2026年も折り返し地点となる6月末。夏のレジャーやイベントの計画を立てたい季節ですが、私たちの生活をじわじわと圧迫し続けているのが「物価高」です。
総務省が公表した最新の消費者物価指数(2026年5月分・全国)によると、総合指数は前年同月比で1.5%の上昇となりました。
また、天候の影響を受けやすい生鮮食品を除く総合指数も前年同月比1.4%の上昇となっており、日用品や食料品の値上がりが家計のゆとりを確実に奪っている状況です。
昨今の政府による経済対策は「次世代育成」に重点が置かれる傾向にあり、これまでのような一時的な住民税非課税世帯への一律の現金給付は、転換期を迎えている流れにあります。
支援のあり方が変化していく中で、家計の先行きに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、国や自治体が提供するセーフティネットは「一時的な給付金」だけではありません。要件を満たせば、税金や社会保険料の負担を継続的に減らせる「恒久的な優遇措置」が複数用意されています。
ここでは、住民税非課税世帯向けの見落とせない5つの支援制度と、その対象となる収入の目安(給与・年金別)について解説します。
1. 現金給付以外にもある!住民税非課税世帯が利用できる主な支援制度
住民税非課税世帯は、所得が一定水準以下の世帯を対象とする区分で、さまざまな公的支援を受けられる場合があります。
近年は物価高対策などとして現金給付が実施されることもありますが、利用できる制度はそれだけではありません。
ここでは、住民税非課税世帯を対象とした代表的な支援制度を5つ紹介します。
1.1 国民健康保険料(応益割)の減額措置
所得に応じて、国民健康保険料の均等割・平等割が7割、5割、2割のいずれかの割合で減額されます。
1.2 介護保険料の負担軽減
65歳以上の第1号被保険者を対象に、介護保険料が軽減される制度です。
軽減額は自治体ごとに異なります。
1.3 国民年金保険料の免除や納付猶予制度
所得状況に応じて、保険料の全額免除、一部免除、または納付猶予の措置を受けることができます。
1.4 子育て世帯向けの保育料無償化
3歳から5歳までの保育料は全世帯が無償化の対象です。
さらに、住民税非課税世帯については0歳から2歳の子どもも対象となるため、保育料が実質的に全期間無料となります。
1.5 高等教育における修学支援新制度の活用
大学や短期大学、高等専門学校、専門学校などで学ぶ学生を支援する制度です。
授業料や入学金の減免・免除に加え、返済不要の給付型奨学金を利用できます。
このほかにも、自治体独自の支援制度が設けられている場合があります。
次章では、どのような世帯が住民税非課税世帯に該当するのか確認していきましょう。
2. 「住民税非課税世帯」とはどのような世帯?
住民税非課税世帯を理解するために、まずは住民税の仕組みを確認しておきましょう。
住民税は、都道府県や市区町村に納める税金で、地域の行政サービスや公共事業を支える財源となっています。
個人住民税は、主に次の2つで構成されています。
- 均等割:所得金額にかかわらず、一定の所得がある方に一律で課される部分
- 所得割:前年の所得金額に応じて課税額が変動する部分
この均等割と所得割の両方が課税されない状態を「住民税非課税」といいます。
また、世帯全員が住民税非課税である場合、その世帯は「住民税非課税世帯」となります。
なお、所得割のみが非課税となるケースもありますが、支援制度の対象となるかどうかは自治体によって異なります。
では、住民税が非課税となるのは、どのような条件に該当する場合なのでしょうか。
3. 住民税非課税となる3つの条件
住民税が課税されないのは、次のいずれかに該当する場合です。
- 生活保護法による生活扶助を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下である
- 前年の合計所得金額が、各市区町村が定める基準額を下回る
1と2は全国共通ですが、3については自治体ごとに基準が設定されています。
4. 住民税非課税となる所得の目安をチェック
一例として神戸市では、住民税が非課税となる所得基準を次の計算式で定めています。
35万円 ×(本人 + 同一生計配偶者※ + 扶養親族数)+ 10万円 + 21万円
なお、21万円の加算は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合に適用されます。
※同一生計配偶者とは、納税者と生計を共にする配偶者のうち、前年の合計所得金額が48万円以下の人を指します。
5. 年収ベースで見る非課税の目安をチェック
住民税の課税・非課税は所得金額をもとに判定されますが、家族構成や収入の内容によって基準は異なります。
所得は収入そのものではなく、収入から必要経費や各種控除を差し引いて計算されるため、ここでは神戸市の基準をもとに、実際の年収ベースで非課税となる目安を確認していきます。
単身世帯の場合
合計所得金額が45万円以下の方が対象です。
- 給与収入のみ:年収100万円以下
- 65歳以上で年金収入のみ:年収155万円以下
- 65歳未満で年金収入のみ:年収105万円以下
同一生計配偶者または扶養親族が1人いる場合
合計所得金額が101万円以下の方が対象です。
- 給与収入のみ:年収156万円以下
- 65歳以上で年金収入のみ:年収211万円以下
- 65歳未満で年金収入のみ:年収171万3333円以下
住民税が非課税となる基準は、収入の内容や世帯構成によって異なります。
たとえば単身世帯の場合、給与収入のみであれば年収100万円以下、65歳以上で年金収入のみの場合は年収155万円以下が非課税の目安となります。
また、配偶者や扶養親族がいる世帯では、非課税となる収入基準が引き上げられます。
65歳以上の夫婦のみで年金収入だけの世帯であれば、年収211万円以下まで非課税の対象となり、単身世帯と比べて基準が緩やかになっています。
住民税の負担は世帯ごとの状況によって変わるため、自分の収入や家族構成がどの基準に該当するのか確認しておくことが大切です。
6. 高齢者層で「住民税非課税世帯」の割合が高くなる理由は?
厚生労働省の「令和6年国民生活基礎調査」をもとに、年代ごとの住民税課税世帯の割合を見ていきましょう。
- 29歳以下:63.0%
- 30〜39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含みます。
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含みます。
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含みます。
住民税を納めている世帯の割合は、30歳代から50歳代でおおむね9割近くとなっていますが、その後は年齢の上昇とともに低下する傾向が見られます。
課税世帯の割合は65歳以上で61.1%、75歳以上で54.4%まで低下しており、逆に言えば高齢層ほど住民税非課税世帯の割合が高くなっていることがうかがえます。
その要因としては、退職後に年金収入が中心となり、現役時代と比べて所得が減少することが挙げられます。
また、税制上の優遇措置も影響しています。
とくに65歳以上は公的年金等控除の適用を受けるほか、遺族年金が非課税所得に分類されるため、住民税非課税世帯に該当しやすい傾向があります。
7. 年金収入だけで暮らせる高齢者世帯は「43.4%」にとどまる
厚生労働省が発表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、公的年金を受給している高齢者世帯において、「総所得のすべて(100%)が公的年金・恩給」という世帯は43.4%でした。
言い換えれば、半数を超える世帯が年金以外にも何らかの収入源に頼って生活している実態が明らかになっています。
もはや「老後は年金だけで暮らす」というケースは、少数派にシフトしつつあるのが現実です。
- 公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%
受け取れる年金額は現役時代の働き方や納付状況によって大きく異なりますが、大半のシニア世帯が「収入と支出のやりくり」に頭を悩ませています。
年金だけでは日々の生活費を賄えず、赤字になってしまうケースも決して珍しくありません。十分な預貯金や私的年金などの備えがない場合は、定年後もできるだけ長く働いて収入を補ったり、各種の公的支援制度を積極的に活用したりするなど、ご自身の状況に応じた早めの対策が求められます。
8. まとめ:公的なセーフティネットを家計の「防波堤」に
物価が上がり続けるインフレ時代において、政府も「給付付き税額控除(減税と現金給付の組み合わせ)」といった新たな支援策の協議を進めており、今後の動向が注目されています。
しかし、そうした一時的、あるいは変動する可能性のある新しい給付・減税策の行方を待つだけでなく、ご自身で確実に行える家計防衛策を講じておくことが重要です。
だからこそ、今回ご紹介した「社会保険料の負担軽減」や「教育費の無償化」といった制度を正しく理解し、有効活用することが家計防衛の鍵となります。これらの制度は一度適用されれば、継続的に固定費を下げてくれる「強力な防波堤」として機能します。
目まぐるしく変わる政治の給付・減税ニュースに一喜一憂するのではなく、まずはご自身の世帯がどの支援策を利用できるのかをしっかり把握し、用意されたセーフティネットを賢く使いこなしていきましょう。





