋な投資対象になるのかは、今後の市場環境によるでしょう。

図表2:過去30年の金価格とS&P500指数(トータルリターン)との比較

出典:DATAHUB及びCboeより筆者作成。期間:1989年6月末から2019年6月末。1989年6月末を100として指数化。


図表2は過去30年の金価格と、米国株を代表するS&P500指数(トータルリターン)との比較です。金価格と米国株のパフォーマンスはそれほど差がないようなイメージで、かつ金が急騰する際のパフォーマンスは株以上という印象ですが、過去30年においては米国株のパフォーマンスが金を圧倒しています。

特に2012年以降からは、米国株価は上昇する一方で、金価格はマイルドに下落傾向です。どちらも需給関係で価格の方向性が決まりますが、少なくともこの期間では株式の方が有利だったからこそ、金価格は横ばいであったのです。

加えて、売買時に有価証券取引以上の手数料や税金がかかることを考えれば、短期売買に向かないことは論をまちません(株式も短期売買には向きません)。

さて、ここぞとばかり人気が出ている金ですが、仮に投資するとすれば、次のようなスタンスで臨んではいかがでしょう。

  • 現物投資として、不動産と同じような感覚で投資する(そう簡単に売らない)
  • 永遠のインフレ対策として孫子の代まで保有する(日本にインフレが来るなら)
  • 金貨等の金製品の期待収益がより高ければ、そちらに投資する(目利きになれれば)

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)